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―― 翌日 ――
ワブとヤナは正装をして離宮の謁見の間にいた。
そしてマルちゃんも、マコ王が用意した王の正装をして玉座に座り、ワブを迎えていた。
マルちゃんは玉座から立ち上がると、ゆっくりとワブに歩み寄った。
そして儀式に使う黄金の剣を抜くと、ワブとヤナに一度ずつ頭の上に掲げ、厳かに声を発した。
「此度の勇気ある働き、感謝という言葉では表しきれぬ。これより、この2人にはその働きに敬意を表し、褒美を与える」
マルちゃんは黄金の剣を近くにいたマコ王に渡すと、ワブに言った。
「ワブ。お主は命を賭してまでスラム街での悪事を根絶した。お主には勲爵士の称号を与え、今後は敬称『サー』を冠し、サー・ワブと称することを許す」
それを聞いたワブは満面の笑顔で涙を流しながらひれ伏して答えた。
「ははぁっ! ありがたき幸せ!! このワブ、今後とも国のためにお尽くし致します!!」
するとその時、マコ王の側近たちが立派なフルプレートアーマーを持って現れた。
マルちゃんはそれを見るとワブに厳かに言った。
「ワブよ。そして副賞として、勲爵士の紋章が刻印されたドワーフ製のフルプレートアーマーと剣を授ける。ちなみに、その紋章には新しい国、マデマメヤの紋章も刻まれている」
「なっ……。新しい……、国……、でございますか」
「うむ。実はわたしはマコに王位を譲ったのだ。そして国名も新しくなった。お主には生きている限り王家3代に渡って世話になるぞ」
それを聞いたワブは顔を硬直させながら答えた。
「ははぁっ! このワブ、日々精進して参ります!!」
マルちゃんはウンウンとうなずくと、今度はヤナに話しかけた。
「ヤナ。此度のワブの働き、お主の助力が無くては成し得なかった。ヤナにはメロナッカ王が厳選したドレス10着。そして最新の家財道具一式。さらに、100万プナを差し上げよう」
「えっ! 100万プナ……!?」
「うむ。きみの両親もリムリンで精一杯働いている。少しでも足しにしてくれ」
「は……、はい!」
こうしてワブとヤナは褒美を受けとり、しばらくリムリンに滞在したのち、辺境の村へと馬車で送られる事になった。
◆
謁見の間でのパフォーマンスを終えたマルちゃんはヤレヤレと言わんばかりの表情で王の正装を丁寧に脱ぎながらマコ王に頭を下げていた。
「ごめんな、マコ。王様の芝居をさせろだなんて、わがまま言っちゃって」
しかし、マコ王は敬意を表するように答えた。
「いえ、父上が生きていただけでも……。しかし今回の件はスラム街の治安のみならず、エルフやダークエルフの里との関係も悪化してしまうような事案でした。父上の影からのお力添えがなければ……」
「いやいや、今回はタマタマ関わっちゃっただけだから。力添えとか全然してないから。ははは」
「とはいえ父上……」
「いやぁ、しかしそれにしても、あのヤジってヤツもヤバかったんだぜ! みんなで頑張って倒したけど、大量のスケルトン呼んだかと思ったら宝玉で魔法使いやがってさぁ。ちゃんと捕まえといてくれよな」
「はい。ヤジとその仲間は父上のご活躍のお陰で、精鋭の白騎士団が全て捕まえました。そして、証拠も集まりましたのでヤジと繋がっている人物も近日中には」
「そっかそっか、悪りぃなマコ。さすがだな。……ってかそう言えば、あのワブって爺さん、リムリンで兵士やってたって言ってたけど、記録とか残ってないの?」
「はい、記録は残っていました」
「え? ほんとに?」
「はい。彼はワブ・ギードン。リムリンで兵士長を務めたほどの兵士で、引退するまで無敗の兵士だったそうです」
「ええ!? ほんとに手練れの兵士だったのか」
「そのようです。一度、王都の近衛騎士団の配属に声が掛かったのですが、断っています」
「え? 断ってんの? なんで?」
「奥様がハイランド人で、標高の低い王都へは行けないと」
「……。なるほどな……。なんだよ、あの爺さん意外とロマンチックな事してんじゃねぇか」
マルちゃんは少し嬉しそうに笑うと、きれいに畳んだ王族の正装をマコ王に渡しながら笑顔で言った。
「じゃあなマコ。あとは頼んだぜ」
「父上……。行ってしまうのですか」
「ああ。なにしろ、わたしはサトゥマ芋畑を耕しているからな。休暇は長くないから、そろそろ帰らないと」
「なっ! サトゥマ芋畑をですか!? 父上、なぜそんな事を!?」
「そんな事? わたしにしてみりゃ、マコが王様やってるのだって、『なんでそんな事を?』って感じだ。ははは!」
マルちゃんは嬉しそうに笑いながらそう言うと、少しだけ真剣な表情に戻ってマコ王に言った。
「じゃあな。平民のわたしは帰るよ。わたしは仲間たちと楽しくやってるから心配しないでくれ」
マルちゃんはそう言って謁見の間を出て行こうとすると、マコ王は慌ててマルちゃんを引き止めるように言った。
「父上! 私は王になり、人々を幸せに統治することの難しさと、父上の苦しみを知りました! 私は私なりに頑張っているつもりです! ですが答えが見えません! 何かご助言をいただけませんか!?」
しかしマルちゃんは申し訳なさそうな表情で静かに答えた。
「わたしは父上が優秀すぎてな。父上が切り開いた道を同じように進もうとして失敗したんだ。お前はお前の道を作ったらいい。でも永久に答えは出ないと思う。でも、もしかしたら……、それが人の上に立つって事かもな」
「……父上」
マコ王が小さく呟くと、マルちゃんは後ろ姿で軽く手を振って謁見の間から出て行った。
◆
その頃、川辺の孤児院ではみんなが魚を焼いてマルちゃんの帰りを待っていた。
元兵士の仲間たちも魚を頬張りながら口々言っていた。
「マルちゃん、あの離宮に行ったらしいじゃんか?」
「ああ。マコ王にめっちゃイヤミ言われてたりして」
「まぁまぁ、そう言うなよ。皆で慰めてやろうぜ!」
するとその時、土手の向こうから大きな袋を抱えたマルちゃんが嬉しそうに走ってきた。
「おーい!! 帰ってきたぜー!!」
マルちゃんは汗だくになりながら皆のもとへやってくると、大きな袋を地面に置いて嬉しそうに言った。
「おい、みんな! 泣いて喜べ! 最高級の肉を持ってきてやったぜ!!」
マルちゃんはそう言って大きな袋を開けると、中には巨大な肉の塊がゴロゴロと入っていた。
「「「おぉぉぉおおおおおお!!!!」」」
それを見た仲間たちと近くにいた子どもたちは飛び跳ねながら大喜びをした。




