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「なんと、だらしない寝顔なんだ。魔王の側室か?」
英雄の剣聖はそう言いながら静かに剣を抜くと、アカネの喉元をめがけて剣を振り下ろした。
しかしその瞬間、アカネは目をパチリと開いてニヤリと笑った。
「待ってたよ!」
アカネは振り下ろされる剣の力をいなすように受け取ると、腕を巻き取るように素早い一本背負いを決めた。
「やぁぁぁああ!」
ドガン!
「ぐわぁぁああ!」
剣聖は謁見の間の床に叩きつけられると、アカネは素早く距離をとって構え直した。
剣聖は見たこともないような投げ技に驚くと、剣を構えてアカネに言った。
「ほう。こちらが油断していたからとはいえ見事な格闘術だ」
それを聞いたアカネは笑いながら答えた。
「ははは! 敵を認めるなんてナカナカだね。でも、忍び込んで殺そうとするのはズルいけどね」
アカネがそう言うと剣聖は少し疑問に思ってアカネに尋ねた。
「それにしても、私が忍び込んだことに良く気づいたな。私はシーフの技術に長けている。それを見破るとは、お前もシーフなのか?」
「あたし? あたしは柔道家だよ。でも、きみが忍び込んできたのはズッと前から分かってたよ。気配もヤバいし、扉開けた時の負圧も感じたしね」
アカネは少しドヤ顔で話すと、剣聖は拍子抜けしたように剣を下ろして言った。
「なんという女だ。私のシーフの技術が効かぬとはな。そして今そうやって話していても隙がない。お前は相当な手練れだな」
「手練れ? まぁ、一応オリンピックで金メダル取ったからね。世界一って事は間違いないかもね」
それを聞いた剣聖はアゴをカクカクと鳴らしながら笑って言った。
「はっはっは! これは面白い! 女、私と勝負してくれ。お前は強そうだ」
アカネは剣聖が剣を構えるのを見ると、笑顔で構えて答えた。
「いいよ。でも、あたしは女じゃなくてアカネだよ。きみは?」
剣聖は剣を下段に構えると、そのまま片膝をついてアカネに言った。
「これはこれは申し遅れました。私は剣聖ウニ。以後お見知りおきを」
「ウニっち、よろしくね。美味しそうな名前だね、ははは」
ウニはアカネの満面の笑顔につられて笑いそうになったが、スッと立ち上がって戦闘態勢に入った。
「アカネ殿、いざ!」
ウニはそう言って飛び出すと、アカネは余裕の表情でウニに言った。
「その構えからは斬り上げと水平しか剣を振れないでしょ? あとはフェイントの突きとか?」
ウニはアカネの言葉に驚くと、慌ててサイドステップをして横に逃れた。
ザザッ!!
しかしアカネは追随するように飛び出すと、ウニの懐に入ってニヤリと笑った。
「ウニっち、動き読まれすぎだよ」
「くっ!」
ウニは懐に入ってきたアカネに剣が振れないと察知すると、反射的に膝蹴りを繰り出した。
それを見たアカネは冷静にウニの膝を両手で押さえると、素早く軸足を払って肩でウニの体を吹き飛ばした。
ドガッ!
「ぐわっ!」
ウニは床に仰向けに倒れたが、アカネはそれ以上は攻撃せずに立っていた。
それを見たウニは起き上がって胡座をかいて座り、剣を床に置いてアカネに言った。
「アカネ殿、私の負けだ。このウニ、これほどまでに負けたことはない。煮るなり焼くなり好きにするがいい」
アカネはウニの言葉を聞くと笑いながら答えた。
「ははは! ってか、ウニっち骨だし。煮ても焼いても食べられないじゃんか。あ、煮たらダシが出るとか?」
それを聞いたウニは思わずつられて笑うと、アゴをカクカクと鳴らしながら言った。
「はっはっは、アカネ殿は面白いことを言う! まぁ、私の骨から出るダシなど、殺された相手の恨みしか滲み出てこないだろうがな!」
ウニは大笑いしていたが、アカネはちょっとだけ引いた。
◆
その頃、ネクロマンサーの国とマデマメヤ国の国境付近の上空で、おじいさんたちとネクロマンサーの国から来た英雄の竜騎士たちの戦いが始まろうとしていた。
英雄の竜騎士たちはおじいさんたちが乗るドラゴン2頭を見つけると、先頭を行く英雄の竜騎士が声をあげた。
「おいおい、敵にガツデの竜騎士がいるぞ! 寝返りやがった上に仲間まで連れてやがる!」
それを聞いた英雄の竜騎士2人は笑いながら答えた。
「あの腰抜けが!」
「殺しましょう!」
「だな!」
先頭を行く英雄の竜騎士はドラゴンの頭を足で蹴りつけて炎を吐かせようと準備すると、その瞬間、
シャァァアアアア!
パァン!
なんと、おじいさんが投げた粘着玉がドラゴンの頭に命中してドラゴンは口がうまく開けなくなった。
しかしドラゴンは、英雄の竜騎士の操作で炎を吐くことを止められず、口を閉じたまま炎を吐き出した。
ブオォォォオオオ!
その炎は口の隙間から漏れ出し、背に乗っている竜騎士に襲いかかった。
「うっ! うわぁぁあああ!」
先頭を行く英雄の竜騎士は慌ててドラゴンの首を殴りつけると、ドラゴンは反射敵に炎を吐くのを止めた。
先頭を行く英雄の竜騎士は体勢を立て直すと、一瞬頭上から差す日差しに陰が出来た事を見逃さなかった。
「上か!」
先頭を行く英雄の竜騎士が上を見上げると、なんとおじいさんたちとやってきた竜騎士がドラゴンから単身で飛び出し、槍を突き出しながら飛び降りてくる姿が見えた。
「なっ! ここは空だぞ! ばかな!!」
パァン!!
先頭を行く英雄の竜騎士が声をあげた瞬間、飛び降りてきた竜騎士の槍は頭蓋骨を正確に貫いて破壊していた。
先頭を行く英雄の竜騎士は両手をダラリと降ろして槍を落とすと、そのまま地上の森へと滑り落ちていった。
おじいさんたちとやって来た竜騎士はそのまま敵のドラゴンの手綱を握ると、羽の付け根を優しく押し込んでドラゴンを操作した。
するとドラゴンもそれに答えるように美しく羽ばたき、英雄の竜騎士たちの上空へと舞い上がった。




