表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
88/89

【78】経理担当者〜発掘する〜曲がったことが嫌いな数字好きな青年〜第三者視点

カトリーナ、シャノアに続き、新キャラの登場です。チームアランが整ってきましたね〜。

 爆発的に売り上げが伸び、税金計算や経理処理に限界を迎えていたアランとブランシュ。自分だけでなくブランシュと、さらに法務担当者として雇ったカトリーナも、畑違いの仕事に手いっぱいな状況を見てアランはこう言った。

「ブランシュ、前々から必要だと言っていた経理専門の担当者を探しに行かないとならないね」

「そうですわね。帳簿の処理というのは単に計算ができればいいものではないので、カトリーナには計算の手伝いしかお願いできないですから」

 ブランシュは苦渋の色を浮かべて言った。

「じゃあ僕はカトリーナを連れて、商人ギルドを覗きに行ってくるよ。ブランシュはそのまま仕事を続けておいて」

「わかりました。行ってらっしゃいませ」


 ◇


 アランは法務担当のカトリーナを連れて、子爵領の商人が集まる商業ギルドへ経理や財務に明るい人材を探しにやって来た。

「カトリーナ、経理担当者に一番大切な能力ってなんだと思う?」

「そうですね、他の商会と違ってアラン商事で最も必要とされる力は、アラン様のブレーキ役でしょうか?」

「ブレーキ役?」

「ええ、アラン様が今手がけられている商品は、ブランシュに聞いたところでは、ほとんどが思いついたらすぐに試作して製造から販売まで進めているそうですね。今まで個人商店のような所帯ではそれでよかったかもしれませんが、それなりの組織が整ってくると、トップがやりたいと思っても、人員や資金を考慮して必要に応じてストップをかけられる人が必要だと思います。もちろん、『行ける!』と思った時には背中を押す役目でもあるのですけれど」

「なるほど、僕の熱に侵されない冷静さを保つ人ってことか。よくわかった」


 ギルドの中を見回すと、書庫の前の机に大量の書類を広げて頭を抱えている、レイモン商会(ブランシュの実家)の若い下っ端商人を見かけた。アランが声をかけようと一歩近づいた時、その商人に向かって隣からニコニコと人当たりの良い笑顔で話しかける青年がいた。アランは立ち止まって、しばらく二人の様子を眺めることにした。


「あれぇ、そこは困りましたね。あの僕トビアスって言うんですけど、ちょっと数字を見るの得意なんです。もしよかったら手伝いましょうか?」

「え? ああ、助かる。この子爵領の新税率と、王都への仕入れの二重課税の計算がややこしくて……」

 トビアスは「どれどれ」と人良さそうに微笑みながら帳簿を受け取る。その瞬間、彼の細められた目の奥が、一瞬だけガラス細工のように鋭く光った気がした。


「――はい、できましたよ。ここ、地方税の控除が漏れてますね。あと、この運送費の計算ですけど、端数の処理が王国規定と違うので、このままだと30ゴルドほど払いすぎちゃいます。書き直して窓口に出せば通りますよ」

 トビアスはほんの数秒、帳簿をペラペラとめくっただけで、すらすらと完璧な修正案を提示した。隣の商人は「えっ、もう!? 嘘だろ!?」と驚いている。


 その光景を横から見ていたアランは息を呑み、カトリーナが驚きに眼鏡の奥の目を丸くしてトビアスに話しかけた。

「……信じられません。私は職場で見かけたことがありますが、今のは国家財務部のベテランでも数時間はかかる複雑な控除計算です。あなた、ただの数字が得意な人ではありませんね?」


 カトリーナの鋭い指摘に、トビアスは「おっと」と手を振って、元のような人当たりの良い困り眉の笑顔に戻った。

「いやぁ、お恥ずかしい。ただの特技ですよ。これでも前は、この街で一番大きな大店で経理のチーフをやらせてもらっていたんです。……まぁ、店の『ちょっと黒い秘密の数字』つまりは二重帳簿をうっかり全部読み解いちゃって、店主の逆鱗に触れてクビになっちゃったんですけどね。あはは、税金をごまかそうとするなんて、困っちゃいますよねぇ」


 自分の不遇を、まるで他人事のようにのほほんと笑うトビアス。しかし、その言葉にカトリーナの表情が凍りついた。トビアスがハメられた大店は、彼女をハメた王宮高官たちの資金源と同じだったからだ。アランはカトリーナの様子に気づきトビアスの前に進み出て、その肩をポンと叩いた。


「へえ。笑顔で大店の裏帳簿を丸裸にした正直経理ですか。最高だな!気に入りました。ねぇトビアス、君のその頭脳、うちの商社で使ってみたくない?」

「おや? 僕を雇ってくれるんですか? ありがたいですけど、僕、横領の罪で追放されたことになってる、ワケありの身ですよ?」


 トビアスはすまなそうに微笑むが、アランはニヤリと笑う。

「関係ないね。だってそれ濡れ衣でしょ。うちの事業はこれから、税金の計算どころか、既存の商人の枠を超えて大きな売り上げになるんだ。君みたいに楽しみながら数字の裏まで読める天才がどうしても必要なんだ。それに――」


 アランはカトリーナを指差した。

「うちの法務のトップは、融通の利かなさでは君とどっこいなんだ。汚職の匂いを嗅ぎつけてクビになった元・王宮文官だよ。君を陥れた大店や王宮の連中を、法律と数字の力で追い詰めてみないか。どうだ、面白そうに思えるだろう?」


 トビアスはアランの言葉を聞くと、おっとりした笑顔を崩さずに、しかしその声のトーンをわずかに低くした。

「……なるほど。大店どころか、国を相手に商売で喧嘩を売るおつもりですか。あはは、とんでもない大ボラを吹きますね。そんなあなたは何者ですか?」

「自己紹介が遅れたね。領主様から名誉技師長の称号を頂いている、アラン・プラードだよ」

「あれぇ、こんなにお若いあなたがあの高名な方とは!面白そうですね。僕のソロバンで、あなたに1ゴルドの狂いもなく勝利を計算して差し上げましょう!」

 少しセリフがキザに思えたが、実力があれば問題ない。


 カトリーナも入れて三人は握手をしてトビアスが仲間になることが決まった。

 なんだか明るくに憎めないキャラクターだとアランは思ったが、数字が三度の飯より好きな変わり者の度合いが、とんでもないと気づくのは、もう少し後のことだった。そんな三人の横で、レイモン商会の若い商人はポカンとして大きく口を開けていた。



新キャラは男性でしたね。アランのハーレム化は阻止できたようですww 曲がったことが嫌いなカトリーナとトビアス、二人の相性は良いのでしょうか?それとも融通が効かないものどうし、打ち解けないのでしょうか?事務所の中が少し心配です。次の更新は7/12です。次はトビーの閑話にするかメインストーリーを進めるか迷っています(^_^;)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ