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 翌日、エルフの村を治めるケイジャは村の入口でエルフの耳を隠す帽子をかぶり、苛(いら)だちを露(あらわ)にしながら腕を組んでいた。


 すると長老を先頭にマルちゃんたちが村の入口までやって来た。


 そして長老はケイジャの前までやって来ると優しい口調でケイジャに言った。


「では頼んだぞ、ケイジャ。早朝言った通り、この方たちが真犯人に心当たりがある。お前は里を治める者として密猟者退治の旅に協力するのだ」


「……はい」


 ケイジャは不服そうに返事をすると、それを見ていたマルちゃんが嬉しそうにケイジャに右手を出しながら言った。


「ケイジャちゃん、そう言う事だってさ! 仲良く旅しようぜ!」


 マルちゃんがケイジャに握手を求めると、ケイジャは素早く木の枝のムチを取り出して、マルちゃんをバチバチ叩きながら答えた。


「私と握手をしようなど100年早い! 下がれ!」


 しかしマルちゃんはニヤニヤしながらケイジャに近づいていった。


「えへ、えへへ。そんな事言わないでよケイジャちゃん。仲間じゃん」


「うるさい!」


 バシバシバシバシ!!


 こうしてマルちゃんたちとケイジャはモーモの実の密猟者たちを探す旅に出たのだった。


 ◆


 マルちゃんたちは里の者たちが見かけたという、密猟者たちが逃げた方角へ馬で向かっていた。


 そして半日ほど進んだ頃、元兵士の仲間たちが不審な金属音に気づいて顔を見合わせた。


「待て、あの音……」

「ああ。フルプレート・アーマー(全身を金属製の鎧で覆う防具)のヤツが歩く音だな」

「だな。けど1人みたいだぞ」


 元兵士の仲間の1人が前に出て全員に止まるようにジェスチャーすると、道の少し遠い先にフルプレート・アーマーの騎士が1人立っていた。


「騎士か?」

「だな」

「けど、ずいぶんと古い装備じゃねぇか?」


 元兵士の仲間たちが話していると、フルプレート・アーマーの騎士は兜の面を上げた。


 するとその顔を見たマルちゃんは驚いて声を漏らした。


「おいおい、とんでもねぇ爺(じい)さんじゃねぇか。幽霊ってオチじゃないだろうなぁ」


 しかしイケオジはマルちゃんの言葉を遮るようにマルちゃんに言った。


「いや。あの老人の殺気は只事(ただごと)ではない。本気で殺しにかかってくるぞ」


「えっ! あの爺さん、山賊か何かなの?」


 すると突然、フルプレート・アーマーの老騎士はマルちゃんたちに向かって名乗りをあげた。


「我こそはリムリテイル王国の王より勅命(ちょくめい)を受けた騎士なり! この先はリムリテイル王国の村じゃ! お主ら見かけぬ顔だな。何者だ!!」


 それを聞いたマルちゃんは唖然(あぜん)とした表情でイケオジに言った。


「なぁ。あの爺さん、リムリテイル王国って言ったよな?」


「うむ。そのようだな」


「え? どーゆーこと? わたしが王だったリムリテイル王国はすでにマコたちのマデマメヤ国になってるんだけど」


「いや、マルちゃん。それはそうなのだが……、私が理由を聞きたいくらいだ」


 するとそれを聞いていたメチャツがマルちゃんに言った。


「マルちゃんさん。ここは辺境の地です。もしかしたら、これまでの戦いやリムリテイル王国が滅びた話は入ってきていないのではないでしょうか」


 それを聞いたマルちゃんは顎に手を当てながら考え込んだ。


「ふむ。確かにこの辺りはこの土地の生まれの民たちしか住んでいない場所だったな……」


「ならば、僕の推測が正しい可能性が高いですね。では僕とリッチさんの骸骨姿を見たら敵だと思われるかもしれません。下がりますね」


 メチャツはそう言うとリッチと一緒に最後列まで下がった。


 その時マルちゃんは、突然思い出したように声を漏らした。


「ん? そういや、あの爺さん、王の勅命を受けたって言ってたな。わたし勅命なんて出したっけか?」


 マルちゃんが首を傾(かし)げると、元兵士の仲間たちが老騎士を少し心配するようにマルちゃんに言った。


「おいおい、王様さんよ。ここは出番じゃねぇのか?」

「勅命出したんだろ?」

「ここは王様がなんとかしてくれよ」


 それを聞いたマルちゃんはフゥと息を吐くと、手で髪の毛をオールバックにしながら呟いた。


「しょうがない。ちょっと言ってくるわ。わたしにも王の責任があるからな」


 マルちゃんは颯爽と馬から降りると、堂々とした歩みで老騎士の元へと歩き出した。


 その様子を後ろから見ていたリッチは思わずイケオジに言った。


「おお、さすがは元国王ですね。皇帝……、いや、ええと、イケオジ様のような風格が漂っています」


「うむ。今までマルちゃんを侮(あなど)っていたが、やはり元王族。その風格と気品は伊達では無いようだ」


 そしてそれを聞いていたケイジャは驚きながらイケオジに尋ねた。


「おい……。あいつは王族なのか?」


「うむ。過去の話だがな」


「なんだと……? あやつめ、この私にそれを悟らせないとは中々の策士(さくし)ではないか」


 イケオジたちの声をよそにマルちゃんは真剣な表情で歩み進むと、老騎士の前で立ち止まり、王の風格を漂わせながら老騎士に言った。


「わたしはリムリテイル王国の王、マルチェイッエ・レゲーノ・フォン・レイチェノル。よもや、わたしの名を忘れたわけではあるまいな」


 老騎士それを聞くと兜の面を静かに下ろし、片膝をついた。


 その様子を見ていた元兵士の仲間たちは感心するように口々に言った。


「すげえ! やっぱ王様だな!」

「あんなマルちゃん初めて見たぜ」

「ああ、ヤルときはヤルな!」


 しかし次の瞬間、フルプレート・アーマーの老騎士は大声をあげながら剣を抜いた。


「おのれぇぇぇぇえええ!! 王の名を語る偽者(にせもの)めがぁぁあああああ!! 恥を知れぇぇぇええええ!!」


「えっ!? えええええっ!?」


 マルちゃんは老騎士の気迫に驚いて尻もちをつきながら後ろへ転がると、それを見たイケオジたちは一斉に走り出して老騎士を止めに入った。

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