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その頃マルちゃんたちは、乗ってきた馬を鍛冶屋に預けて徒歩でワブの血の匂いを追っていた。
しかしその途中、イケオジは突然足を止めると少し遠くを見ながらみんなに言った。
「おかしい。ワブの返り血の匂いは西へ行き、ダークエルフの匂いは近づいてくるな」
するとそれを聞いたケイジャは鏑矢(矢を放つと音のする矢)を1本取り出しながらイケオジに言った。
「やはりそうか。ならばダークエルフの狙いは間違いなくエルフの私だ。この鏑矢は決闘の合図。私は皆を巻き込まぬよう離れて戦おう」
ケイジャはそう言うと弓に鏑矢を番えて離れた森へと放った。
ヒョォォォォォ……
そしてケイジヤはその矢を放った方へ走っていった。
その様子を見ていたマルちゃんは慌ててケイジヤに言った。
「おーい! もしヤバくなったら、その音の鳴る矢を空に放てよー! 助けに行くからなー!」
それを聞いたケイジャは右手を挙げて返事をしながら森の中へ消えていった。
◆
その頃、ダークエルフのキキエはケイジャの放った鏑矢を見つけて、鏑矢が落ちてゆく場所へと向かっていた。
「決闘の鏑矢……。きっと、ヤジに嫁いだら数十年は戦うことも無いわ。その前に決闘するのも悪くないわね」
そしてキキエは少しだけ暗い表情を浮かべると、足を早めながら呟いた。
「でも……。ダークエルフの里を守るためとはいえ……、あんな人間に嫁ぐだなんて……」
キキエは森の中へと消えていった。
◆
その頃、マルちゃんたちはワブの返り血のにおいを追って、街の外れの川までやって来ていた。
すると突然、ワブが川の横の大きな家の前にいるエヴォを見つけて大声を上げた。
「あの骸骨め! 間違いない、奴は犯人のエヴォじゃ! こんな所に隠れておったか!!」
ワブは剣を抜いて走り出すと、それを見たイケオジは瞬間移動でワブの前に出て、両手を広げてワブを止めた。
「止まれ。冷静になってよく見ろ」
「なっ!!」
ワブはイケオジの言葉に足を止めると、イケオジは大きな家を指さしながらワブに言った。
「見ろ。あの建物の周りには沢山の子供たちが遊んでいる。栄誉ある騎士ともあろう者が、乱暴にも子供たちの前で剣を振るのか?」
「……うぬぬ。全くもって、その通りでございます。このワブ、取り乱しておりました……」
ワブはそう言って静かに剣をしまうと、イケオジに一礼して後ろへ下がった。
するとその時、マルちゃんが大勢のスケルトンたちが子供たちの元へと向かっていくのを見つけてイケオジに言った。
「いや、でも大勢のスケルトンが子供たちのところへ向かってるけど、あれは大丈夫なのか? めっちゃ子供たち怯えてるけど?」
マルちゃんがそう言った瞬間、なんとスケルトンたちが一斉に剣を抜いた。
そしてスケルトンたちが子供たちにも襲いかかると、エヴォも剣を抜いて応戦の構えを見せた。
それを見たマルちゃんは驚きながら声をあげた。
「うわっ、まずいぞ! あのスケルトンたち、子供たちに!!」
するとその時、驚いているマルちゃんの横をワブは顔を真赤にして走り抜けていった。
「あやつらめ! 子供たちは未来を照らす何よりの宝! 子供たちには手出しはさせぬぞぉぉお!!!!」
ダダダダダダダダダダ……
ワブが子供たちの元へと走り出すと、マルちゃんも慌てて皆に言った。
「お、おい! おれらも行こう! 事情は分からないが、子供に手を出すやつは悪いやつだ!」
「おう!」
「だな!」
「おし!」
マルちゃんたちも一斉に走り出した。
◆
その頃、建物の前ではエヴォが子供たちに襲いかかるスケルトンたちと戦いながら声を上げていた。
「もう子供たちには強制労働をさせない約束のはずだ!! 約束を破るのか!!」
しかし、スケルトンたちはアゴをカクカクとさせて笑いながらエヴォに答えた。
「約束は守りますよぉ、英雄エヴォ様ぁ」
「強制労働はさせないんですがね。へへ」
「ヤジ様が、子供たちを全員売り飛ばせとのご命令で」
それを聞いたエヴォは剣を大きく薙ぎ払ってスケルトンの1体を吹き飛ばしながら声をあげた。
「お主ら許さぬぞ!! このエヴォ、英雄の名にかけてお主ら全員を再び地獄へと落としてやろう!!」
しかし、スケルトンの1体が剣を構えながら言った。
「いやぁ、英雄エヴォ様。いくらエヴォ様が英雄でも、オレらも精鋭の元兵士ですよぉ? この数を相手に勝てるでしょうかねぇ!!」
スケルトンはそう言うと一気に飛び込んでエヴォに斬りかかった。
「死ねぇぇええ!」
しかしエヴォはスケルトンの剣をもろともせずに炎を纏わせた剣でスケルトンごと薙ぎ払った。
「でやぁぁあ!!!」
ボワァァアアアア!!
エヴォの剣はスケルトンとスケルトンの剣を焼き尽くし、黒焦げにして吹き飛ばした。
が、その時、エヴォの背後から剣を振る風切り音がした。
ブンッ!!
「しまった!!」
エヴォはその音に即座に振り向いたが、すでに敵のスケルトンの剣がエヴォの頭まで迫っていた。
エヴォは苦し紛れに剣で防御の構えをとると、その瞬間、視界の横から鉄の塊が飛び込んできた。
ゴォォォオオ!!!
「なにっ!?」
ガキィィンン!!!
その鉄の塊は、フルプレートアーマーのワブだった。
ワブはエヴォを狙ったスケルトンの剣を自分の剣で弾き飛ばすと、その隙を見逃さなかったエヴォは一瞬でスケルトンの頭蓋骨を剣で串刺しにした。
ズガッ!!
ボワッ!!
そしてエヴォは剣の炎でスケルトンの頭蓋骨を焼き払うと、驚きながらもワブに礼をした。
「お主は教会で戦ったワブ……。誠に助かった、礼を言う。しかし足は大丈夫なのか」
それを聞いたワブはスケルトンの剣を受けながら答えた。
「はっはっは! あんな怪我など、自慢の孫が一瞬で治してくれたわい!! 事情は分からぬが今は子供たちを守るのが優先じゃ!! 助太刀するぞ、エヴォ!」
ワブがそう言うと、エヴォはその言葉に力を漲らせてスケルトンたちの中へと飛び込んでいった。




