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イケオジたちが老騎士に怪我をさせないように押さえつけていると、1人の少女が走ってきて声をあげた。
「おじいちゃん! 剣を抜いちゃダメって言われてるでしょ!」
しかし老騎士はイケオジたちに押さえつけられながら大声で答えた。
「わしは王の勅命を受けた栄誉ある騎士じゃ! 王の偽物を語る悪党は斬り捨てなければならん!!」
少女は急いで老騎士のところまでやってくると、人差し指を回しながら呪文を唱えた。
「ユング ナング リング ノウ。アルジ メルジ ナルジ ノウ」
少女が誰も聞いたことのない呪文をリズミカルに唱えると、老騎士は静かに眠りに落ちた。
その詠唱を聞いたメチャツは居ても立ってもいられず、骸骨の顔を布で覆い隠し、ウキウキしながら食いつくように少女に尋ねた。
「お嬢さん! その蝶が舞うようなリズムと古代語にも例を見ない詠唱……。それはまさかハイランド人の魔法では!?」
しかし少女はキョトンとした表情でメチャツに答えた。
「ええと……。すみません。この魔法は亡くなった祖母から教わったものなので良くわからないです……」
するとメチャツはさらに興奮して少女に尋ねた。
「な! なんと! それでは、お祖母様はハイランド人かもしれません! ぜひお祖母様のお話を聞かせていただけませんか!? 僕は魔法の研究に目がないのです!!」
それを聞いた少女は少し驚きながらも笑顔で答えた。
「わ、わかりました……。それよりも、祖父がご迷惑をおかけしてすみません……。お詫びに祖母の話をさせていただきますので、家へご案内します。こちらへ」
こうしてマルちゃんたちは少女に連れられて村へと向かった。
◆
マルちゃんたちは少女の先導で村に到着すると、なんとそこでは数体のスケルトンたちが畑を耕していた。
それを見たケイジャは驚きから怒りが沸き出して、思わず少女に声を荒げた。
「おいお前! まさか、お前たちが湖のほとりのモーモの実を盗んでいるわけではないだろうな!!」
しかし少女は驚いて目に涙を浮かべながら答えた。
「い! いえ! あの湖のモーモの実は精霊様たちの神聖な食べ物と教えられております! 食べるなど決してございません!!」
「じゃあ、あのスケルトンは何なのだ! お前たちの仲間だろう!?」
「あ、あのスケルトンさんたちは良いスケルトンさんたちです! どうか信じてください!」
少女はその場にひれ伏してケイジャに言った。すると、それを見たマルちゃんがケイジャを制止するように言った。
「おいおい、いきなり人を脅かしちゃダメだぜ。ちゃんと相手の話を聞かないと」
それを聞いたケイジャは我に返ると、慌てて少女の前で膝をついて少女に言った。
「す……、すまぬ。確かにコイツの言うとおりだ。どうか許してほしい」
しかし少女は怯えながらケイジャに答えた。
「ご、ごめんなさい! でも本当にモーモの実は……」
ケイジャはこの状況にどうしたら良いか分からず冷や汗を流し続けると、マルちゃんが笑いながらしゃがんで少女に話しかけた。
「ごめんごめん! 怖かったよな。このお姉ちゃんはエルフ……、いや、ええと、精霊様の大ファンで精霊様を心配しててさ。精霊様の大切なモーモの実がなくなって犯人を探してるんだよ」
マルちゃんがそう言うと、少女は驚きながら答えた。
「モーモの実がなくなったのですか?」
「ああ。それで犯人を探しに来たってわけ。お嬢ちゃん、何か心当たりは無いか?」
「心当たり……」
「何でもいいんだ。例えば見かけないようなスケルトンを見かけたとか」
「見かけないスケルトン……?」
「そうそう、えっと……、なんだ、最近、この村に見かけない連中が来たことはなかったか?」
「あ……、はい。たしかに最近、何度か街から来たという幌馬車がこの村の通りを通っていきました」
「おお! そういうの、そういうの! その幌馬車はどっちの方角から来たんだい?」
「あちらです。東からです」
「東? この村の東って……、何かあったっけか?」
「ええと……。馬で1日ほどかけて山を越えるとリムリンという大きな街があります」
「あ、そっかそっか、リムリンが近いのか。ってか、リムリンはあの戦いで無事だったのかなぁ」
するとそれを聞いていたイケオジがマルちゃんに言った。
「リムリンは大丈夫だ。ガンデロの兵はそこまでは派遣していないし、ネクロマンサーたちもガンデロ領に居たはずだ」
マルちゃんはそれを聞くと感心したように答えた。
「イケオジはほんと何でも知ってるなぁ。っていうか、まるで自分が指示したみたいな口ぶりだな」
「え? いや、そ、そうか?」
するとその時、あの老騎士が目を覚まし、乗せられていた馬から飛び降りてマルちゃんに声をあげた。
「この偽の王め!! この王の勅命を受けたワシを騙すとは……!!!」
老騎士がそこまで言うと、マルちゃんは今度は冷静に答えた。
「待った待った爺さん! ってか、なんで偽物だと思ったんだよ」
「そんなもの当然じゃ! 本物の王の名は『ツヴァイエ・レゲーノ・フォン・レイチェノル』。お前は名前を間違えおったのじゃ! それに、そんなに若いわけがない!」
しかしそれを聞いたマルちゃんは少しだけ噴き出して答えた。
「そっか、そりゃ父上の名前だ。なるほどなー」
老騎士はマルちゃんの言葉を聞くと、顔を硬直させて声を漏らした。
「な、なんじゃと……」
「わたしは息子で、王を継いだマルチェイッエ・レゲーノ・フォン・レイチェノル。……あ、そうだそうだ」
マルちゃんはそう言うと腰袋の中をゴソゴソと探して銀の腕輪を取り出した。
そしてその腕輪に刻まれた紋章を老騎士に見せながら言った。
「ほら、この紋章見れば分かるでしょ? 王家しか持つことが許されない紋章だぜ」
「なっ!!!」
老騎士はマルちゃんの腕輪を見ると完全に硬直して言葉を失った。
しかし次の瞬間、老騎士は静かに剣を抜くと素早く剣を自分の首に当てて叫んだ。
「数々のご無礼、大変失礼いたしました!!! この恥ずべき老兵は死んでお詫びを申し上げます!! やーーーー!!!」
それを聞いたマルちゃんは慌てて老騎士を止めた。
「わーー!! 待て待て待て!! とりあえず剣を置けって!! 命令、命令な!!!」
「はっ!!!」
老騎士は剣を置いてひれ伏した。




