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【69】油紙で失敗する〜臭う〜油紙の臭いをどうすれば!?

念願の油紙ができたみたいです。でも問題が発生したようですよ。

 ここはヨハンの工房。僕は油紙の試作に来ている。ヨハンがインクを作るために亜麻仁油を常備しているし、新商品の秘密を彼が漏らす心配がないからだ。


 さて、油紙ってどうやって作るんだっけ?

「フォトメモリー!」

 僕は頭の中の写真記憶を文字通りめくる。ブXタニカ国際大百科事典にあった気がする。これだ!


『前世の日本(江戸時代など)やヨーロッパで使われていた油紙は、和紙や頑丈な紙に「乾性油かんせいゆ」と呼ばれる、空気中で固まる植物性の油を染み込ませて作られる

 主な原料(植物油):「荏胡麻えごま油」や「きり油」、西洋では「亜麻仁アマニ油」

 作り方:植物から絞ったこれらの油を、紙の表面に刷毛はけで均一に塗る。風通しの良い日陰でじっくり乾燥させて、油を完全に酸化(乾燥)させて固めると水や油を通さない、破れにくくて丈夫な「油紙」が完成する』


 なんと、これなら簡単に作れそうだ。作り方の部分を紙に書き出してカイルに手渡した。


「どうだい、ここでも作れそうかい?」

「こりゃぁ朝飯前ですぜ、ボス」

「油を塗るのは熱してサラサラにしなくちゃいけない。加熱しすぎると火がつくから注意するように。加熱中は決して鍋からはなれてはいけないよ。塗った後でじっくり乾燥するとなると、今日完成させるのは無理だね。それから乾燥する場所も選んでね。タバコを吸う人がいる場所はだめだよ。出来上がった油紙の方も火気厳禁だ。ここに薄い紙の試作品を置いていくのでそれでやってみてくれないか」

「了解!」


 完全に酸化させるのだから三日くらいあればできるかな。これは期待できるぞ。ところで 亜麻仁油を使った油紙で食品を包んでも安全かな?亜麻仁油自体は食用の揚げ物などに使われているのだから大丈夫だろう。あれっ?こっちの世界でフライを食べた記憶がない。揚油は使われていないのかも。僕はカイルの工房を後にした。


 ◇


 カイルに油紙の試作を頼んでから三日後に彼から木札が届き、ブランシュがブルーノから受け取って言った。

「アラン様、カイルからです。油紙ができたそうですよ」

 ブランシュが嬉しそうに言った。

「来たか長さん待ってたホイ!」

 僕の言葉にブランシュが顔に「?」を浮かべている。でもいいのさ。

「待ちに待った知らせがあったという意味だよ」

「そうですの。では、私もご一緒に参らせていただきます」

「うん、行こう!」

 二人でミュゼット号に乗り込んだ。ヘルメットが欲しいな。ヨハンに作らせようか。


 ◇


「カイル、来たよ」

「ボス、随分とお早いお着きで」

「もったいぶらないで早く油紙を見せてよ」

 するとカイルは茶色くなった紙を渡してくれた。テカテカしていてまた硬い感触だ。油紙ってこんなだったんだ。前世でも親世代でもなきゃ実物を知らない代物だからね。カイルはブランシュにもう一枚の油紙を渡す。


 匂いを嗅いだブランシュが

「アラン様、これは結構臭いますね。食べ物を入れるには気になります」

「うーん、確かにちょっと臭いよね。魚の生臭さにも似たような臭いだな。せっかく美味しそうな焼き立てのパンと温かいスープを買っても、それを包んでいる紙から油絵の具や印刷インクのツンとした臭いが漂ってきたら、食欲が落ちてしまうよね。乾燥時間を延ばしたら臭いは減るのかな」

「俺も、いの一番に臭いが気になったんでぇ」


「よし、臭いを消す方法を考えよう。ヨハン、加熱する前の油を見せてくれるかな」

 ヨハンは油の入ったかめを持ってきた。上から覗き込むと何やら細かい粒のようなものが散らばっている」

 この世界では工業的手法で油が作られていないから原料を搾ってそのままなのか。不純物が多く含まれているようだ。やっぱり精製しないとだめなんじゃないかな。


「ヨハン、臭いを消すために色々試してもらっていいかい?」

「もちろんでさ!」

「まずは、油を目の細かいザルで濾すこと。油に浮いている混ざり物を除くんだ」

「つぎに、亜麻仁油と同量の沸騰した熱湯を樽の中で一気に混ぜ合わせ、棒で激しくかき混ぜる。しばらく放置すると、上の方は油で下の方は水と二つに分離するんだ。境目は目で見て一発でわかる。臭いの原因となる不純物は水に溶け出すから、下の水だけを抜き捨てる。これでサラサラの綺麗な油になるはずだ」

 ヨハンが熱心に聞いている。

「これだけしても、元々の油の臭いは完全には消せないかもしれないので、まだ気になるようならハーブや柑橘類の皮を一緒に煮込んで臭いを消すことができるんじゃないだろうか。気になる臭いを良い香りで消すんだ」

「目には目にを、臭いには匂いをってことね」

 ブランシュが言った。


「カイル、だいぶ手間が増えてしまうけれど、やってくれるかな。もちろん手間賃は弾むよ」

「ボスの頼みとあらばやりますよ」

「くれぐれも、火傷だけは気をつけてね。油の火傷は直ぐに冷やしても酷いことになるから」

「へい、気をつけます」

「じゃ、頼んだよ」

 僕たちは工房を出た。


「いったいどこからあれほどの知識が湧いて出てくるのですか?あれも前世知識ですか?」

 またブランシュにいぶかしがられてしまった。

「うーん、完全に前世知識というわけでもなくて、知識と知識を組み合わせて新しい方法を思いつくみたいな。勉強すればするほど、そうした組み合わせが増える気がするんだ」

「あっ、確かに私も女学校へ行く前と後では視野が広がった気がしますわ」

  ブランシュも知識の有用性には気づいているようだ。

「そう、だから貴族も平民も分け隔てなく学ぶ機会が必要だと思うんだよね」

「少年探偵団のみんなもトランプとカルタで遊んで文字と計算を覚えて少し変わりましたものね」

 平民向けの学校が必要なのは間違ってない。やっぱり人は皆平等という世界の常識が抜けないなと改めて思うよ、僕は。




次はミュゼット号のお尻の痛さを何とかしようとするみたいですよ。6/22更新予定です。なんか色々と同時進行中で、何がどこまで進んでいるのかわからなくなってきました。人物相関図だけじゃなくて、アイテムの相関図も必要なのでしょうか?他の作家の方はどうされているのか知りたいです。紙媒体の創作ノートを作っていないので。

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そうそう「魔法科高校の劣等生 四葉継承編」を見てきました。原作を読んでいないので、エンディングのどんでん返しに驚きました!

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