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マルちゃんは老騎士の自害を止めると、気になっていた事を老騎士に尋ねた。
「そういえば、父上の勅命ってどんな内容だったんだ? 聞かせてくれないか?」
「はっ!! 先代王は31年と16日前に鷹狩をなさりにこの村を訪れました! 先代王はこの土地に詳しい護衛をご所望し、私めは45歳を過ぎておりましたが、リムリンで兵をしておりましたので、それを引き受けました!」
「なるほど。で、それが勅命なの? 31年も経ってるけど……」
「いえ! 先代王と私め、そしてリムリテイル王国兵3名は鷹狩の最中にネクロマンサーの操る多数のスケルトンに襲われました!」
「あ、それ知ってる! 私が小さい頃、父上が話してくれたよ。もしかして、父上が言ってた命の恩人って……」
「私めはスケルトンたちの攻撃を受けながらも先代王を連れて森の獣道を抜け、無事村まで送り届けることができました! 先代王は馬車で王都へ逃れられました!」
「おお! やっぱり爺さんが父上の命の恩人だったのか! こんな所で会えるなんて! その節は本当にありがとう! ……って、村ってその後大丈夫だったのか? スケルトンたち来なかったの?」
「いえ! しばらくの後、木の面をつけた精霊様がリムリテイル兵3名と数体の無力化されたスケルトンを引き連れて村を訪れ、ネクロマンサーを倒したとお告げになりました!」
「精霊様……!?」
するとケイジャがマルちゃんの傍にやってきて小声でマルちゃんに言った。
「それは私だ」
「えっ!?」
「覚えている。……そうか、あの老騎士はあの時の……」
「えっ!? っても31年も前の話だぞ? お前生まれてたのか?」
「何を言うか。私は261歳。とっくに生まれておるわ」
「はぁっ!? 261歳だって!?」
「人間の尺度で考えるな。私は長命種のエルフだぞ」
「お、おう。そっか。そうなんだな。しかし、なんだかシックリこないなぁ……」
◆
その後、老騎士は王都へ呼ばれて褒美としてフルプレートアーマーを授与され、先代王から「これからもあの村とリムリテイル王国のために働いてくれ」と勅命をもらったと話した。
そして少女から、精霊が村を救って以来、精霊が去っていった湖を精霊様の土地として崇め、無力化されたスケルトンたちは今も仲良くやっている事を聞いた。
そしてマルちゃんたちは少女の案内で家へと招かれたのだった。
◆
家に入ると、老騎士は直立したままマルちゃんに言った。
「国王陛下。このようなむさ苦しいところへご案内して申し訳ございません」
「いやいや、こうして屋根の下で休めるだけありがたいよ。あとさ、ちょっと言いづらいんだけど、実は、わたしは今は国王じゃないんだよ」
それを聞いた老騎士は驚きを隠せず声を漏らした。
「今は国王……、ではない……、と……。ではリムリテイル王国は……」
マルちゃんがそこまで言うと、隣に座っていたイケオジがマルちゃんの腕を掴んで言葉を遮り、マルちゃんの耳元で言った。
「待て。あの老人はリムリテイル王国のために働いているという誇りを持って生きている。老い先短い老人だ。国が滅びたと知らせるのは忍びないであろう」
するとマルちゃんは、いつになく真剣な表情のイケオジの言葉を聞いて考えを改め、イケオジに答えた。
「確かにな……。真実は知らずに、誇りを胸に人生を全うしてもらえるほうが幸せかもな……」
マルちゃんはそう漏らすと姿勢を正して髪型を直し、心配そうな表情をしている老騎士に話しかけた。
「老騎士。名を聞いていなかったな。名をなんと言う」
「はっ!! 申し遅れまして大変申し訳ございません! 私めの名はワブと申します! ワブ・ギードンでございます!」
「そうか。先程、今は国王ではないと言ったのは事情があるのだ。今、我々は精霊様たちが大切にしているモーモの実が無くなって調査をしている。わたしは今、国王の身分を隠して調査に参加しているのだ」
マルちゃんの言葉を聞いたワブは一気に表情を明るくしてマルちゃんに答えた。
「なるほど、そういう事でしたか! 今は国王ではないというお言葉は、今は国王の身分を隠し、お忍びであるという意味でございましたか! 承知いたしました! このワブ、誰にも他言はいたしません!」
「お、おう……。ちょっと声がデカいがな……。まぁ、わたしの事はマルちゃんと呼んでくれよ」
「はっ! 承知いたしましたマルちゃん様!! それでは、お付きの方々も身分の高い方々なのでしょうか」
「え? あ、ああ。え……、ええと……。このイケオジは……」
マルちゃんが困った表情でイケオジを見ると、イケオジは素早く手のひらに氷の矢を出現させて自らワブに名乗った。
「私は宮廷魔術師のイケオジ。そしてスケルトンに見える彼らリッチとメチャツ殿も同じく宮廷魔術師だ。今は魔術で身を隠している。これも内密にな」
それを聞いたワブは驚きながら答えた。
「な、なんと! あの希少な宮廷魔術師の方々でしたか!」
続けてイケオジはゲゲロっちと元兵士の仲間たちを紹介した。
「そして彼は政務官、あちらの3人は騎士団の優秀な精鋭。そしてあの女性は……」
イケオジが一瞬ケイジャを何と紹介して良いか分からないといった表情で見ると、ケイジャも何と言っていいのか分からず、思わずマルちゃんを見た。
マルちゃんはケイジャの助けを求めるような目線に少し考えると、笑顔でワブに言った。
「ええと……、彼女はケイジャ。リムリテイル王国きっての美女で知性あふれる女性だ」
それを聞いたケイジャは思わず表情を緩ませると、マルちゃんは胸を張ってワブに言った。
「彼女は、わたしの側室だ!」
「おおおお! なんと素晴らしい! さすがでございます国王陛下! あ、いえ、マルちゃん様!」
ワブは驚きをもってケイジャを称えたが、ケイジャは表情を変えずに、ドス黒い殺気のオーラを静かにマルちゃんに送り続けた。




