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その頃、村で幌馬車の事を聞いて回っていたワブは子どもたちから予想もしなかった言葉を聞いた。
「幌馬車から、とって良い匂いがした!」
「うん! あまーいにおい!」
「おいしそうだった!」
ワブはそれを聞くと慌てて子どもたちに尋ねた。
「お前たち! 甘い匂いがしたのは幌馬車が来たときか? それとも帰るときか?」
「帰るとき!」
「うん!」
「帰るとき!」
それを聞いたワブは愕然として両膝をついた。
「くっ! 何たる不覚!! あの幌馬車は間違いなく国王陛下が探しておられるモーモの実を持ち帰った窃盗団に間違いない……。しかし、ワシはあの幌馬車のヤツらの言うことを鵜呑みにしてここを通し……」
すると突然ワブは立ち上がり、拳を握りしめながら息巻いた。
「栄誉ある騎士が、これ以上の恥を塗り重ねることは許されぬ! ワシが幌馬車の犯人を捕まえてこなければ、国王陛下に合わせる顔がない!!」
ワブはそう言って走り出すと、つながれていた馬に鞍をつけて矢のように村から飛び出していった。
◆
ワブは馬を飛ばして東へ進み、村はずれの無人の教会までやってきた。
するとなんと、あの幌馬車が教会の横に停まっていた。
それを見たワブは奥歯を噛み締めながら声を漏らした。
「おのれ、リムリテイル王国を荒らす悪党めが!! このワシが蹴散らしてくれるわ!!!」
ワブは剣を抜いて幌馬車に突撃すると、幌の隙間からその様子を見ていたスケルトンの一体が笑いながら一緒に幌馬車に乗っているスケルトンたちに言った。
「おい、お前ら。面白いやつが来るぞ。見てみろ」
一緒に乗っていたスケルトンたちは一斉に幌の隙間から前を覗くと、1人の老騎士が向かってくるのが見えた。
それを見たスケルトンたちは一斉に笑いながら言った。
「なんだあの老いぼれ!」
「なにを息巻いてんだ?」
「あははは! 阿呆か!」
「単騎で突っ込んでくるぞ」
「あいつ英雄様が居るとは」
「思ってもいないだろうな」
すると幌馬車の後ろで腕を組んでいたスケルトンが騒いでいるスケルトンたちに尋ねた。
「老人が単騎で来ただと?」
「はい、英雄エヴォ様!」
「弱そうな老いぼれです」
「騎士のようですが……」
それを聞いたエヴォと呼ばれた英雄のスケルトンは騎士という言葉に反応して立ち上がった。
そしてスケルトンたちに動かないように指示を出すと、1人で幌馬車から降りていった。
◆
エヴォは腰につけていた剣を抜いて幌馬車の前に出ると、幌馬車の近くまでやって来ていたワブも馬から降りて剣を構えた。
エヴォはワブのプレートアーマーを見ると静かにワブに問いかけた。
「老騎士よ。私の名はエヴォ。お主は」
ワブはエヴォの言葉に胸を張って答えた。
「ワシの名はワブ! ワシは先代王から勅命を賜った栄誉ある騎士である! そして現国王陛下からモーモの実を奪った者の情報を集めるよう任命された者!」
それを聞いたエヴォは剣を立てて会釈をし、敬意を表した。
それを見たワブは、エヴォの紳士的な態度に同じように剣を立てて会釈を返した。
するとエヴォは剣を構え直してワブに言った。
「ワブ殿。そのフルプレートアーマーは立派なものだな。どこで手に入れたのだ?」
ワブはその言葉に少し得意げに答えた。
「ワシは先代王を狙う輩たちを蹴散らしながら先代王を先導し、無事王都へとお帰しした! そして先代王より直々に勅命を賜り、このフルプレートアーマーを頂いたのだ!」
それを聞いたエヴォは剣を上段に構えると、ワブに言った。
「そうか、それは面白い。相手をする価値はあるだろう」
エヴォはそう言うと、剣に炎を纏わせた。
◆
その頃、教会の地下では魔導士が氷魔法で作った氷室からスケルトンたちがモーモの実を運び出していた。
「おい、あと何箱だ?」
「あと3箱だな」
「まさか教会の地下にモーモの実があるとは思いもよらねぇだろうな」
「だな。それより噂で聞いたけど、あの湖にモーモを大切にしてる精霊がいるらしいぜ。オレら呪われたりしねぇよなぁ」
「はぁ? お前、骨のクセに何言ってんだよ。すでに見た目は呪われてんだろうよ」
「あ、そっか。ははは! 確かにな!」
「だろ?」
「違いねぇ! ってか、それより早く金もらってリムリンの酒場に行きてぇな」
「おう! オレら骨になっちまってから酔っ払う事くらいしか楽しみないもんな」
「ああ。でも英雄様たちとか幌馬車の元騎士の連中は良いよなぁ。戦ったりして楽しそうなんだもん」
「まぁな。オレら普通の人間だったけどネクロマンサーの手違いで生き返っちまったからな。でも、せっかくだから楽しもうぜ」
「ああ、……だな。そうだよな」
バンッ!
スケルトンたちが話していると、突然地下室の扉が開いた。
その音に驚いてスケルトンたちが振り返ると、なんと英雄のエヴォが魔道具で拘束したワブを地下室に投げ込んだ。
ドシャッ……
そしてエヴォは驚くスケルトンたちに言った。
「片足のつま先は折れているが死ぬほどの怪我ではない。心配するな」
しかし、それを聞いたスケルトンの1体はワブを心配そうに見ながらエヴォに尋ねた。
「本当にこの老人……、大丈夫なのですか? 血も出てますけど……」
するとエヴォは肩の鎧の傷を指さしながら答えた。
「こやつはこう見えて私に一太刀浴びせるくらい力のある騎士だ。これくらいの事では死なぬ」
「はぁ……」
「こやつが帰れるように、こやつの馬は残していく。その拘束している魔道具も暫くすれば解けるから心配するな。それよりも早くモーモの実を全て運び出すんだ。リムリンへ出発するぞ」
「あ、は、はい!」
「わかりました!」
スケルトンたちは急いでモーモの実が詰まった箱を氷室から運び出し、英雄のエヴォと一緒に階段を上がっていった。




