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哲夫はしばらく何かを考えると黒猫に尋ねた。
「猫さん。ちなみに、この村の後ろ盾はいらっしゃるのでしょうか」
「はい。貴族連合という腐敗した王政に反発するという貴族の方々から庇護を頂いております」
「おお、そうでしたか。それならば少しの間は安心ですね。しかし準備は早くしなければならないでしょうな」
するとそれを聞いていたアカネが哲夫に尋ねた。
「それって、この村が危ないってこと?」
「はい。この村、というよりも回復薬の調合ができる洋子さんが危ないでしょうな。専売となれば敵も現れるでしょう」
「え、でも氷の魔法も使えるし、猫ちゃんもいるしさ。それにじいちゃんも、熊じぃも、茂じぃだっているんだよ。イザとなったら力で勝てるんじゃない?」
「確かに武力という点では有利でしょう。ですが狡猾な手段、例えば村人を人質に取られたり、食料を絶たれたりといった方法にはなかなか勝てません」
「そっか、たしかに。実戦は試合じゃないもんな」
するとその時、突然村の長が家に飛び込んできた。
バタン!
「みなさん、どうかお知恵をお貸しください! 貴族連合の傭兵団がこの村を占領すると言って村の門の前を占拠しているのです」
「「ええええ!」」
おじいさんたちが驚いていると、哲夫が立ち上がって村の長に尋ねた。
「予想以上に早く事が動きましたな。しかし貴族連合はこの村の後ろ盾。不満があれば高額な傭兵を動かす前に使者をよこすはず。……何かおかしいですね。私に交渉をさせていただけませんか」
「は、はい。どうかお願いいたします」
哲夫は村の長と一緒に家を出ようとすると、振り返っておじいさんたちに言った。
「もしかすると交渉中に私に何かあるかもしれません。その時は宜しくお願いします」
おじいさんたちは哲夫の言葉に頷いて哲夫たちと一緒に家の外へと出た。
そして哲夫と村の長が門へと向かうと、おじいさんたちは相談して全員村の門が見える物陰に隠れることにした。
―― 村の門 ――
哲夫は村の長と一緒に門までやって来ると、門の外にはヤクウィー辺境伯の兵を率いたエルジョルートが貴族連合の傭兵団に扮して待っていた。
哲夫は兵の先頭に立つエルジョルートの前に出ると、頭を下げて話し始めた。
「これはこれは貴族連合の騎士様。この村を占領するというのは本当でしょうか」
エルジョルートは顔を覆う布を少しだけ下げると哲夫に言った。
「その通り。村の者たちを全員ここへ集めろ。もちろん魔道士もな」
「騎士様、貴族連合の方となれば遠路はるばるの旅かと存じます。村の者を集める間、お飲み物などはいかがでしょうか。兵の方たちの分もご用意いたしますが何名ほどで」
「ほう、気が利くな。兵は全部で200だ。村の前の道に待たせている」
「承知いたしました。すぐにご用意いたします。しかし騎士様、遠路はるばるお越しになった割には馬の足が汚れておりませんね。まるで一山超えるほどの汚れでございます」
それを聞いたエルジョルートは一瞬目を泳がせた。
それを見逃さなかった哲夫はエルジョルートに尋ねた。
「騎士様。その剣の紋章、どちらの貴族様の紋章でしょうか?」
「なにっ!?」
エルジョルートはヤクウィー家の紋章がバレてしまったと思って慌てて剣を見たが、剣には何の紋章も刻まれていなかった。
哲夫はエルジョルートの慌てた姿を見ると即座に後ろに振り向いて退路を確認した。
すると、口車に乗せられて騙されたエルジョルートは激昂して大声をあげた。
「おのれ貴様! 馬鹿にしているのか!!」
その瞬間、哲夫は村の長の手を掴んでエルジョルートから離れるように引っ張った。
「逃げますよ!!」
「は、はい!」
そして村の長と一緒に逃げ出すと、大声で物陰に隠れているおじいさんたちに言った。
「敵兵は村の前の道に200!! みなさん!! お願いします!!」
哲夫がそう叫んだ瞬間、
シャァァァアアアア!!
おじいさんが投げた火薬玉が哲夫の顔の横をかすめ、一直線にエルジョルートへと飛んでいった。
エルジョルートは火の着いた玉が飛んでくる事に驚き、慌てて馬を引いた。
「なっ! 火が飛んでくる!!」
しかし次の瞬間、
ドガァァアン!!
火薬玉は急激に落下してエルジョルートの手前に落下すると、地面に着弾して爆発した。
その音と炎に驚いた馬たちはパニック状態になって走り出した。
ヒヒィィィン!!
ヒヒヒイイィン!!!
「うわぁあ!」
「落ち着け! 落ち着け!」
「うわぁ! 炎の魔法だ!」
すると骸骨姿の黒猫と魔王エヴ、そして魔剣の使い手インメリアが空から魔法陣の階段を降りてきた。
黒猫は空中で魔王エヴとインメリアに釘を刺すように言った。
「洋子殿は他人を殺してしまう事を許してくださらない。必ず生け捕りにするのだ」
「承知」
「はっ」
「我とエヴは敵を挟み込んで退路を断つ。インメリアは中央突破だ。できるか」
「もちろん。お腹が空いてなければ剣では負けない」
インメリアはそう言うと村の門へと飛び降りていった。
エヴと黒猫は空中で向きを変え、敵の兵団の左右に別れた。
◆
その頃、村の前の道でパニックになっている兵たちの間を忍者のようにすり抜けてゆく影が2つあった。
「おっし熊じぃ、そろそろやろうか!」
「そうですな、アカネさん!」
それは大熊笹とアカネだった。
大熊笹とアカネは顔を見合わせて頷くと、両手に目潰しの粉を出現させた。
そして全速力で走り出すと、次々と目潰しの粉を撒き散らした。
「とぅっ! 目潰し、乱れ投げ!!」
「はっはっは! 懐かしいですな!」
ブワァァアア!
「ぎゃぁあ! 目が!」
「目がぁ、目がぁ!」
「な、何も見えない!」
目潰しはパニックになっている兵たちをさらにパニックにした。




