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その頃、ベベの村のインメリアの所にもガーゴイル偵察隊の連絡がやって来て、ヤクウィー王からの出撃命令を受けていた。
出撃命令を聞いたインメリアはベベの村の近くに宿舎を構える騎馬隊本隊へ出撃準備をするように通達した。
そして遺跡の魔族の兵たちも続々とベベの村に集まってきて出撃準備を整えると、ヨクヨ商会も移動用のデカトラの準備を整えた。
おじいさんとおばあさんも出撃準備を整えていると、なんとそこへ屍のドラゴンに乗った竜騎士と、おなじく屍のドラゴンに乗ったラゴとアリオネルダがゆっくりと舞い降りてきた。
バサッ、バサッ、バサッ……
ズゥゥゥン
竜騎士とラゴはドラゴンを着地させると、ラゴがおじいさんとおばあさんに言った。
「ひろし様、洋子様。お2人は遠距離の攻撃ができ、空からの攻撃に適しています。どうか、お1人ずつドラゴンにお乗り頂けませんか」
おじいさんとおばあさんはラゴに頷いてそれぞれドラゴンに乗り込むと、そこへメメとエスプララがやって来て竜騎士に言った。
「私も乗せてくれませんか? 弓は上からの攻撃が有利です」
「私の大弓も空から狙えれば、威力はさらに強力になります」
それを聞いた竜騎士は2人の提案を受け入れて答えた。
「確かにその通りだな。メメ殿とエスプララ殿もドラゴンに分乗してくれ」
「はい」
「はい」
竜騎士の許可を得ると、メメとエスプララもドラゴンに乗り込んだ。
◆
その頃、ミナミの村近くの北の街道ではガンデロ帝国の近衛騎士団と騎士団、そして骨パンと魔王エブが、侵攻してきた3人の英雄とスケルトンたちと交戦直前だった。
剣聖を筆頭に、槍の鬼神、そしてパンチと呼ばれる英雄は前に出ると、対峙する魔王エヴの軍勢に声をあげた。
「よく聞け! 我らは歴史に名を残した英雄だ! 殺されたくなければ道を開けろ!」
しかし魔王エヴはゆっくりと前に出ると、英雄たちに言った。
「我が名は魔王エヴ。お主らこそ、殺されたくなければ退け」
それを聞いた槍の鬼神は憤ると、それとは反対に冷静に聞いていた英雄のパンチがゆっくりと歩み出て魔王エブに言った。
「僕の名はパンチ。魔王エヴ、僕が相手になりましょう」
すると魔王エヴは答えた。
「ほう。お前の名がパンチという事は、お前は天下一品武闘会の優勝者なのだな?」
それを聞いた英雄のパンチは驚きながら答えた。
「なぜそれを知っているのですか?」
「それは、こちらの骨パン……、いやパンチから話を聞いたからだ」
「パンチ……?」
英雄のパンチが骨パンを見ると、骨パンはゆっくりと英雄のパンチのほうを向いた。
そして骨パンはファイティングポーズをとると、英雄のパンチもファイティングポーズとって魔王エヴに言った。
「魔王エヴ、戦うべき相手はそちらのパンチのようですね」
「うむ、おそらく彼もそれを望んでいるだろう」
それを後ろで聞いていた槍の鬼神はイライラしながら魔王に言った。
「おい魔王! おれにも相手をよこせよ! 誰か強いやつはいねぇのかよ!」
すると近衛騎士団長が剣を抜いて前に出て答えた。
「ならば私が相手になろう。私はガンデロ帝国近衛騎士団長だ。不足はないだろう」
「はぁ!? 近衛騎士団長ごときが調子に乗るなよ。俺は千の兵士を倒した伝説の槍使いだぞ?」
「ほう、その程度か。その大口、二度と叩けないように首を斬り捨ててやろう」
「あ? お前、ムカつくな」
近衛騎士団長が剣を構えると、槍の鬼神は怒りを顕にして槍を構えた。
その様子を見ていた英雄の剣聖は何も言わずに後ろへ下がると、それに気づいた魔王エブが剣聖に言った。
「お前は逃げるのか」
しかし剣聖は静かに答えた。
「ふっ。お前の策には乗らん」
それを聞いた魔王エヴは静かに笑うと、剣聖もまた静かに笑ってスケルトンの兵の中へ紛れていった。
魔王エヴはその様子を見届けると、腕を組んで呟いた。
「さすがは英雄。知略に優れた者もいるとは思っていたが、やはりいたか。冷静に見れば我が軍が優勢。それを瞬時に見極めるとは」
魔王エブがそう言うと、その近くでは英雄パンチと骨パンの戦いが始まっていた。
◆
英雄のパンチは骨パンと腕を組み合うと、お互い一歩も退かずに力比べをしながら骨パンに言った。
「くっ! なかなかの力ですね! あなたは何代目のパンチですか?」
それを聞いた骨パンは嬉しそうに答えた。
「はっはっは! オレは第5代パンチ! 75歳で引退するまで無敗の男だ!」
英雄のパンチはそれを聞くと思わず声をあげた。
「えっ! おじいちゃん!」
「なにっ!?」
骨パンは思わず力を緩めると、英雄のパンチは手を放して両腕をダラリと下げながら骨パンに言った。
「僕だよ。ユベユだよ。おじいちゃん!」
それを聞いた骨パンは思わず英雄のパンチに手を差し伸べると、英雄のパンチは骨パンに抱きついて言った。
「おじいちゃん!」
「ユ……、ユベユ!」
「おじいちゃん、聞いてくれよ! 僕、近所のいじめっ子にも負けてたけど、頑張ってパンチになったんだ! おじいちゃんみたいに強くなりたくて!」
「なんだって!? おお……、あんなに弱かったお前が……。そうかそうか、お前は頑張ったんだな」
「ああ! 僕はいつも強くて優しいおじいちゃんが大好きだった。だけど、おじいちゃんが死んじゃって、僕はいじめられたんだ」
「おお……。それは済まないことをしたユベユ……」
「いや、それはいいんだ! だから僕は、おじいちゃんみたいになろうと思った。僕はおじいちゃんみたいに誰かを守れる格闘家になりたくて一生懸命に修行したんだ!」
「そうか、オレの事を思って……。だが、お前は本物のパンチになったのだな。オレはお前を誇りに思うぞ」
「おじいちゃん……」
それを聞いた骨パンは流れるはずのない涙が流れたように感じた。




