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アーク01、咲ける場所を探しに行こう。〜異世界召喚先はステータスが全ての婚活会場!?〜  作者: ニャルC


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第3話「親愛なる総書記」の嘘

アジトの奥、厳重に隠されていたのは、党の焚書を免れた数冊の古書だった。

「これは……古い時代の知識だと言い伝えられています。ですが、誰も、この複雑な文字を読めない」

 差し出された『アーロン収容所』、そして『進化論』。

 ソフィアは、その文字を見て、乾いた笑いを漏らした。

「……これ、日本語だ。極東の島国から遠く離れたこのユーラシアで、なぜこんなものが残ってる?」


 ソフィアは、アジトの壁に手を触れた。

彼女の義眼のセンサーは、石壁の向こう側から漏れ出す不自然な高周波の振動を捉えていた。

「ねえ。このアジト、妙に温度管理が正確すぎない?」

 ソフィアは左手首からセラミック・ブレードを勢いよく射出した。

 一閃。

 彼女が漆喰の壁を物理的に切り裂くと、断面から溢れ出したのは、光ファイバーの束と、鈍く光る鉄骨の支柱だった。

「な……何よ、この蛇みたいな紐は……!?」

 切り裂かれた瞬間、アジトの壁一面を構成していた「石壁」のホログラムが激しくノイズを吐いて消滅する。

露呈したのは、壁の裏側に隠されていた無機質な構造体だった。

「……やっぱりね。この街並みはただの書き割り(スキン)だ」

 赤い貴族たちが支配し、住人たちが安寧を貪る「中世ヨーロッパ」。

 それは、壁の裏側に張り巡らされたインフラを通して、同志総書記が住民を管理しやすくするために上書きした、視覚情報の偽装に過ぎなかった。

「ここは文明が後退した場所じゃない。……最新のハードウェアに、『中世ヨーロッパ』っていう不自由なOSを無理やり走らせているだけの、巨大な機械仕掛けの檻だよ」」


 レジスタンスの地下アジト。その中央には、中世の聖母画のような重厚なタッチで描かれた「同志総書記」の肖像画が掲げられていた。

 エレンは、ソフィアの不審げな視線に気づき、小声で説明する。

「……これは、検閲を逃れるためのカモフラージュです。

私たちは『親愛なる総書記』を熱烈に崇拝する信者の集まりだと、赤い貴族(支配層)たちに見せかけるための……」


 ソフィアは、その「聖画」の前に立ち、首を傾げた。

 彼女の義眼は、絵画としての美しさではなく、そこに記録された**「光のデータ」**を冷徹にスキャンしている。

「ねえ、この絵。これを描いた画家は、今すぐクビにした方がいい。

……それとも、この世界の『神』は物理法則さえ無視するのか?」

 ソフィアは左腕のセラミック・ブレードの平らな面を鏡のように使い、アジトの貧弱な照明を肖像画へ反射させた。

「見てみな。頬に落ちている影は左上からの光を示唆しているのに、瞳の中のハイライトは正面から二つ。

おまけに、首筋の陰影は下からの不自然な照り返しを拾っている。

光源はいくつある? ――三つだ」


 困惑するレジスタンスたちをよそに、ソフィアは冷淡に言い放つ。

「光源が三つ。それも、燭台や天窓の光じゃない。スタジオの照明ライティングの配置だよ。

画家が模写したならヘタクソすぎるが、

……これが『複数の古い映像データを合成して作った平均値』だとしたら、納得がいくね」


 ソフィアは、剥き出しにした壁の光ファイバーを指でなぞる。

「この女、実在してないだろ? 少なくとも、今このドームのどこにも、この顔をした生身の人間はいない。

アンタたちが『親愛なる』と呼んでる支配者の正体は、ただの合成画像フェイクだ」


 レジスタンスたちは戦慄した。彼らがカモフラージュとして掲げていた「偶像」そのものが、ソフィアのプロの鑑識眼によって、実体のない幽霊であることを暴かれたのだ。


 アジトの隅で、ソフィアは党が発行した『公式資格ガイド』を無造作に広げていた。

 この街の住人は、親愛なる総書記が用意した「資格」という名の階段を登ることだけが、幸福への唯一の道だと信じ込まされている。だが、ソフィアの目にはそれが、ただの「人生という時間の搾取」にしか見えなかった。


(……見覚えがあるな、この光景)


 シン新宿で、収入の大半を高価なサイバーパーツにつぎ込んでいた自分。

コスパを度外視し、仕事のためにパーツを買っていたはずが、いつの間にかパーツを買うために仕事をしていた。

生活のための仕事、そのためのパーツのはず。

 この世界の「資格」も同じだ。階段を一段登るための努力自体が、総書記が用意したシステムを維持するためのエネルギーとして吸い取られている。


「検品」と「計算」

 ソフィアはガイドをめくりながら、網膜ディスプレイ上で数値を弾き出した。取得までの費用、費やす時間、それによって得られる収入の上げ幅――。

「ねえ、この街で一番『賢い』努力が何か、教えてあげようか?」

 彼女はレジスタンスの印刷機をハックし、計算結果を記したビラを大量に刷り出させた。

そこには「親愛なる」総書記の教えを、冷徹な市場論理で殴りつけるようなランキングが躍っていた。


【効率的努力ランキング:第1位】

草むしり検定

取得費用:0(無料)

取得時間:1時間

収入の上がり幅:◎


【最下位:時間の無駄】

上級マナー資格

取得費用:金貨100枚

取得時間:3年

収入の上がり幅:微増(赤い貴族への接待費で相殺)


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