第21話 交戦
第4章 3/6
森の奥。
歪んだ空気が揺れている。
ローブの男が一歩前に出る。
無言。
だが魔力が膨れ上がる。
カインが前に出る。
炎が灯る。
「俺が前に出る」
短く言う。
リシアが頷く。
「任せる」
「私は装置を見る」
役割は決まった。
オリオンは動かない。
視線は奥。
あの気配を追っている。
ローブの男が手を上げる。
次の瞬間、地面に魔法陣が広がる。
カインが踏み込む。
「遅い」
炎が走る。
一直線に男へ向かう。
だが直前で霧散する。
空間が歪み、魔力が逸らされる。
カインが舌打ちする。
「防御か」
男は何も言わない。
再び魔法陣が展開される。
今度は複数。
地面と空中に同時展開。
「来るぞ!」
カインが叫ぶ。
無数の魔弾が放たれる。
リシアが前に出る。
「展開」
障壁が張られる。
魔弾が弾かれる。
衝撃が連続し、空気が震える。
リシアが歯を食いしばる。
「……数が多い」
カインが動く。
障壁の外へ出る。
「任せろ!」
炎が爆ぜる。
広範囲に拡散し、魔弾を焼き払う。
一気に距離を詰める。
拳に炎を集中。
振り抜く。
直撃——のはずだった。
男の姿が揺れる。
幻のように消える。
背後に気配。
カインが振り返る。
遅い。
魔力の衝撃が直撃する。
「ぐっ……!」
吹き飛ばされる。
地面を滑る。
リシアが叫ぶ。
「カイン!」
すぐに障壁を再展開し、追撃を防ぐ。
男は無言のまま。
だが確実に狙っている。
カインが立ち上がる。
口元を拭う。
「やってくれるな……」
炎がさらに強くなる。
リシアが冷静に言う。
「正面戦闘は分が悪い」
「時間を稼いで」
カインが頷く。
「了解だ」
再び突っ込む。
フェイントを混ぜて間合いを詰める。
だが男は最小限の動きで回避する。
その間にリシアは装置に近づく。
「……構造は単純」
魔法陣を解析する。
流れを読む。
「でも魔力供給が外部」
顔を上げる。
森の奥を見る。
「繋がってる……」
オリオンと同じ方向。
オリオンは目を閉じる。
微かだが、魔導波の流れを感じる。
そして、その先の歪み。
強い。
はっきりと分かる。
「……やっぱりいる」
リシアが振り向く。
「感じるの?」
オリオンは頷く。
「この先」
短い言葉。
だが確信がある。
その時、空気がさらに重くなる。
ローブの男の動きが止まる。
カインも動きを止める。
リシアが呟く。
「……来る」
次の瞬間、別の魔力が重なる。
圧倒的な存在感。
質が違う。
空間が歪む。
カインが低く言う。
「またかよ……」
闇が広がる。
そこから影が現れる。
銀の髪。
セレナ。
静かに立つ。
ローブの男が一歩下がる。
明確な距離。
カインが小さく呟く。
「……本命か」
リシアの視線が鋭くなる。
「間違いない」
セレナの視線が動く。
オリオンを見る。
その瞬間——共鳴。
空気が震える。
魔力が引き寄せられる。
リシアが息を呑む。
「また……!」
カインが歯を食いしばる。
「今度は完全に来てるぞ……!」
前回よりも強い。
制御されている。
だが規模が違う。
オリオンは一歩踏み出す。
止まれない。
引かれている。
セレナも同じ。
一歩、前へ。
リシアが叫ぶ。
「ダメ!」
空間が歪む。
魔力が膨張する。
臨界に近い。
その瞬間、セレナの動きが止まる。
わずかに視線が揺れる。
そして魔力が収束する。
共鳴が切れる。
静寂。
カインが息を吐く。
「……止めた?」
リシアも驚く。
「自分で……?」
セレナは動かない。
ただオリオンを見ている。
その目には迷いがある。
オリオンが言う。
「……君は」
言葉が続かない。
セレナは小さく呟く。
「……ダメ」
それだけ。
次の瞬間、ローブの男が動く。
魔法陣が展開される。
転移。
セレナの姿が揺らぐ。
オリオンが手を伸ばす。
「待って!」
届かない。
セレナは消える。
闇も消える。
静寂が戻る。
カインが息を吐く。
「……逃げられたな」
リシアは装置を見る。
「まだ繋がってる」
魔力の流れは完全には切れていない。
オリオンは動かない。
伸ばした手をゆっくり下ろす。
胸の奥に残る。
今の共鳴。
そしてセレナの言葉。
「……ダメ」
小さく呟く。
意味は分からない。
だが確かに引っかかる。
オリオンは前を見る。
「……行く」
カインが笑う。
「当然だな」
リシアも頷く。
「追えるうちに行くわ」
三人は動き出す。
歪みの先へ。




