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「おーい、リッチ!! サトゥマ芋畑に行くぞー!! 寝てんのかー!?」
早朝、マルちゃんがリッチが寝泊まりしている小屋に声をかけると、リッチが慌てた様子で飛び出してきた。
「あ、マルちゃんさん、すみません! すっかり、ぐっすり、しっかり、ほっこり、寝ておりました!」
それを聞いたマルちゃんと仲間たちは大笑いしながらリッチに答えた。
「おいおい、寝起きのくせに上手いこと韻を踏んでくるなぁー。それにしても最近寝坊がすぎるんじゃないか? 夜ふかしでもしてるのか?」
「もしかして、女か!?」
「やるじゃん、リッチ!」
「え、まじか! 女か?」
しかしリッチは急いでクワを用意しながらみんなに答えた。
「いえいえいえ。女もなにも私、骸骨ですから。実は最近、夜にお友達と出かけておりまして……。ははは」
リッチはそう言いながら小屋から出てみんなと一緒にサトゥマ芋畑へ向かうと、その道中でイケオジがリッチに尋ねた。
「リッチ。友人ができたのだな」
「……あ、はい。ですが友人と言っても、この町のお子さんたちなのですが。ははは」
「ほう。子どもたちか」
「ええ。この町のお子さんたちはとても親思い出して……、ですが、なんというか無謀でして……」
「うん? 親思いで……、無謀?」
「はい。この町の西の外れに小さなダンジョンがあるのですが、お子さんたちは夜な夜な内緒で集まってダンジョンに入り、貴重な鉱石を採掘していたのです」
「……なるほど。それで、その鉱石を売った金銭で親に孝行をしているのだな」
「はい。……ですが、お子さんたちはヤクウィー領の土木工事を手伝っていると親に嘘をついていまして……」
「ふっ、そういう事か。それでお前が子どもたちを守るために夜のダンジョンについて行っているわけだな」
「……はい。親御さんたちにも、お子さんたちの送り迎えをしていると説明しております。あの子たちは、私がこの町に来てからすぐに仲良くしてくれまして、ええと……、なんと言いますか、情が湧いていますというか」
「そうか。しかし逆を言えば、お前が居るのであれば子どもたちも安全だ。それに、それほど危険なダンジョンではないのだろう?」
「はい。ダンジョンの規模は地下6階層程度で、念の為に私が1人で最下層まで調査してみましたが、それほどのモンスターはおりませんでした」
「そうか。ならば安心だな。しかしリッチ、お前も子どもたちに付き合っていては大変ではないのか?」
「いえいえいえ、あの子たちは何と言うか、とても可愛らしくて純粋で、男の子も女の子も親を助けようという気持ちが心の底から溢れ出ていて、なんとも私も幸せな気分になれるのです。ですから少しでも助けてあげたいと……」
「そうか。……私は、ううん……、そのような気持ちになれぬからな……、うむ。そうだな、私はきっと冷酷なのであろうな……」
イケオジがそう言うと、それを聞いていたメチャツが冷静かつ科学的に、そして長々とイケオジに言った。
「イケオジさん。冷酷とは、ともすれば合理主義の極みかもしれません。一端を見れば冷酷にすぎませんが、反対に情に流されれば最大限の効率が阻害されます。情とは非常に曖昧なもので個人の経験や生まれ持っての特性、さらには政治的要因や土着の教育方針にも左右されます。しかしながら合理的な効率を求めるのであれば、この世界の普遍的で証明された科学、もしくは物理学を土台にしますから……」
メチャツがそこまで言うとイケオジは小さく頷いて静かにメチャツに言った。
「ありがとうメチャツ。気を使わせたな。参考になった」
それを聞いたメチャツは嬉しそうに答えた。
「はい! 参考にしていただけたのであれば幸いです!」
メチャツはそう言うと軽やかな足取りでサトゥマ芋畑へと向かった。
―― その夜 ――
「リッチ隊長! みんな揃いました!!」
待っていたリッチのところへ貴重な鉱石を採掘しに来た子どもたちが集まると、リッチは子どもたちの前に立って敬礼をしながら答えた。
「こんばんは、みなさん。今日は最下層ですね。最下層の魔物は少し強いですから、絶対に私の後ろから出てはいけませんよ。女の子たちと6歳までの子供たちは私のうしろに、お兄ちゃんたちは最後尾を守ってくださいね」
それを聞いた子どもたちは一斉に敬礼をしながらリッチに答えた。
「「はい!!」」
リッチは敬礼をしている子どもたちを見て嬉しそうにウンウンと頷くと、子どもたちを先導するようにダンジョンへと向かった。
◆
リッチと子どもたちはダンジョンに入ると順調に最下層へとたどり着いた。
リッチは最下層のモンスターたちを下級の炎魔法で倒してゆき、子どもたちのために道をあけた。
それを見た子どもたちは下級の炎魔法の威力にも歓喜しながら口々にリッチに言った。
「さすがリッチ隊長だ!」
「すごいです!」
「やったー! 隊長強いね!」
「やったやった!!」
子どもたちの声を聞いたリッチは嬉しそうに答えた。
「いえいえ、これくらいの魔物ならば問題ありません。それよりも、この階層にはレア鉱石がありますから、親御さんのためにたくさん手に入れましょう!」
「「はーーーい!」」
子どもたちは嬉しそうに返事をすると、近くにあるレア鉱石を掘り出し始めた。
しかしその時、リッチはダンジョンの奥から恐ろしいほどの殺気を感じた。
「殺気!?」
リッチは慌ててダンジョンの奥へと視線を送ったが何も見えなかった。
「……あの殺気。ただ事ではなさそうですね……。子どもたちを避難させなければ……」
リッチがそう呟いた瞬間、
ドガン!!!
なんと、地上へと戻る階段が崩落して道が塞がれた。




