第6話 模擬戦
第1章 6/6 偶然?
午後の実戦訓練場。
円形の石のフィールドに、学生たちが並んでいた。
教師が腕を組んで言う。
「今日は模擬戦を行う」
小さなざわめきが起きる。
「四人一組。実戦を想定して戦え」
カインが拳を鳴らした。
「よっしゃ」
シオンが笑う。
「ほどほどにね」
オリオンは少し緊張した顔をしていた。
対戦相手は上級クラスの学生だった。
相手の一人がこちらを見て笑う。
「落ちこぼれチームか」
カインが前に出る。
「言ったな」
教師が手を上げた。
「開始」
その瞬間。
相手の魔法陣が光る。
炎弾が三つ、一直線に飛んだ。
「来た!」
カインが剣で一つを弾く。
「オリオン!」
「わ、わかってる!」
オリオンは慌てて魔法陣を展開した。
風魔法。
だが魔力は弱い。
炎弾に押される。
相手が笑った。
「やっぱりな」
炎が風を押し潰す。
その瞬間。
「……っ」
横から氷の魔法陣が展開された。
リシアだった。
氷の粒子が広がり、炎弾を止める。
だが魔法がぶつかった瞬間、
奇妙なことが起きた。
オリオンの風が――
急に強くなった。
「え?」
風が渦を巻く。
氷の粒子がそこへ巻き込まれる。
白い嵐が生まれた。
炎弾が一瞬で砕ける。
衝撃がフィールドを走る。
相手の学生たちが後退した。
「なっ……!?」
カインが大笑いする。
「すげぇじゃねぇか!」
シオンも目を丸くした。
「今の威力おかしくない?」
オリオンは呆然としていた。
「……俺?」
風はもう消えていた。
まるで最初から何も起きていなかったように。
教師が少しだけ眉をひそめる。
だが何も言わない。
模擬戦はそのまま続き、やがて終了した。
訓練場の外。
カインがオリオンの肩を叩く。
「やるじゃねぇか」
「いや、俺じゃないって」
シオンが首をかしげる。
「でも風の魔法だったよね」
オリオンは困った顔をした。
「俺、あんな威力出せない」
三人が騒ぐ横で、
リシアだけが黙っていた。
頭の中で、さっきの瞬間を思い出していた。
風と氷。
魔法がぶつかった瞬間。
魔力の流れが一瞬だけ変わった。
普通なら――
干渉して弱くなる。
昨日の講義でもそう説明された。
それなのに、
今の魔法はむしろ強くなっていた。
リシアの脳裏に、昨日見たノートが浮かぶ。
夢を見た
魔法陣が重なっていた
でも崩れなかった
むしろ強くなっていた
……そういう干渉もあるのか?
リシアは小さく息を吐く。
(偶然……?)
そう結論づけようとして、
なぜか違和感が残った。
風と氷が重なった瞬間。
あの魔力の流れは――
干渉ではなかった。
リシアは静かにオリオンを見る。
オリオンはまだカインと話している。
何も知らない顔だった。
リシアは視線を外す。
(もう一度起きたら……)
そのとき初めて、
確信できる。
全6章構成で第1章はここまでになります
来週第2章をアップしていきます




