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ある朝、マルちゃんたちがサトゥマ芋畑に仕事をしにやって来ると、小綺麗な服を着た若者が、畑を管理している商人と話をしていた。
マルちゃんはそれを見ると鼻をほじりながら呟いた。
「良い服を着た兄チャンがいるなぁ。ありゃ、だいぶ身分が高いぞ。あの商人のオヤジ、賄賂でも渡してんじゃねぇのか?」
するとそれを聞いたリッチがマルちゃんに答えた。
「あれはヤクウィー王の長男、エエウヤス殿下ですね」
「うおっ、マジで!? ほんとに身分高いじゃんか。いやぁ、おれの目利きは相変わらず王族レベルのままだな。安心したぜ。はっはっは」
するとその時、マルちゃんたちに気づいた商人が駆け寄ってきてマルちゃんたちに言った。
「おーい! 今、エエウヤス殿下が畑の視察に来ていてな。なんでもレンサク・ショーガイっていうのになってるらしくて、サンプルを採取しに来てるんだ」
それを聞いたメチャツはウンウンと頷きながら商人に言った。
「なるほど、連作障害ですね。同じ作物を同じ場所で作り続けると収穫高が減ったり、劣化したものができるという……」
「そうそう、殿下もそんな事言ってたよ。でな、しばらく畑が使えないんで、10日ほど休んでくれるか?」
「「ええっ!?」」
マルちゃんたちが驚くと、商人はニヤリと笑って親指と人差指で輪っかを作りながらマルちゃんたちに言った。
「心配するな、給金は殿下が補填してくれるそうだ。ちゃんと殿下にお礼するんだぞ」
それを聞いたマルちゃんたちは直角に頭を下げながらエエウヤスに大声でお礼をした。
「「ありがとうございます、殿下!!」」
突然の大声に驚いたエエウヤスは苦笑いをしながら手を振った。
◆
その後、仕事がなくなったマルちゃんたちは酒場の前にあるベンチに座って話していた。
「どうする? まだ朝っぱらだぜ?」
「ああ、酒場は夕方からだからなぁ」
「急に休みって言われても困りますねぇ」
「朝からヒマって結構困るもんだな」
「ですね。ほんと同感です」
するとメチャツが思い出したように皆に提案した。
「あ! もし良かったら、隣のマコ王領にある高原の湖に行きませんか? 僕、ここに来る途中に見つけたのですが、甘いモーモの実が沢山なっていたんですよ!」
それを聞いたゲゲロっちは嬉しそうに顔を緩ませながら声を漏らした。
「モーモの実……。最後にあれを食べたのは、まだ屋敷に住んでいた頃……。あのエレガントな甘みは今でも思い出されます……」
するとなんとイケオジも顔を緩ませながら呟いた。
「モーモか……。なんと懐かしい……。私も身分がある時は食べたものだ。あの甘い香りが思い出されるな」
さらにリッチとメチャツも顔を緩ませながら呟いた。
「モーモ……。私もある程度身分がありましたので頂きましたが、その甘さたるや……」
「ええ。僕も英雄の称号を頂いたときに副賞としてモーモを頂いたんです。美味しかったですね……」
すると元兵士だった仲間たちは口々に言った。
「やっぱ身分が高いと食ってるモンが違うなぁ」
「な。モーモなんて架空の果物かと思ってたぜ」
「じゃ王様だったマルちゃんも食ったんだろ?」
そう言って全員がマルちゃんを見ると、なんとマルちゃんは唇を噛みしめながら悔し涙を流していた。
「わたし……、モーモ……、食べたこと……、ない……」
マルちゃんが大粒の涙を流しながら片言の言葉で答えると、みんなは慌ててマルちゃんを励ました。
「お、おお! そりゃタマタマだろうよ!」
「な、なんだ王宮の奴らセンスねぇなぁ!」
「はっはっは! って、実はマルちゃんだけ仲間外れだったんじゃねえの?」
仲間の1人が茶化すようにそう言うと、リッチとイケオジはマルちゃんを庇うように言った。
「な、仲間はずれだなんて事ありませんよねぇ。ね、イケオジ様」
「うむ。きっと私の故郷が寒くて手に入りやすかっただけに違いない」
すると突然、メチャツが科学的に、かつ悪気なく口を挟んだ。
「いえ、気候が寒いからと言って手に入りやすいとは限りません。むしろ、温暖な気候のほうが手に入りやすいでしょう。というのもモーモの実は……」
メチャツがそこまで解説するとゲゲロっちが大声でメチャツの言葉を遮るように言った。
「はいはい! 決まりですね! モーモの実を採りに高原の湖へ行きましょう!! さぁ、準備しましょう!! はいはい、行きますよ!!」
こうしてマルちゃんたちはマコ王領にある高原の湖へ向けて出発したのだった。
◆
日も傾きかけた頃、農耕用の馬に乗ったマルちゃんたちは高原の湖に到着していた。
しかしなんと、モーモの木はたくさん生えていたが、モーモの実は1つも無かった。
「なっ……、なぜだ……。神は……、モーモの神は、わたしを見放したのか!」
マルちゃんが涙を流しながら声を漏らすと、元兵士の仲間たちがマルちゃんの肩を叩きながら励ました。
「な、なんだよモーモの神って」
「また来ればいいじゃんか、な」
「そうそうモーモは逃げねぇぞ」
しかしマルちゃんは涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら答えた。
「いや、モーモは逃げる! だってほら、見てみろ! 1つもモーモの実が無いなんて不自然だろ!? モーモのヤツら逃げたんだよ! あいつら逃げるんだよ!!」
パニックになっているマルちゃんを横目に、メチャツは顎に手を当てながら小さく呟いた。
「確かに変ですね。モーモの実が1つもないのは不自然です。これは人為的に収穫された可能性が高いですね……」
メチャツがそう言った瞬間、メチャツとリッチ、そしてイケオジは遠くから矢が飛んでくる事に気づいてマルちゃんに言った。
「マルちゃん!」
「頭を下げて!」
「矢だ伏せろ!」
「ええっ!?」
マルちゃんはメチャツたちの言葉に振り返ると、
ビュッ!!
マルちゃんの耳を矢が掠め、マルちゃんの耳からゆっくりと血が流れた。




