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マルちゃんとメチャツはスケルトンを警戒しながら構えると、マルちゃんはケイジャに小声で尋ねた。
「おいケイジャ、なんかこう、エルフの必殺技とかないのか? エルフ・パーンチとかさぁ」
するとケイジャは少しだけ申し訳なさそうに答えた。
「……すまん、私は魔法の素養は無く弓しか使えぬ。……しかし、矢を使い切ってしまった」
「えっ! そうなの!? じゃあ、そっちのダークエルフのお嬢ちゃんは?」
マルちゃんの言葉にキキエも申し訳なさそうに答えた。
「わたしも、弓しか使えなくて……。でも、もう矢はないの。ごめんなさい……」
キキエは目を伏せて悲しそうに下を向くと、横に居たメチャツが優しくキキエに言った。
「ダークエルフさん、ご心配なく。矢なら僕が作りましょう!」
メチャツはそう言うと、大きく両手を広げて巨大な風の魔法を発生させながらつぶやいた。
「一般的な木製の矢の直径は人差し指ほど……。しかし円形に作り上げるとなると複雑な魔法の術式が必要か……。ならば、高速に作り上げるとなれば4回並行に切り裂いて8角形……、いや3回で6角形でも風の抵抗値には問題ないはず……。これだ!」
メチャツは両手を大きく振り回すように風の魔法を繰り出すと、周りの木々が風の魔法によって切断され、次々と細く形成されていった。
そして、その細く形成された六角形の木の棒は、大量にケイジャとキキエの近くへと次々と転がった。
カラカラン……、カラン……、カラカラカラカラン……
するとメチャツは矢の形成が上手くいった事に喜びながらマルちゃんにいった。
「マルちゃんさん、矢を作ることに成功しました! 私は羽根と矢尻の代わりに風魔法を付与して直進性を増しますので、マルちゃんさんは矢の先を剣で尖らせてください!!」
それを聞いたマルちゃんは驚きながらも急いでメチャツの作り出した矢を拾い上げて、剣で先を削って尖らせ始めた。
「まかしとけ! ……って、わたしは矢を尖らせる係か。最高級の剣が泣いてるなぁ……」
「はい! エルフやダークエルフの弓の技術はかなり高度だと聞きます! となれば、マルちゃんさんが剣で戦うよりも効率で考えれば……」
メチャツがそこまで言うと、マルちゃんは手をあげて返事をしながらメチャツに言った。
「おっけーおっけー、わかってるよ。適材適所ってやつだな……。ははは」
マルちゃんはそう言うと、必死に最高級の剣を使って矢の先を尖らせ続けた。
◆
その後、メチャツの魔法とケイジャ、キキエの弓術によってスケルトンたちは全滅した。
マルちゃんは手首をブンブンと振りながら剣を投げ捨てると、その場に仰向けになって声を上げた。
「やっと終わったかー! 100本以上は矢を尖らせたぞ? もう、こんなの罰ゲームじゃんか……」
マルちゃんは口を開けて大あくびをすると、ケイジャが近くにやってきてマルちゃんに言った。
「いや、マルちゃん。マルちゃんが居なければ全滅していたかもしれぬ。マルちゃんの矢は素晴らしかった。特に終盤の矢は完璧と言って良いほどの出来だったぞ」
それを聞いたマルちゃんはグッタリとしながらも笑顔でケイジャに答えた。
「そりゃ、あんだけ矢を削ってたら上手くもなるさ。ってか、なんの修行なんだって話だぜ。あともう少しで悟り開いちゃってたぞ? ははは」
マルちゃんはそう言って笑うと、ケイジャはマルちゃんの笑顔に感謝の気持ちを伝えた。
「いやマルちゃん。お前の矢で助かったのは本当だ。たくさんの矢を削ってくれた事、心から感謝してる」
しかしそれを聞いたマルちゃんは笑顔で答えた。
「なに言ってんだよケイジャ。だってケイジャは弓を使えて強いじゃん? わたしなんか最高級の防具をつけても袋叩きだぜ? だったら弓が使えるケイジャを助けて当然だろ?」
「……」
「わたしはさぁ、父上が偉大すぎてね。王を継いでからも側近とか父上の派閥の奴らに馬鹿にされ続けてさ。結局ニヤニヤ笑って何もできない王だったんだ」
「マルちゃん……」
「だから、自分が脇役だって分かってるつもりだぜ? まぁ、ちょっと調子に乗ってマコには愛想を尽かされちゃったけどな。ははは!」
するとケイジャはマルちゃんの横に腰を下ろしてマルちゃんに話し始めた。
「実は私も同じようなものなのだ。長老が里を治めていた頃はエルフの里は平和だった。しかし、私が治めるようになってからは言うことを聞かぬ者も多くてな」
「へぇぇ。なんだ、ケイジャも苦労してんだな」
「長老が私をこの旅に出したのも、里で私の威厳を高められるとお考えになったからなのだ。しかし、こんな所で犬死にしそうになるとは情けない……」
「いやいや、そう言うなよ。ケイジャの弓矢、すごかったぜ! シュッ、パァン! ってな。なぁ、ダークエルフのお嬢ちゃんもそう思うだろ?」
マルちゃんがキキエに話を振ると、なんとキキエはメチャツの腕にベッタリと抱きつき、メチャツに甘えながら話していた。
「メチャツさまぁ。さっきの風魔法、とーってもカッコ良かったですぅ。キキエは、メチャツさまとお近づきになりたいなぁ」
しかしメチャツは少し怖がりながらキキエに答えた。
「い、いやぁ、僕は魔法にしか興味がなくて……、お近づかなくても……」
「いやですわメチャツさまぁ。魔法も良いですが、キキエにも興味を持ってくれたら嬉しぃなぁ」
「あ、ええと、ははは」
その様子を見ていたマルちゃんとケイジャはドン引きしながら呟いた。
「ケイジャ、エルフってあんな感じなのか?」
「お、おい! エルフを舐めるな! ……まぁ、だが、惚れっぽい者もいる」
「へぇ。そのへんは人間と変わらないんだなぁ」
「特にダークエルフの女たちは能力の高い者を好む傾向があると聞く。となれば、メチャツの魔法を見たキキエがああなるのも仕方がないのかもしれぬな」
「なるほど。まぁ、そのへんも人間と変わらないのか」
こうしてマルちゃんたちは大量のスケルトンを撃退して、ワブたちのいる大きな家まで戻ることにした。




