第17話 人工の歪み
第3章 5/6
空き地。
戦闘が始まっていた。
巨大な魔物。
歪んだ影。
溢れる魔力。
教師が叫ぶ。
「前衛、足止め! 後衛、魔法準備!」
生徒たちが動く。
炎が走る。
風が刃となる。
氷が地面を覆う。
だが。
魔物は止まらない。
魔力が暴れている。
攻撃が通りにくい。
カインが舌打ちする。
「硬いな……!」
炎を叩き込む。
爆発。
しかし。
魔物は前進する。
リシアが言う。
「魔力の流れが不安定すぎる」
「通常の核じゃない」
教師が判断する。
「一点集中で崩す!」
「右脚を狙え!」
生徒たちが応じる。
攻撃が集中する。
オリオンは動かない。
目を閉じる。
感じる。
魔導波。
乱れている。
この場だけじゃない。
流れそのものが歪んでいる。
そして。
一点。
強く歪んでいる場所。
オリオンが目を開く。
「……そこだ」
小さく言う。
カインが振り向く。
「どこだ?」
オリオンが指す。
「右脚の奥」
教師が即座に反応する。
「集中!」
魔法が集まる。
炎。
風。
光。
一点へ。
直撃。
鈍い音。
魔物の動きが止まる。
次の瞬間。
魔力が崩れた。
暴走していた流れが乱れ。
内部から崩壊する。
魔物が倒れた。
地面が揺れる。
やがて。
静寂。
戦闘は終わった。
教師が息を吐く。
「……討伐完了」
生徒たちも安堵する。
カインが肩を回す。
「助かったな」
オリオンを見る。
「また当てたな」
オリオンは少し考えてから答える。
「……そう感じたんだよ」
リシアは地面を見つめている。
倒れた魔物の残骸。
その周囲。
微かに残る魔力の揺らぎ。
それを読む。
そして。
ゆっくり顔を上げる。
表情が変わっていた。
「……間違いなさそう」
教師が問う。
「何がだ」
リシアは言う。
「これは自然現象じゃありません」
静かな声。
だが断定に近い。
「魔導波が外部から干渉されています」
生徒たちがざわつく。
カインが言う。
「外部って……誰がそんなこと」
リシアは首を振る。
「分からない」
「でも」
森の奥を見る。
「ここは“作られた場所”です」
教師の目が鋭くなる。
「実験場……ということか」
リシアは頷く。
その言葉が重く響く。
オリオンは黙っていた。
胸の奥。
まだ消えない。
魔導波の揺れ。
弱くなったが。
まだどこかで、続いている。
その時。
風が吹いた。
森の奥。
見えない距離。
黒い影。
ゼクトが立っていた。
静かに。
戦いを見届ける。
「……やはり」
小さく呟く。
「既に歪んでいる波でも、ここまで反応するか」
目が細くなる。
視線はオリオンへ。
「面白い」
口元が歪む。
「だが……」
わずかに間を置く。
「この程度では、“本物”には届かない」
ゼクトは背を向けた。
ローブが揺れる。
「次の段階へ進もう」
森に溶ける。
その存在は消えた。
空き地には。
静寂だけが残る。
だが。
世界の流れは変わっていた。
見えない場所で。
歪まされている。




