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竜騎士は奪い取ったドラゴンを操作して空高く舞い上がると、下に見下ろす英雄の竜騎士たちに声をあげた。
「上は取った! 死にたくなければ降参しろ!」
しかし英雄の竜騎士2人はその言葉を理解できずに答えた。
「はぁっ!? 上に行ったから何だっていうんだ!」
「死ぬのはお前だ! 炎の餌食になりなビビリが!」
それを聞いた竜騎士はやれやれといった表情で手綱を引くと、英雄の竜騎士に向かって一気に急降下をした。
シャァァアアアア……
それを見た英雄の竜騎士たちは慌ててドラゴンの頭を蹴り上げると、炎で応戦しようと手綱でドラゴンの頭を上へ向けた。
ボワァァアアアアア!!
そしてドラゴンから炎が吐かれると、上空から急降下してきた竜騎士は軽やかに炎を避けながら速度をあげ、英雄の竜騎士の1人を狙って槍を構えた。
それに気づいた英雄の竜騎士は慌てて槍を構えたが、急降下してくる竜騎士は一瞬にして槍で英雄の竜騎士の頭を串刺しにして、頭蓋骨を奪い去っていった。
ガッ!
「……!!」
体だけが残った英雄の竜騎士はドラゴンから滑り落ちるように地上の森へと落ちてゆくと、残った英雄の竜騎士はその様子を唖然としながら見つめた。
竜騎士は串刺しにした頭蓋骨を投げ捨てるように地上へ落とすと、振り返って1人残った英雄の竜騎士に言った。
「残念だったな。お前はもう死んでいる」
「はぁっ!?」
ドガガガガガガガ!
パァン!
敵の竜騎士が声を上げた瞬間、エスプララが放った矢とメメが放った矢が正確に英雄の竜騎士の頭蓋骨を射抜き、頭蓋骨は破裂するように粉々に砕け散っていった。
◆
その頃、マルちゃんたちが住む難民の町では黄色の破戒僧バブロオたちとの壮大な戦いが始まっていた。
リッチとメチャツは魔法でスケルトンたちとバブロオに攻撃を仕掛け、マルちゃんとゲゲロッチ、そして元兵士の仲間たちは回り込んできたスケルトンたちを抑え込んでいた。
しかしバブロオは得意の防御魔法でリッチとメチャツの魔法を消滅させながらハイテンションで声をあげていた。
「いいっ! いい魔法だ! 最高にぃぃぃ、最高にぃぃぃ! 来るぅぅぅうう!」
バブロオはそう言いながら腰をウキウキ動かすと、リッチは少し引きながらメチャツに尋ねた。
「メチャツさん、あのバブロオって人は……」
「ええ。ちょっと面倒くさい人なんですよ……」
「とりあえず小手調べにいくつか魔法を放ちましたが、次はヘルファイア・アンド・ブリムストーン放ってもいいですか?」
「はい。私も雷の白金級魔法を放ちます。いきましょう」
メチャツがそう言うとリッチは首から下げている魔力の首飾りを握って詠唱を始めた。
そしてメチャツも白金級の雷魔法の詠唱を始めると、それを聞いていたバブロオは突然服を脱ぎだしながら叫んだ。
「あはぁ!! それは古代魔法に白金級魔法! あぁぁああ!! いぃぃいいい!! 全身で受けてみたぁぁぁああいいいい!!」
しかしその言葉を聞いたメチャツは瞬時に言葉の意味を悟り、小声でリッチに言った。
「魔力を温存して小さく放ってください」
「は、はい!」
リッチは咄嗟に魔力を抑制すると、小さくヘルファイア・アンド・ブリムストーンを放った。
そしてメチャツも芝居をするように出力を落とした雷魔法をバブロオへ放つと、リッチの魔法とメチャツの魔法は渦を巻きながらバブロオの元へと飛んでいった。
バァァァン!!
しかしバブロオは全身にまとわせた防御魔法でリッチとメチャツの魔法を防ぐと、恍惚な表情で声をあげた。
「あぁぁああ! いぃぃいい!! 古代魔法と白金魔法のミックスジューース! 最高ですねぇぇぇええ!」
バブロオはクネクネと腰を動かしながら声をあげると、突然動きを止めてリッチとメチャツに言った。
「じゃ、次はぼくの番ね」
バブロオはアゴをカクカクと鳴らしながら笑うと、魔族が操る黒炎の魔法を発動し始めた。
◆
その頃、その様子を路地裏から見ていたイケオジは唇を噛みながら声を漏らしていた。
「くそぅ! あんな幼稚な黒炎の魔法など、上級ヴァンパイアの私ならば簡単に蹴散らせる! この腕輪のせいで!」
イケオジは魔王エヴがヴァンパイアの能力を封印するために着けた腕輪を睨みつけると、ふと思いついて静かに笑った。
「……ああ、そうか。手首を切り落とせば良いだけのことだ」
イケオジはそう呟くと思い切り走り出して、収穫用の刃物が置いてある農具倉庫へと走り込んだ。
そしてイケオジは収穫用のナタを手に取ると、躊躇すること無く自分の手首を切り落とした。
ダン!
「うぐっ!!」
魔王エヴの腕輪は手首ごと転がり落ち、その瞬間イケオジは自分の体に膨大な魔力が湧いてくるのを感じた。
そしてその魔力を使って切り落とした自分の腕の先を氷漬けにして出血を止めると、背中に羽を広げて呟いた。
「この町は絶対に守る」
バサァァァアアア!
イケオジは小屋から空へと飛び出すと、大きく羽ばたいてバブロオの元へと向かった。
◆
その頃、マルちゃんたちはスケルトンの兵士たち相手にじわじわと劣勢になっていた。
マルちゃんはグニャグニャに曲がった中古の盾を構えながらゲゲロっちに言った。
「ゲゲロっち! そろそろヤバいぞ!」
「は、はい! 私も限界です! もう剣を持つ力も……」
しかし元兵士の仲間たちが声をあげた。
「マルちゃん、ゲゲロっち、頑張れ! おれらが死んだらこの難民の町は終わりだぞ!」
するともう1人の仲間が笑いながら言った。
「おい! この危機を乗り切ったら、この町を救った英雄だって酒場でモテモテだぞ! お前ら、モテてぇんだろ!?」
それを聞いたマルちゃんとゲゲロっちは一気に息を吹き返すと、大声をあげてスケルトン兵たちに突っ込んでいった。
「うおおおお!! もうひと花咲かせてやるぜぇえ!」
「私も年齢イコール彼女いない歴を卒業ですよぉお!」
マルちゃんとゲゲロっちは果敢にスケルトン兵たちに突撃していくと、突然周辺の気温が下がって行くのを感じた。
「ん?」
「寒い……、ですか?」
マルちゃんとゲゲロっちが振り返ると、なんと空に羽を広げたイケオジがいた。




