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【77-1】元暗殺者〜スカウトする〜傭兵ギルドで脅された!?

法律の専門家カトリーナの次は、護衛を探しに行きます。そこでちょっとした騒動が起きるのですが…。

 領都ロックシュタッドのブラン地区にある、あの二階建ての物件。借りたのは良いけれど、ニ階の居住スペースこそ家具やカーペットが整っているものの、一階はまだ何もないガランとしたスケルトン状態だ。だが、テオから届く改良紙や、カイルと開発したコイルスプリングといった未発売の新商品」をここに運び込むとなれば、防犯のための護衛が絶対に必要になる。それにユリアの言うとおり、未成年の僕が出張する際にも護衛の同行が必須だしね。


「ピエール、護衛を探そうと思うんだけど、どこで探したら良いかな?」

 たまたま手紙を届けに来たピエール店長を捕まえて尋ねてみた。

「うちの店は退役した騎士の斡旋所で頼んでいますが料金は高いです。何せ元騎士爵様ですから。もちろん年金が出ているので元の俸給ではないですがそれなりに」

 そうか平民出の騎士は引退したら爵位を失うんだよな。僕のところは大店と違うのでもう少しリーズナブルな護衛を雇いたいな。


「他には方法はない?」

ピエールは頭を横にかしげて、少し考えてから答えた。

「フリーの護衛を雇うか傭兵ギルドですね。フリーの護衛は簡単には出会えません。人脈で紹介してもらう形です。傭兵ギルドは旅商人などが、道中の警護を依頼するのに使います。ピンからキリまでいますけれど、当たりを引けばいい人に出会えますよ。給料もそれほど高くないし、気に入ったら専属にすることもできます」

「よくわかった。どうもありがとう」

 傭兵ギルドか。よし行ってみよう。


 未成年だと雇えないそうなので、ブランシュに同行してもらう。若い女性と一緒というのは少し躊躇ったが、ギルド内での争いごとは御法度とされているのでなんとかなるだろう。雰囲気は悪くてもそこは一応ギルドだからな。雇う人材はブランシュと一緒に相性を見極めたいので、僕たちは傭兵ギルドへ向かった。


 ◇


「……アラン様、本当にここで護衛を探すのですか? なんだか、すごくガラの悪い視線を感じるのですが……」

 ブランシュがアランの上着の袖をきゅっと掴み、不安そうに周囲を見回した。二人が足を踏み入れたのは、ヘラルドスクエアから外れた路地裏にある「傭兵ギルド」の酒場兼案内所だ。案内所に酒場が併設されてるなんて聞いてないよ…。


 扉を開けた瞬間、押し寄せてきたのは安酒と煙草、そして男たちの汗の匂い。壁には手配書や討伐依頼の羊皮紙が雑然とピン留めされ、大テーブルでは、大剣を背負った大男や、ナイフを弄ぶ隻眼の戦士たちが、明らかに場違いの、貴族然としたお坊ちゃんと、育ちの良さそうな銅色の髪の美少女を値踏みするように睨みつけていた。


「傭兵と目を合わせちゃダメだよ、ブランシュ。絡まれるから。少しばかりたちは悪いけど、レイモン商会のような大店なら正規の警備会社に頼めても、うちのアラン商事はまだ立ち上げたばかりの零細スタートアップだからね。今は、腕が立って、かつ固定給で柔軟に動いてくれる『掘り出し物の個人傭兵』を、ここで直接スカウトするのが一番コスパがいいんだ」


 アランはアニメでよく見るシーンと同じだと思いながら、荒くれ男の視線に慣れたふりをしつつ、ギルドの受付カウンターへと歩み寄った。カウンターの奥では、顔に大きな刀傷のある受付の退役軍人風の男が、面倒くさそうに葉巻を咥えていた。


「おい、そこの坊ちゃん。ここは迷子の貴族が来るところじゃねえぞ。用がないなら、その可愛いお嬢ちゃんが怖い目に遭う前に帰りな」

 刀傷の男は低い声で唸るように言った。その言葉は脅しではなく、これでも親切心からなのだろう。

「用ならあるさ。新しく立ち上げる商会の事務所と、商品の輸送時の護衛を頼める、優秀で『口の堅い』傭兵を探しにきた。――固定給は、市場の相場より2割増しで出す」

 そう言って依頼書と紹介料の銀貨一枚をカウンターに置いた。


『相場より2割増し』


 アランがその言葉をあえて少し大きめの声で発した瞬間、酒場の喧騒がぴたりと止んだ。酒を飲んでいた傭兵たちの目の色が、一斉に「獲物」を狙うハイエナのようにギラリと変わる。


「ほう……口だけは一丁前だな。だがよぉ、坊主。ここにいる連中は全員、一癖も二癖もある荒くれ者だ。二割増しの金に釣られて大勢やってきたら、お前みたいなひ弱なガキが目利きできんのか?」

 受付の男がニヤリと下品に笑うと、近くのテーブルから、身の丈ほどもある大斧を持ったスキンヘッドの巨漢が立ち上がり、大きな音を立ててアランたちの前に立ち塞がった。


「おいおい、景気のいい話じゃねえか、雇い主様よぉ! だったら、まずはその『二割増し』の金に見合う器かどうか、俺が力を見せてやろうかぁ!?」

 巨漢が威圧するように大斧を床に叩きつける。凄まじい衝撃音に、ブランシュが「ヒッ……!」と息を呑んでアランの後ろに隠れた。

(Part2へ続く)



4千字を超えてしまったので2回に分けます。なので次の更新は続けて明日7/9です。

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