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第10話 氷嵐

第2章 4/6

隊列は崩れかけていた。

魔物の圧力が強すぎる。

前に出ていた上級生が叫ぶ。

「後退! 距離を保て!」

生徒たちは一斉に下がる。

だが魔物は止まらない。

重い足音。

一歩進むたび

地面が鈍く揺れた。

「くそ……」

カインが歯を食いしばる。

魔法は効かない。

防御も保たない。

このまま押し潰される。


その時。

リシアが足を止めた。

「……まだ」

静かな声。

カインが振り向く。

「おい、何する気だ」

リシアは魔物を見ていた。

冷たい視線。

「魔力が乱れてる」

「完全に安定してない」


オリオンが顔を上げる。

森の奥。

あの揺らぎ。

まだ続いている。

見えない波。

空気の奥で

静かに脈打っている。

「……リシア」

オリオンは言った。

「魔物じゃない」

「森の奥だ」

リシアがわずかに眉を動かす。

「何か感じてるの?」

オリオンは頷いた。

「魔力の波」

「さっきからずっと揺れてる」


リシアは短く考えた。

そして言う。

「なら」

「そこが原因」

彼女は一歩前へ出た。

手を上げる。

巨大な魔法陣が空中に広がった。

冷たい魔力が流れ出す。

空気が凍りつく。

魔物が咆哮した。

突進。

一直線にリシアへ向かう。

「危ない!」

誰かが叫ぶ。

だがリシアは動かない。

魔法陣が完成する。


氷の魔力が渦を巻く。

その瞬間だった。

オリオンの胸が震えた。

魔力が

揺れる。

止められない。

見えない波が広がる。

リシアの魔法へ触れる。

一瞬。

世界が静止したように感じた。

次の瞬間。

氷の魔力が膨れ上がる。

まるで嵐。

膨大な魔力が空間を満たす。

魔物の体が揺れた。

荒れていた魔力が

崩れる。

咆哮。

巨体がよろめいた。


次の瞬間。

魔物の動きが止まった。

まるで糸が切れたように。

森の空気が変わる。

押し潰すようだった重圧が

消えていく。

誰も動かない。

カインが呟く。

「……今の」

リシアも言葉を失っていた。

オリオンは森の奥を見た。

さっきまで続いていた揺らぎ。

それが

ゆっくりと遠ざかる。

森の奥へ。

波は少しずつ弱くなり

やがて

静かに消えた。


オリオンはしばらくその方向を見ていた。

だが

もう何も感じない。

森はただの静かな森に戻っていた。

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