【閑話6】ブルーノ視点〜ブルーノの決心
後々の展開を考えて、ブルーノ視点の閑話を挟んでおくことにしました。
私はブルーノ。レイモン商会の商会員です。まあ店員と言ってもいいですね。けれども店番だけをしているわけではありません。平民の子どもは五歳過ぎたら家の手伝いをし、七歳になったら将来の職業を見据えて見習いの前段階の無給での職業訓練のようなことを始めます。
私の実家は領都から少し離れた町で小さな商店をやっています。兄がいるので店の後継は彼なのです。兄弟で商売をするほどの売り上げはないから、私は見習いを目指して領都にやって来ました。あちこちの店に声をかけて回ったのですが、紹介状も持たない私を受け入れてくれるところはなかなか見つかりませんでした。もう領都はダメかと諦めかけた時、運良くレイモン紹介の旦那様が、将来見習いが必要かもと考えていたところらしく、なんとか店に入れてもらえました。
取り敢えず屋根裏部屋に住み込みで、衣食住の内の食と住は確保できました。店に出るわけではなく倉庫で商品を運んだり仕分けたりをするので、持って来た服で十分でしたね。そうして十歳になったところで見習いとして働けることになりました。少ないながらも給金が出るようになり、休みも取れるようになったのです。私は初めての給金で買い物や買い食いをしてみました。がぜんやる気がでたのを覚えています。
私は社交的な性格でもあったので、店の配達でお客様のところに使いに出されるようになりました。言葉遣いや態度も先輩たちを見習って真似をすることができたので、十二歳を過ぎた頃、手が足りない時には店にも出るようにもなったのです。店に出る時には店のお仕着せを着られるので、当時とても誇らしく感じたものでした。十六歳で成人した後は中堅社員として交代で店に出られるようにもなりました。そんな時にアラン様が発案した商品を商会で扱うことになり、ネコ車と台車の販売やサポートを任されたのです。
その前の五目並べなんかでも驚きましたが、この業務用の商品も珍しいと感心しました。それまで少しマンネリ化していた毎日に、刺激が加わって前より楽しいと感じ始めたものです。ネコ車の粗悪な類似品が出て、それを買った客のクレームに対応する方法を教えてくれたアラン様には、「こんな子どもが!」とそれはもうびっくりしましたよ。
そんな時に、リヴェルトへアラン様の付き添いでい行くことになったのです。私がリヴェルトに土地勘があったのと、貴族のアラン様に失礼な態度を取る心配がないと信用されていたからです、はい!一度目の時は打ち合わせ中に離れた場所においやられて、アラン様とテオさんの会話は聞き取れませんでした。ですが帰りに紙の束をテオさんがアラン様に渡すのをみて、高価な紙をこんなにも気軽に!と驚いたものです。
商談が上手くいったのかをアラン様に尋ねると、商品ではなくてなんと言ったけな……そう協定だとおっしゃいます。なんか形のないものをやりとりするような話で、これまた珍しいことをするものだと感心いたしました。
二度目にリヴェルトへアラン様のお供で行った時はさらに興奮しましたね。だってミュゼット号に乗せてもらえたのですよ。いやあ蒸気自動車というものは、馬車より大分速く走るもので、船よりも早くリヴェルトに着いてしまったのです。音が大きいけれどもそれがまたかっこいい。振動も私には馬車より良いと感じましたけれど、ブランシュお嬢様は遠乗りをすると、お尻が痛くなるとおっしゃっていましたね。アラン様が言うには板バネと言うものを取り付ければ、さらに乗り心地がよくなるそうです。そいつが商売のネタにならないかと真剣に考えてしまいました。
二度目は秘密保持契約というものを結んだので、テオさんとの商談に参加できました。この契約というのも本邦初となるそうですよ。テオさんが歴史的瞬間だと言ってました。そんな栄誉を賜るなんて恐縮してしまいます。
それでもって、お二人の話がまた凄いんです!なんだか知らない言葉がポンポン飛び出して来て、わからないながらも興奮してしまいました。なんでも水力風車とか手回し扇風機なとど言う新発明も出てましたね。最後には薄い紙とか油紙とかいう新商品の話もしていました。これから私も売ることになるのかと思えばワクワクしました。
おまけにアラン様は魔術を練習しているとか。それはもう驚き桃の木山椒の木ですわ。神殿の神官様しか使えない魔術を練習して使えるようになったら、それはもう大変なことです。この時に私は決めました。今後アラン様が独立なさる時には、絶対について行くって。だってそうでしょう?こんなに面白そうなことを次々に実現する人って他にいいませんから。その人の発明した品物を売るのは商人冥利に尽きるではありませんか。私は好奇心が旺盛なんです。早速旦那様に相談しましょう。
そういうことなので、今日・明日・明後日3連続で更新します。




