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 マルちゃんたちと孤児院の子どもたちは最高級の肉を一気に平らげて嬉しそうにしていると、ケイジャがマルちゃんに話しかけてきた。


「マルちゃん。そろそろ我らは里へ戻る。世話になったな」


 するとマルちゃんは驚いたように答えた。


「え? もう帰っちゃうの?」


「ああ。モーモの実を盗んだ犯人もマコ王が捕らえたし、キキエも婚約を破棄して宝玉を取り戻した。お互い里に帰るつもりだ」


 それを聞いたマルちゃんは少し悲しげな表情を浮かべているキキエに話しかけた。


「でもキキエちゃんは……、アレだよな? 結構、帰りづらい感じじゃない? だってエルフの鉄の鏃(やじり)を減らすために嫁いで来たんだもんな……。それなのに『結局ダメでしたー』って帰れないよな……」


 するとそれを聞いたキキエは何も答えずに静かに涙を流した。


 しかし、それを見たマルちゃんは笑顔になってキキエに言った。


「おっけーおっけー! 大丈夫だぜキキエちゃん! わたしに任せておきなって!」


 マルちゃんは大きな笑顔で親指を立てた。


 ◆


 その後、孤児院はマコ王から派遣されたシスターたちが管理することになり、ヤジと結託(けったく)して子どもたちを強制労働させていた孤児院の所有者は裁判にかけられることになった。


 そしてエヴォはシスターたちと共に孤児院の管理を任され、炎の魔法で炊事を手伝いながら、子どもたちのお話相手として楽しく過ごしていた。


 さらにスラム街はヤジが徴収していた見ヶ〆料(みかじめりょう)(違法に徴収する場所代)は即座に禁止され、住民たちの負担が軽くなる見通しがついた。


 そしてその頃、リムリンの街から遠く離れたダークエルフの里には馬に大量の鉄の鏃(やじり)を乗せたキキエが帰って来ていた。


 キキエが帰ってきたとの報告を受けた里の長は急いでキキエのもとへと行くと、キキエは馬から降りて父親である長に挨拶をした。


「戻りました、お父様」


 しかし父親の長は驚きながら声を荒げた。


「な! なぜ戻ってきた! モーモの実を奪うことに失敗したのか!?」


「いえ。エルフの里を治めるケイジャと和解しました。これからはエルフと敵対する必要はありません」


「何を言っているんだキキエ! エルフたちは鉄の鏃(やじり)を……!」


 父親の長がそこまで言うと、キキエは馬に積んであった大きな袋の口を開いた。


 ドシャァァアアア……


 すると中から大量の鉄の鏃(やじり)が溢(あふ)れ出た。


 それを見た父親の長は目を丸くしながらキキエに言った。


「こっ! これは鉄の鏃(やじり)!! ど、どうやってコレを?」


「現マデマメヤ国の王であるマコ王の父君、マルちゃんという者の計らいで大量の鉄の鏃(やじり)を手に入れました」


「なっ! 王族から!?」


「はい。これでエルフの里と戦力は同等です。もう敵対する必要はありません」


「そうか……。そのマルちゃん、という者に感謝しなければならぬな……」


 するとキキエは馬に積んであった鉄の鏃(やじり)が入った袋を全て下ろして、再び馬に乗った。


 その様子を見ていた父親の長は不思議に思ってキキエに尋ねた。


「お、おい、キキエ。どこかへ行くのか?」


 それを聞いたキキエは満面の笑みを浮かべて父親の長に答えた。


「はい。わたくしは愛するメチャツ様を探しに参ります」


「なっ!? なんだと!?」


 しかしキキエは父親の長の言葉を遮るように馬を走らせた。


 ダダダッ ダダダッ


 するとその時、キキエは思い出したように懐から宝玉を取り出し、父親の長に宝玉を投げながら言った。


「お父様、忘れてましたわ! 宝玉お返しします!!」


 ヒュゥゥウウ……


 それを見た父親の長は顔面蒼白になりながら走り出して宝玉を受け止めた。


 そして今度は顔を真っ赤にしながらキキエに叫んだ。


「いつの間に大切な宝玉を!! おっ、お前は勘当(かんどう)(親子の縁を切ること)だ!! もう二度と里に戻ることは許さん!!」


 しかしキキエは馬を走らせながら嬉しそうに答えた。


「ええ、もう里には戻りません! 私はメチャツ様と添(そ)い遂(と)げますから!!」


 キキエはそう言ってメチャツの顔を思い浮かべると、頬(ほほ)を赤らめながら馬を加速させていった。


 ◆


 その頃マルちゃんたちは、すでに地元の難民の町に戻っていて、酒場でワイワイと酒を飲んでいた。


 マルちゃんは酒を手にしながら嬉しそうにみんなに言った。


「いやぁー! 良い事した後の酒は美味いなー!!」


「おおよ! 最高だな!」

「人の役に立ったってか!」

「だな! こんな平民がな」


「そうですね。今回は最高でしたね」

「はい、皆助かりましたね」


「ふっふっふ。私がヤジの悪事を全て見破りましたからねぇ。今頃、ヤジと取引していた者たちは一網打尽でしょうなぁ。ふっふっふ」


 ゲゲロっちが怪しげな笑い方で呟くと、イケオジは豚の生き血を飲み干してマルちゃんに言った。


「マルちゃん。色々とメチャクチャではあったが、今回ばかりは尊敬したぞ」


 それを聞いたマルちゃんは酒を一気に飲み干して答えた。


「おっ、イケオジがそんな事言うなんて珍しいじゃんか! まぁ、これでもわたし、王だったからな。はっはっは!」


 するとイケオジは大きく息を吐くと、真剣な表情になってマルちゃんに言った。


「……。そうだな……。そろそろ私も正直に話さなければならないな。いつまでも隠しているのも心苦しかったのだ」


「え? なんだよイケオジ、急に改まって。何かわたしたちに隠してるの? まさか、内緒でベティルナちゃんとチョメチョメしてるわけじゃ……」


「いや、聞いてくれ。実は私は……」


 イケオジがそこまで言うと、リッチは慌ててイケオジを止めようと立ち上がった。


 しかしイケオジはそれを力づくで振り払って立ち上がると、大声でマルちゃんに言った。


「私はガンデロ皇帝、ガンデロ四世だ!!」


 イケオジの声が酒場に響き渡ると、その場は一斉に静かになり、マルちゃんは酒を手に持ったまま固まった。


 そしてイケオジを制止できなかったリッチは静かに下を向くと、


「「「あはははははははははは!!!!」」」


 酒場は割れんばかりの笑い声で溢(あふ)れ返った。


 マルちゃんは涙を流しながら笑うと、イケオジの肩をバシバシと叩きながらイケオジに言った。


「あっはっはっは! そう来たかイケオジ!! まさかイケオジがギャグ言うなんてな!! しかもガンデロ四世とか!! 最高だな!!」


 すると仲間たちも大笑いしながらイケオジに言った。


「ぎゃはははは! 最高だな!」

「ガンデロ四世ってのがな!!」

「まじ前フリ気づかなかった!」


「いやはや、まさかイケオジさんがギャグを……」

「はい、めっちゃ笑いました、メチャツだけに!」


 リッチは仲間たちの反応に胸を撫で下ろすと、大笑いをしていたマルちゃんがイケオジに言った。


「ほんと、今のギャグやばいぞ! ほら、来月ケイジャが招待してくれたエルフの里のパーティでもやったほうがイイぞ! モーモの実をかじりながら言ってくれよ!」


 それを聞いたイケオジは少しだけ恥ずかしそうに答えた。


「お、おう……。そう……、だな。……うむ」


 こうしてマルちゃんたちの大冒険は終わり、マルちゃんたちは再びサトゥマ芋畑を耕す日々へと戻っていった。


 ◆


 その頃、しばらく家族と共にリムリンに滞在していたワブとヤナはマコ王の紋章が入った馬車で村へと戻ってきていた。


 村の人々がマコの紋章の馬車に驚き集まる中、たくさんの褒美がワブの家へと運び込まれると、村の人々は興味津々でワブの家へと集まってきた。


 それを見たワブは新しいフルプレートアーマーと剣を装備すると、家から出て、集まっていた村人たちに自慢気に声をあげた。


「ワシはナイトの称号と新しいフルプレートアーマー、そして剣を賜(たまわ)った! この紋章が何よりの証しじゃ! これより先は、ワシの事をサー・ワブと呼んでくれ!!」


 するとマコ王の紋章を携えた馬車の御者(ぎょしゃ)たちとお付の者たちは一列にワブの横に並び、右拳を胸に当てて会釈をして敬意を表した。


 それを見た村の人々は騒然となると、満面の笑顔のヤナが家の中から出てきてみんなに言った。


「その紋章はマコ王様のものよ! おじいちゃんは本物のナイトになったの!」


 それを聞いた村人たちは驚いたが、すぐさま笑顔になって一斉にワブに駆け寄ってワブを称えた。


「すごい! ワブおじいさんナイトですって!」

「すげーな! かっこいいぜワブじいさん!」

「ワブじいちゃん、すごいすごい!!」


 ワブは村の人たちの言葉に気を良くすると大声でみんなに言った。


「これからもサー・ワブの名にかけて、この村とこの国を守り続ける! これは長生きせんといかんな! はっはっは!」


 ワブはそう言って大笑いすると、村の人々も拍手をしながらワブと一緒に笑った。


 ◆


 その頃、リムリンの近くで目をランランと輝かせながら馬を走らせているキキエがいた。


「はぁぁ……。メチャツ様ぁぁ……。居場所は掴みましたわぁぁ……。絶対に逃がしませんわよぉぉ……」


 キキエはマルちゃんたちがいる辺境の村へと全速力で馬を走らせていた。


 ―― 完 ――

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