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会議は続き、ガンデロ帝国は寒さの厳しい土地だが、魔道士の兵士を中心に練度の高い騎士や歩兵たちが大勢いる軍事国家だという事を共有した。
それとは対照的に、このリムリテイル王国は潤沢な資源と農作物が育つ環境にあるため、兵士たちの訓練には力を入れていなかった。
ガンデロ帝国とリムリテイル王国はかつて大きな戦争があったが、現在は友好条約を結んで貿易などもしている状態。
しかし、ガンデロ帝国側はリムリテイル王国を敵視しているという事も共有した。
そして会議は終わり、皆は一つの結論にたどり着いた。
「やはり、すぐに金属兵を倒すのは……」
「ええ、難しそうね」
「我もそう考えます。国家間の問題が立ちはだかりますゆえ……」
「そうなると、まず必要なモノといえば」
「そうですね、生活もありますし」
するとアカネが親指と人差し指で輪を作りながら言った。
「お金が必要って事だね!」
ウンウン
皆が一斉に頷くと、おじいさんは思わず呟いた。
「ああ、こんな時に商売上手な哲夫さんと和代さんが居てくれたら……」
するとそれを聞いたアカネが声をあげた。
「え!? 二人とも来てるよ。あたしと一緒だったから」
「「ええええ!!!」」
おじいさんたちが一斉に驚くと、アカネが哲夫と和代の事を話した。
「哲夫さんも和代さんも、村の回復薬売り場を見たら居ても立っても居られなくなったみたいで走って行っちゃってさぁ。あたし1人でここに来たんだ」
―― 村の回復薬売り場 ――
「はいはい! 大当たりでございます!! こちらの方には回復薬10個をプレゼント致します!!」
「「「おおおお!!!」」」
「おい、おれにもその『クジ引き付き』っていう回復薬を売ってくれ!」
「おれも!」
「わ、わたしにも!」
「はいはい、こちらにお並びください! 順番にお売りいたしますので!」
なんと大きな声で商売をしていたのは哲夫だった。
そして、少し奥では和代が食べ物を売りに来た商人たちを相手に商談をしていた。
「ではそのカゴ一杯の果物はいつも500プナで買っているのね」
「はい、その通りです。それでいつも50プナの回復薬を10個買って帰るんですよ」
「まあ、それならクジ引き付きの回復薬はいかがかしら? 1つ80プナだけれど、大当たりなら回復薬が10個、2等でも5個もらえるのよ」
「いやぁ、さっき当たってる人がいて気になってたんですよ。でもその『クジ引き付き』を10個だと800プナになってしまうので、500プナで買えるだけ買いたいのですが」
「それならば、クジ引き付きを5個と普通の回復薬を2個でちょど500プナだけれど、いかがかしら?」
「おお、それは良いですね! ではそれでお願いします。まぁ、クジ引きに外れても7個もあれば街で売った粗利で……、って、おっと口がすべった。ははは」
「いえいえ、お互い商売人ですからお気になさらず。うふふ」
その頃、村の回復薬売り場の裏手の事務室では驚きの声が上がっていた。
「おいおい、どんどんお金と食べ物が増えていくぞ」
「ああ、すごいな……」
「最初は、ひろし様たちのお友達だという事を怪しんでいたが」
「この有能さは間違いない……」
「さっきの商人、普段は売ってくれない干し肉まで」
「ああ、あのクジ引きっていうのは凄いな」
するとその時、部屋の奥から子どもたちがやって来て大きな声で言った。
「たいへーん! もう回復薬ないよー」
「薬草もなくなった!」
そしてテテもやって来て、売り場に居る哲夫たちに言った。
「おじいちゃん、おばあちゃん、回復薬もう無くなっちゃったって」
それを聞いた哲夫は手元にある数十本の回復薬を確認して、大きな声で客に言った。
「申し訳ございません! 本日の販売はここまでとさせていただきます!」
ザワザワザワザワ……
哲夫は数名の客が焦りの表情を見せたのを確認すると、続けて大きな声で言った。
「ですが、販売する予定のない回復薬がまだ少しございます。どうしても買いたいというお方はいらっしゃいますか?」
すると5名の商人が名乗り出た。
「買わせてください!」
「待ってくれ、おれも買いたい」
「待って、私も! 今着いたばかりで!」
「こんな早く売り切れるなんて」
「ああ、予想外で買いそびれたよ」
5名の商人たちが哲夫の元へとやって来ると哲夫は笑顔で残りの回復薬をテーブルの上に置いた。
そして数を5等分すると、5名の商人たちに話しはじめた。
「この回復薬を売ってしまうと、村の人たちのための回復薬がなくなってしまうのです。そこで、村のために少しだけ高く65プナでご購入いただけませんでしょうか」
すると商人たちはそれを承諾してお金を払った。
「しょうがないですよね」
「はい。良い取引です」
「ええ」
「今度はもっと早く来ないと」
「ですね」
そして商人たちは回復薬を受け取ると、哲夫たちに見送られて村を発っていった。
その様子を見ていた村の若者たちは少しだけ心配になって哲夫に話しかけた。
「あ、あの……。回復薬が高く売れたのは良いと思うのですが、村に回復薬が1つも無いのは、なんというか、村の誰かが怪我でもしたら……」
すると哲夫は満面の笑顔で答えた。
「はっはっは、大丈夫です。このとおり」
ドン!
哲夫は袋に入った回復薬をテーブルの上に置くと袋を開いて中の回復薬を見せながら村の若者に言った。
「ご安心ください、回復薬は5個残してあります。自分の持ち手の中で最高の利益と安全を確保する。それが一流の商売人です。はっはっは」
村の若者たちは哲夫の機転に驚かされながらも、深く感心した。




