第12話 魔導波の異常
第2章 6/6
学院の塔。
魔導観測室。
壁一面に魔導式が刻まれている。
中央の水晶が、淡く光っていた。
老教授が眉をひそめる。
「……またか」
水晶の光が揺れる。
安定しているはずの波形。
それが、わずかに歪んでいた。
助手が記録を確認する。
「三日前にも同じ現象が出ています」
教授は腕を組む。
魔導波。
世界中を巡る魔力の流れ。
それは基本的に安定している。
多少の揺らぎはある。
だが。
ここまで連続するのは異常だった。
教授が低く言う。
「記録を遡れ」
助手がページをめくる。
魔導観測記録。
数百年分の資料。
その中で。
似た波形があった。
「……これです」
助手が指を止める。
教授の顔がわずかに変わる。
その記録の日付。
数年前。
ある事件の直後だった。
魔導事故。
学院でも大きく報告された出来事。
教授が小さく呟く。
「まさか……」
水晶の光がまた揺れた。
今度は、少しだけ強い。
魔導式が微かに軋む。
助手が息を飲む。
「揺らぎが大きくなっています」
教授は静かに言う。
「観測を続けろ」
そして視線を水晶へ向ける。
世界のどこかで。
何かが起きている。
その兆候は、確実に広がっていた。
――同じ頃。
学院の寮。
オリオンは机に向かっていた。
ノートが開かれている。
魔導波。
魔力の流れ。
増幅。
オリオンはふと手を止めた。
まただ。
ほんの微かな違和感。
空気の奥。
見えない流れ。
それが。
少しだけ。
乱れている気がした。
オリオンは眉をひそめる。
「……気のせいか?」
誰も気付かない。
だが。
世界のどこかで。
魔導波は、確かに揺れていた。
そして。
その異常は、まだ始まったばかりだった。
第2章はここまで




