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―― コラナッカ男爵領 研究所 ――
コラナッカはネクロマンサーのネイクラに猛烈に懐かれてしまい、仕方なく自分の治める領地の研究室兼自宅に連れて帰っていた。
ネイクラはコラナッカとエリシャウが研究に没頭している姿を見ながら、足をパタパタさせて退屈そうにしていると、それを横目で見たコラナッカがネイクラに尋ねた。
「そういやネイクラ、竜騎士が乗ってきたドラゴンはどうしたんだ?」
「あのドラゴンは骨はやられてなかったからアリオネルダに預けてきたわ」
「え、いいのか? アリオネルダはお前の乗ってきたドラゴンの支配権を奪ったしさ、敵対してるんじゃないの?」
「敵対? あの娘はとってもいい娘よ。だって、私が天才だって分かってくれたもの。あの娘はドラゴン2体しか操れないんだって。でも私は3体操れるの」
それを聞いたコラナッカはアリオネルダが大人の返答をして丸め込んだんだと気づきつつもネイクラを褒めた。
「そっかそっか、お前は天才だからな。まぁ、こっちに来ちまったらベベの村まで遠すぎてドラゴンも操るの難しいし、預けて来て正解だぜ」
「そうね。私、もうここから離れるつもりないし」
「え? お前、帰るつもりないの?」
「そうよ。だってお兄様は少ししか褒めてくれないんだもの。離れてみてやっと分かったわ。私は褒められて伸びる子なんだって。だから私はここから離れないわ」
「お、おう……。まぁ、その気持はめっちゃ分かる。おれもずっと変人扱いされて終いには落ちぶれたのに、ひろしさんだけは本心で褒めてくれたからな。あんな優しい人に出会ったのは初めてだ」
すると会話を聞いていたエリシャウも嬉しそうにコラナッカに言った。
「ひろし様は奥様と一緒に私にも優しくしてくださいました! 私が鳥人間スーツでベベの村に着地して皆さんに事情を説明した時も、ひろし様と洋子様は単身で飛んできた私を優しく労って褒めて頂き……、うっ、ううっ……」
エリシャウは思い出して涙を流すと、コラナッカは嬉しそうにエリシャウに言った。
「ひろしさんも奥さんもめっちゃ優しいよな。っていうか、ベベの村の人たちってみんな優しいよな」
「は、はぃです!」
その会話を聞いていたネイクラは優しいという言葉を聞いて考え込んだ。
しかしよく分からずコラナッカに尋ねた。
「コラナッカ、優しいっていうのはどういう事なの? 感情? 気持ち?」
それを聞いたコラナッカは笑いながら答えた。
「おいおい、お前なかなかヤバい発言するな。……そうだなぁ、例えばお前は何か苦労したことがあるか?」
「うん、ある。ドラゴンを操るのがお兄様より下手で、毎日寝ないで練習した」
「そういう苦労を分かってくれる人が優しい人だし、相手が不安だったりしたときに、それを解いてくれるのが優しい人だな」
「そ、そう……、なの?」
「頑張って苦労した人とか、辛い思いをしてそれに耐えた人は、その分だけ苦労した人や弱い立場の人に優しくできる。お前も苦労したことあるんだろ? なら誰かが苦労していたら褒めてやればいいんだよ。それが最初の優しさだな」
「……そっか。そうだよね」
「人は自分の苦労を分かってもらえた時に、最高の幸せをもらえるんだ。おれは、ひろしさんにそれを気付かさせてもらった。だから今は心を入れ替えて人の苦労を自分に置き換えて考えるようにしたんだ」
「ふぅん、そうなのね……」
ネイクラは静かに考え込んだ。
◆
その頃、ネクロマンサーの国ではネイクロが謁見の間に英雄たちを集めて話をしていた。
ネイクロはドラゴンが奪われた挙げ句、ネイクラも帰ってこない事から、マデマメヤ国へ進軍することを決めたのだった。
「英雄たちよ、長らく待たせた! これより敵国に進軍する。思う存分暴れてくれ!」
しかし英雄たちは何の返答もしなかった。
その様子を見たネイクロは少し動揺しながら英雄たちに言った。
「なぜ返事をしない! お前たちは今ここで術を解除して殺しても良いのだぞ!」
それを聞いた英雄の1人はネイクロに言った。
「何を言っている? 殺したければ殺せば良い。お前は我ら無しに戦いに勝てるのか?」
その言葉にネイクロは完全に動揺すると、それを払拭するかのように声をあげた。
「私はドラゴンを3体も操れるのだぞ! お前たちなど居なくとも戦いには勝てる! それとも先にお前たちをドラゴンの餌食にしてやろうか!?」
しかしその言葉を聞いた英雄たちはアゴをカクカクと鳴らしながら笑った。
そして英雄の1人はネイクロに言った。
「ドラゴン3体ごときで我らを倒せると? 笑止千万極まりない。ならばドラゴンをここへ呼ぶと良い」
そう言って英雄の1人はネイクロに向かって歩き出すと、英雄は余裕な態度でネイクロに言った。
「いいか? 今からお前を殺す。死にたくなければドラゴンを呼んで止めてみよ。我らが器の小さい主に従うとでも思ったか」
ネイクロはその言葉に硬直すると、必死にドラゴンを操り始めようとした。
しかしその時、ネイクロの前に出た英雄はアゴをカクカク鳴らしながら笑った。
「はっはっはっは、待て待て! 冗談だ! そう真剣になるな」
その言葉にネイクロは術を止めると、英雄はネイクロに話を続けた。
「我らも蘇ったからには、もうひと暴れしたいと思っている。まぁ、お前の指図は受けんが協力してやってもいい」
ネイクロはその言葉に静かに答えた。
「……わかった。では頼むとしよう」
すると英雄はネイクロに指示をするように言った。
「では我らが率いる兵、一万を用意しろ。それと、こんな玩具のような武器ではなく、まともな武器をよこせ」
ネイクロは英雄の無理な要求を飲むしかなかった。
「わかった……。だが、時間をくれ」
「良かろう。では待っておるぞ」
英雄はそう言うと不安な表情をしていたネイクロにもう一言声をかけた。
「心配するな。戦いが終われば我らを殺せばよいだけ。我らもひと暴れしたいだけだ。戦いが終われば好きにすればいい」
英雄はそう言うと、謁見の間にいた英雄たちを連れて外へ出ていった。




