第9話 激突
第2章 3/6
巨大な魔物が、ゆっくりと首を動かした。
赤黒い目が、生徒たちを見渡す。
それだけで、背筋が冷える。
空気が重い。
魔力の圧力が、体を押し潰そうとしていた。
「……散開」
前に出ていた上級生が低く言う。
生徒たちは左右へ広がった。
魔物が一歩踏み出す。
地面が鈍く揺れた。
「来るぞ!」
その声と同時に魔法が放たれる。
炎が走る。
風の刃が飛ぶ。
複数の魔法が一斉に魔物へ叩き込まれた。
だが。
魔物は止まらない。
炎が弾ける。
風が散る。
まるで岩に当たったようだった。
「硬すぎる!」
カインが叫ぶ。
魔物の腕が振り上がる。
次の瞬間。
地面が砕けた。
衝撃で土が吹き飛び、生徒たちは後ろへ跳んだ。
「距離を取れ!」
上級生の声が飛ぶ。
リシアが前へ出た。
静かに手を上げる。
空気が一瞬で冷えた。
氷の槍が無数に生まれる。
「――凍れ」
氷の槍が魔物へ突き刺さる。
轟音。
氷が弾ける。
魔物の動きが一瞬だけ止まった。
だが次の瞬間。
氷が砕け散った。
魔物の魔力がさらに荒れる。
空気が震えた。
「……まだ足りない」
リシアが低く呟く。
その時だった。
オリオンは、また感じた。
魔物の魔力とは違う。
もっと遠く。
森の奥。
微かな揺らぎ。
見えない波。
さっきより、少しだけはっきりしている。
普通の人間なら、気づかないほど微かなもの。
だがオリオンには、それがわかった。
森の奥で
何かが動いている。
魔物が咆哮した。
空気が裂ける。
その圧力に、生徒たちの動きが止まる。
上級生が叫んだ。
「一度下がれ! 隊形を立て直せ!」
戦列が崩れる。
その中で、オリオンはもう一度森の奥を見た。
あの波は
まだ消えていない。
むしろ
少しずつ強くなっている気がした。




