第11話 条件
第2章 5/6
任務から戻った翌日。
学院の演習場に、生徒たちが集められていた。
昨日の戦い。
氷の嵐。
あの現象の検証だった。
リシアが前に立つ。
「もう一度試す」
静かな声。
生徒たちは距離を取る。
オリオンが隣に立った。
「昨日と同じように?」
「そう」
リシアが手を上げる。
空気が冷える。
氷の魔力が集まり始めた。
氷の槍が生まれる。
その瞬間。
空気がわずかに震えた。
氷の槍が増える。
数が膨れ上がる。
冷気が一気に広がった。
演習場の地面が凍る。
生徒たちが息を呑んだ。
昨日ほどではない。
だが確かに。
氷の魔力が増幅している。
リシアが手を下ろす。
氷の槍が消えた。
静寂。
カインが口を開く。
「今のが共鳴か?」
リシアは小さく頷いた。
「可能性は高い」
少し考える。
「別の条件でも試す」
カインが前に出た。
オリオンの横に立つ。
「俺で」
オリオンが苦笑する。
「よろしく」
カインが手を上げる。
炎が灯る。
火球が生まれた。
オリオンは意識を集中する。
昨日の感覚。
魔力の揺れ。
それを探る。
だが。
何も起きない。
火球はそのまま燃えている。
大きくもならない。
魔力の波も広がらない。
カインが肩をすくめる。
「……普通だな」
リシアは何も言わない。
少し考える。
「もう一人」
別の生徒が前に出た。
オリオンの横に立つ。
同じように魔法を使う。
だが。
結果は同じだった。
魔法は普通に発動するだけ。
共鳴は起きない。
演習場に沈黙が落ちる。
カインが腕を組む。
「つまり」
「オリオンがいれば起きるわけじゃない」
リシアはゆっくり頷いた。
「そう」
そして言う。
「共鳴には条件がある」
視線がオリオンへ向く。
オリオンは肩をすくめた。
「俺の魔力が変なのか?」
リシアは少しだけ首を振る。
「変、というより」
「特殊」
彼女の視線がわずかに鋭くなる。
「昨日、共鳴したのは」
「私とあなた」
その二人だけ。
風が静かに演習場を抜けた。
リシアは空を見上げる。
共鳴の条件。
まだはっきりしたものではない。
だが。
一つだけ分かったことがある。
共鳴は――
誰とでも起きるわけではない。
リシアは視線をオリオンへ向けた。
オリオンは他の生徒と話している。
いつもの調子。
だが。
昨日の戦い。
そして、さっきの検証。
そこには確かに
説明のつかない現象があった。
リシアは静かに考える。
オリオンの魔力。
あれは――
普通ではない。
共鳴の特性。
まだ断定はできない。
だが。
少しずつ見えてきている。
リシアは小さく呟く。
「……面白い」
その声は、誰にも聞こえなかった。




