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骨パンとユベユが再会を懐かしんでいる頃、近くでは槍の鬼神と近衛騎士団長が一進一退の戦いを繰り広げていた。
槍の鬼神はしぶとく戦い続ける近衛騎士団長にイライラしながら声をあげた。
「ったく! しぶてぇヤツだなぁ! 守ってばっかいねぇで、かかってこいよ!!」
しかし、近衛騎士団長は嘲笑うかのようにニヤリと笑って槍の鬼神の攻撃を受け流し続けた。
その表情を見た槍の鬼神は近衛騎士団長の笑い顔が気に入らず、怒りに任せて大振りに槍を振るった。
「てめぇ! ムカつく顔しやがって!!」
その瞬間、近衛騎士団長は大きく一歩を踏み出した。
ドンッ!!
槍の鬼神は怒りに任せて大振りの大技を放った事が災いし、自分の懐に踏み込んできた近衛騎士団長の剣を受け止めることは出来なかった。
「ちぃっ!!」
近衛騎士団長は剣を地面すれすれから大きく斬り上げると、体を回転させて剣を全力で振り切った。
ブンッ!!
パァン!!
「ぐわぁっ!!」
近衛騎士団長の剣は槍の鬼神の両腕を見事に切り落とし、槍の鬼神の槍は両腕ごと吹き飛んでいった。
近衛騎士団長は素早く剣先を槍の鬼神に向けると、槍の鬼神に言った。
「怒りに負けたお前の負けだ」
しかし槍の鬼神は静かに何かブツブツと言い始めた。
「何をブツブツ言っている!」
近衛騎士団長がそう言った瞬間、魔王エヴは槍の鬼神が魔法の詠唱をしていることに気づいて近衛騎士団長に言った。
「おい、離れろ! そいつは炎の魔法を詠唱している!!」
「なにっ!!」
近衛騎士団長は魔王エブの声に素早く離れたが、槍の鬼神の魔法のほうが早く完成した。
ボワァァアアア!!
「ぐぁぁっ!!」
近衛騎士団長は両足に炎を受けると、鎧の上から熱を浴びて足はみるみる火傷を負っていった。
近衛騎士団長は急いで足の鎧を脱ぎ捨てたが、槍の鬼神はさらに次の詠唱を始めていた。
それを聞いた魔王エヴはそれが炎の上級魔法だと分かると、咄嗟に頭のスイッチがファイティングモードに切り替わった。
「まぉおおエヴゥ!! いかせていただきゃぁぁっす!!!」
魔王エヴは両腕でガードを固めながら槍の鬼神に突進すると、大きく踏み出して鋭く腰を回転させ、その勢いで右拳を飛ばした。
「おおぉぉぉおおおお!!!」
バチィィン!!
そしてその右拳は槍の鬼神の顔面をとらえると、槍の鬼神の頭蓋骨は破裂した水風船のように粉々に飛び散った。
パァァァン……!
「魔王のくせに……、魔法つかわねぇ……、のか……、よ……」
頭を失った槍の鬼神はゆっくりと膝から崩れ落ちると、そのまま地面に倒れて動かなくなった。
そして魔王エヴは近衛騎士団長のところまでやって来ると、頭を下げて近衛騎士団長に言った。
「近衛騎士団長、戦いに水を差して悪かった。しかし、炎の上級魔法は避けたかったのだ」
しかし近衛騎士団長は両足に火傷を負って立ち上がれないまま頭を下げて魔王エヴに言った。
「魔王殿。敵が魔法を使うことを読めなかった私の失態です。申し訳ありませんでした。魔王殿がいなければ上級魔法が放たれ、我らの兵に重症者が多く出たでしょう」
「……いや、分かってくれるのならばそれで良いのだ。お前の素晴らしい戦いに感謝する。お前は火傷が治るまでミナミの村で休養することを命じる。ゆっくり休んでくれ」
「魔王殿……」
近衛騎士団長は近衛騎士の数名に抱えあげられ、ゆっくりと馬に乗せられた。
◆
そのころ、ネクロマンサーの国ではネクロマンサーたちが総出で墓場からスケルトンを蘇らせていた。
「ぼく、もう力が出ないよ」
「ああ、おれもだ。くそっ」
「1万の兵ってまだなのか」
「もう兵士の墓ないぞ……」
「もう誰でも蘇らせろよ!」
「ああ、1万足りればいい」
ネクロマンサーたちは1万の兵を蘇らせることが難しく、結局兵士の墓ではない墓からもスケルトンを蘇らせ始めた。
その結果、スケルトンたちに武器を配給する城の建物ではパニックが起きていた。
「剣と盾だ。これを持って英雄ヤー様の所へ行け」
「あの……。あたしパン屋で剣なんか持ったことないのだけれど……」
「なにっ!? パン屋だと!?」
「ええ。それにこんな骨になっちまったけど、あたしゃ女だよ?」
「なんだって!?」
すると隣でも会話が噛み合っていなかった。
「剣と盾だ。これを持って英雄ヤー様の所へ行け」
「あのぉ~、おら畑仕事しかしたことなぐでなぁ。クワなら振るえるんだけんどもなぁ」
「なんだとぉ!? お前は兵士ではないのか?」
「あっはっは! おらが兵士だって? そら大したもんだ。あっはっは!」
こうして英雄ヤーの部隊は一般人だらけの部隊となってしまった。
◆
その頃、ネクロマンサーの国の高級住宅街では竜騎士の称号を持つ英雄たちが残った3頭のドラゴンを操りながら笑い合っていた。
「しかし、屍のドラゴンに乗ることになるとはな! 屍の我らにはピッタリではないか。はっはっは!」
「貴殿、面白いことを言うな! それにしても、ガツデの竜騎士が帰ってこないらしいぞ。脱走でもしたか」
「まぁ、分からんでもないな。ここは退屈だ。しかしガツデの竜騎士は訓練ばかりして退屈なヤツだったな」
「ああ、くだらねぇ事ばっか言ってたぞ。ドラゴンに頼るな、槍術を磨けとかさ。おれらは槍使いじゃねぇって」
「はっはっは、本当だな! ドラゴンを操るからこそ竜騎士だ。ガツデ王朝の竜騎士はやはり古いな。まぁ我らが生きていた時よりも何百年も前の国だしな」
「そうそうそう。古い奴らは頑固で面倒だよな。槍なんて空中戦じゃ届かねぇっつうの」
「「はっはっはっはっ!」」
竜騎士たちが笑うと、従者が走り寄ってきて竜騎士たちに伝えた。
「英雄の竜騎士様! 敵がドラゴンに乗ってやって来ました! 敵のドラゴンは2頭! 出撃お願いします!」
それを聞いた竜騎士たちはドラゴンの手綱を無理やり引いて羽の付け根を力ずくで踏みつけると、竜騎士の1人が従者に訪ねた。
「方角は!?」
「ちょうど、この城から真南です!」
「まかせておけ! お前らは安心して待っていろ!」
竜騎士はそう返事をすると、ドラゴンの首を蹴り飛ばして無理やり空へと飛び立っていった。




