第13話 暴走
第3章 1/6
学院の鐘が鳴った。
午後の実技訓練。
生徒たちは訓練場に集まっていた。
魔法の練習。
いつもの授業。
何も変わらないはずだった。
一人の生徒が風魔法を放つ。
風刃。
小さな練習魔法。
だが――
風が消えない。
むしろ広がる。
「……え?」
風が渦を巻く。
制御が効かない。
魔力が膨れ上がる。
「止まらない!」
次の瞬間。
突風が訓練場を吹き抜けた。
地面の砂が舞い上がる。
生徒たちが後ろへ飛ぶ。
教師がすぐに結界を展開した。
風が結界にぶつかる。
鈍い音。
やがて魔法は消えた。
訓練場に沈黙が落ちる。
「今の……」
「魔法暴走?」
教師が眉をひそめる。
「そんなはずはない」
あれは初歩魔法だった。
暴走するような魔法ではない。
その時だった。
学院の上空に、魔導放送が響いた。
「全生徒に通達」
低い声。
学院長だった。
「現在、学院外で魔法暴走の報告が相次いでいる」
訓練場がざわめく。
「本日の実技訓練は中止」
「全員、速やかに教室へ戻れ」
放送はそれだけだった。
だが。
生徒たちは動揺していた。
「学院外って……」
「他でも起きてるのか?」
教師が小さく呟く。
「……偶然じゃないな」
その声は、ほとんど独り言だった。
リシアは地面を見ていた。
さっきの魔法の跡。
残っている魔力。
波が乱れている。
昨日とは違う。
もっと広い。
もっと不安定。
リシアは静かに考える。
魔導波。
世界を巡る魔力の流れ。
もしそれが乱れているなら。
起きる現象は――
魔法暴走。
魔力異常。
そして。
魔物の変異。
リシアはゆっくり空を見上げた。
この異常は。
学院だけの話ではない。
世界のどこかで。
何かが起きている。
そんな気がした。




