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その頃、魔王エヴが元ガンデロ軍を統括している地区では、魔王エヴのサポートととして派遣されていたアカネがLOOPYでその辺を散歩していた。
「なんか散歩も飽きちゃったなぁ。あの森の先はマツリ王のトコだから行けないし、あっちの谷の先はマコ王だし、山の向こうはネクロマンサーだし」
アカネは魔王エヴが管理している限られた土地しか移動できず、外のマツリ王とマコ王の管理する土地には出るには許可が必要だった。
アカネはLOOPYをジグザグとフラフラ遊びながら運転していると、人影を見つけてLOOPYを止めた。
「あれ? こんなとこに誰かいるなんて珍しいなぁ」
アカネは、もしかしたら迷子かもしれないと思ってその人物にLOOPYで近づきながら尋ねた。
「こんちはー! 道に迷ってるんですかー?」
するとその人物は振り返り、その顔を見たアカネは少し驚いて言った。
「おわっ! 骨じゃんか!」
しかしアカネは怖がることもせずに骨の人物に近づいて尋ねた。
「この辺の人じゃないよね? 道に迷ったの?」
すると骨の人物はアゴを鳴らしながら笑って答えた。
「はっはっは! なんだ、オレを怖がらないのか?」
アカネはLOOPYから降りると笑いながら答えた。
「だって殺気無いし、キョロキョロしてたじゃん」
「おお、なかなか肝の座った女だな。気に入ったぞ、お前の名前は? オレはパンチだ」
それを聞いたアカネは笑いながら答えた。
「あたしアカネだよ。ってかパンチって名前、あたしの知ってるじいちゃんと同じじゃん。強そうな名前だね」
「なにっ!? パンチの名を知っているだと? パンチとは天下一品武闘会で優勝した者が代々受け継ぐ名前だ」
「え、そうなの? じゃあ、パンチじいちゃんも大会で優勝したのか」
アカネがそう言うと骨のパンチは胸を張って腕を組みながらアカネに言った。
「だがオレはパンチの中でも最強のパンチだ。75歳まで102戦全勝、最後は土下座されて引退した。蘇った時に聞いたが、オレの記録を塗り替えたヤツは居ないようだ」
「へぇ、骨パンチすごいじゃん!」
「骨……、パンチ?」
「うん、きみのあだ名だよ。骨パンのほうがいい?」
その時、骨のパンチは曇りのない純粋な笑顔のアカネを見て思わず吹き出しそうになると、拳を作りながらアカネに答えた。
「ああ、オレの事は好きに呼ぶかいいアカネ」
「おっけー! じゃあ骨パンね!」
「はっはっは、承知した! お前は面白いやつだな。それにしてもお前はオレが若い頃に着ていた稽古着のようなものを着ているな。お前も格闘家か?」
するとアカネは道着の襟を正して答えた。
「あたしは柔道家だよ」
「じゅうどうか?」
「うん! 骨パンは格闘家なの?」
「うむ。ガンガドン帝国の格闘家で、格闘兵団の団長だ。いや『だった』か」
「へぇぇ。格闘兵団って事は素手なんだよね」
「もちろん。武器を持つなど恥でしかない」
それを聞いたアカネは嬉しそうに骨パンに言った。
「じゃあさ、あたしと模擬戦しない? 参ったっていったら負けね」
「なに? オレと模擬戦をしたいのか?」
「うん! いいでしょ? ルールは簡単。武器を使わなければ何でもオッケー」
しかし骨パンは少しだけ躊躇しながらアカネに答えた。
「それは構わないが、お前は女で身長も低い。勝負にならないと思うが……」
アカネはそれを聞くと嬉しそうに答えた。
「大丈夫、あたし勝ちたいわけじゃなくて勉強したいんだよね。つきあってもらっていい?」
その言葉を聞いた骨パンはアカネの勉強熱心な発言に気分を良くして答えた。
「おお、お前は良い心構えをもっているな! オレも散々努力して鍛え上げてきた。お前のような勉強熱心は好きだぞ。危ないときは寸止めしてやるから全力でかかってこい!」
骨パンはそう言ってファイティングポーズをとると、アカネも嬉しそうに構えた。
「おっし、じゃあ決まりね! そっちからかかってきてもイイよ!」
それを聞いた骨パンはウンと頷くと、一気に飛び出してアカネに膝蹴りを食らわせようと飛び込んだ。
ブワッ!
しかし、アカネはタマシリとの模擬戦で慣れていたお陰で、飛び込んできた骨パンの膝蹴りを見切ってスルリとかわし、骨パンの軸足を払った。
バッ!
軸足を払われた骨パンは体勢を崩すと、今まで経験したことのない攻撃に声を漏らした。
「ふっ、そう来るか。おもしろい」
骨パンが体勢を崩した隙にアカネが右腕を絡め取ろうとした瞬間、骨パンは勢いよく頭を振ってアカネに頭突きを食らわせようとした。
ブン!!
「おっと!」
アカネは慌てて右腕から手を離してステップすると、骨パンも瞬時に距離を取って構え直した。
そしてアゴをカクカクとさせて笑った。
「はっはっは! アカネ、お前はなかなかの手練れだな。このパンチ……、いや、骨パンに距離を取らせるとは素晴らしいぞ! 歴代の挑戦者たちに見せてやりたい!」
それを聞いたアカネは嬉しそうに答えた。
「へへ。でも骨パンも凄いじゃんか。あたしの見たことない攻撃を読んでたんでしょ? 右腕巻き込まれると思った?」
すると骨パンは右腕をブンブンと回しながら笑った。
「はっはっは! やはりそうだったか。あの状態で腕を巻き込まれれば良くて相打ち、もしくはオレがやられてただろうな。アカネ、お前は本当に興味深い」
骨パンはファイティングポーズをとると、再びアカネと模擬戦を始めた。
◆
しばらく後、アカネは骨パンを連れて魔王エヴのいる謁見の間にやって来た。
「エヴっち! ともだち連れてきた!」
魔王エヴはアカネの声に笑顔で答えた。
「おお、アカネ。お友達ができたのか」
「うん! 骨なんだけど、仲良くなったんだ。骨パンって呼んでる。なんかネクロマンサーの国から故郷を探してやって来たんだって」
「故郷を?」
「うん。でも、すんごい昔の国だったみたいでさ。もう故郷も無かったみたい」
すると骨パンは腕を組みながら魔王エヴに挨拶をした。
「いやいや、まさかこれほど時間が経ってるとは思わなくてな。魔王殿、アカネから話は聞いている。よろしく頼む」
それを見た魔王エヴは、嬉しそうに答えた。
「おお、さすがはアカネが連れて来るお友達だ。フレンドリーで嬉しいよ。私は魔王エヴ。よろしく!」
魔王エヴは走って玉座から降りると、骨パンのところへ行って握手を交わした。




