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【63】解決編後編〜処分される〜一番活躍したのは誰だ?

対策を練って実行していましたが、事件は解決を見たようです。解決編なので連投で更新します。

 ヘラルド新聞社の入口階段をトントントンと上がっていくと、入り口のドアが閉まっていて、しかも鍵がかかっている。安全対策がしっかりされているのだ。僕はドアをノックして「アランです!」と大きな声で呼びかけた。カチャリと音がしてドアが少しだけ開き、ガストンの顔が半分だけ見えた。すると一旦ドアが閉まってから再度開いた。ドアチェーンが掛かっていたのか。これってユリアの発案?

「ようこそアラン様」

 おお、ガストンが僕を貴族扱いしてくれている。ユリアと対等に喋っているからかな。カウンターの脇を通って編集室に入る。


「いらっしゃいアラン君」

 昨晩と違ってシャキッとしたいつものユリアに戻っていた。

「アラン君、ちびっこ配送隊がやってきて刷りたての新聞を持って行ったわ。いつもならまだまだ印刷していないのだけれど、昨日配れなかった分の再印刷だから配送に間に合ったわ」

「時間を考えずに配送隊を送り出してごめんなさい」

「いいのよ。それからこれを見て」


【至急報】真実を焼く火はない:襲撃犯へ告ぐ、我々は怯まない


 昨日、チェスター男爵家の醜聞を報じた本紙の配達員が、正体不明の暴漢に襲撃され、新聞を強奪・放火される事件が発生した。


 言論を暴力で踏みにじり、罪なき少年を傷つけてまで隠したかった「不都合な真実」とは何か。それこそが、彼らの罪の証明に他ならない。


 紙面は燃えても、真実の言葉は消せない。ヘラルド新聞社はここに襲撃事件の全貌を告発し、昨日と同じ記事を再び印刷・配布する。脅迫に屈せぬ我々の筆は、今後も貴様たちの闇を暴き続ける。


(ヘラルド新聞社・主筆 ユリア・フォン・アルトハイム)


「わお、まさか襲撃事件そのものを次のネタにするなんてユリアさんらしい。チェスター男爵も今頃、怒りで顔を真っ赤にしてるんじゃないかな。君を敵に回したのが、あいつらの最大の不運ですよね。でもユリアさん、これでもう『ただの新聞記事』じゃなくなっちゃった。これは僕たちと、権力に守られた悪党との知恵比べですよ。この記事を絶対に下町の隅々まで届けてみせる。そっちは任せて。ガストンは必ずユリアを守ってよ」

 僕はガストンの方を見て言った。


「ありがとうアラン君。燃やしてまで読まれたくなかったのだから、これが購読者にちゃんと届けば貴族社会も何らかのアクションを起こすと思うの。だから負けないわ」

「そうだ、僕は領主様と面識があるんだった。名誉技師長だしね。この新聞を領主様にも届けてみますよ」

「それは心強いわ」


「それからブランシュ発案のお店に新聞をおいて販売する件、現在十二のお店が手を挙げている。リストはこれです。後でちびっこ配送隊のルークがその分を取りに来るから渡してくれるかな」

「わかったわ。ありがとう。これで部数が伸びると紙が不足するかもしれないわ」

「そっちは僕も増産を頼んであるので、何とかなると思いますよ」

「そうなの?手回しがいいわね。さすがだわ」

 帰る前に先ほど思いついた疑問を口にした。


「入口のドアチェーンだけど、この世界にもあるものですか?」

「ああ、あれは私の発案よ。っていうか前世の知識で急遽取り付けたものよ」

「だったら、あれを売り出しませんか?この世界にも必要な物だと思うのだけれど」

「ええそうかもね。あなたに任せるわ」

「わかりました。じゃあ、そう言うことで」

 僕は新聞社を後にした。


 ◇


 僕は自分の執務室に戻ると、新聞を配達する別ルートを検討し始めた。まだチェスター男爵側はどのルートで新聞が配られているか把握していないだろう。おそらく従来と同じ配達員が新聞の束を抱えていると思って探しているに違いない。だから慌てて別ルートを作る必要はないのだが、ガストンという専門家の意見も聞くべきだと思ったのだ。


 夜になって新しい知らせがもたらされた。配達完了の報告をしにヘラルド新聞社へ行ったルークがユリアから手紙を預かって来たのだ。


 親愛なるアラン様で始まった手紙に書かれていたのは要約すると次のようになる。


 燃やされずに残った新聞を街売りで入手した領都騎士団の副団長が内容の重大さに驚き、領主様に報告すると同時にチェスター男爵邸に赴き嫡男の容体を確認し、給仕係を捕まえて魔薬を嫡男に使ったことを白状させた。危うく一味に給仕係を殺されるところだった。悪事が新聞記事となったことで、観念した給仕係が自首してきたそうだ。


 そして領主から下された処分はこうだ。


 犯行の首謀者(愛妾と第二子)への処分:終身幽閉

 理由:嫡男を毒殺しようとした罪、および王都の闇組織と結託して領内の治安を乱した罪(新聞配達員の襲撃指示など)により、愛妾とその実子は氣志團により捕縛された。

 貴族籍は剥奪され、男爵の所有する館の離れへ一生幽閉され、一歩たりとも外へ出られず、誰とも面会はできない。結託していた下町の闇組織も、領主の騎士団によって徹底的に摘発するよう御指示が出された。


 男爵家嫡男が命を取り留めたので極刑は免れたと言うことらしい。幽閉というのも重いんだか軽いんだかわからない刑だが、この世界の貴族社会ではよくあるものだと言うことだ。


 新聞配達員が襲われた事件は、指示した犯人が捕まったので解決し、ちびっこ配送隊はお役御免となり、通常運用となる。ただし、配達員の安全のためルートを毎日変えることと、新聞紙の束を見せないように籠に入れることにしたそうだ。


「ブランシュ、新聞配達襲撃の指示を出した犯人が捕まったって」

 そう言って僕はユリアの手紙を手渡した。ブランシュはサッと目を通して

「やっぱり男爵家の愛妾が主犯だったのですね。これで万事解決しましたね!」

「う〜ん、何だか藪を突いて蛇を出してしまったのではないかな。少し心配」

「どういう意味ですか?」

 ブランシュは不思議そうに小首を傾けて言う。

「今回の新聞記事は貴族家の跡目争いを白日の元に晒して、領主様の介入を呼び込んだよね。つまりは記事の内容が場合によって大きな影響をもたらすことが示されたわけだ。悪事を働く奴らには放ってはおけない存在になったのかもしれないよ」

「なるほど。それではユリアさん達の身の安全を守る手段は講じておかないといけないですね」

「うん、彼女もわかっていると思うけどね」

 前世のSNSでの炎上のような効果を持つこともね。心の中で僕はつぶやいた。


アランは新聞の影響力の大きさに驚くと同時に、これを脅威と感じる既得権益層との対立構造に気がついてしまいました。次エピソードはどうしましょう。重たいイベントの後はライトなものがいいかな。頑張ったのでまた1日おきの投稿で次は6/5となります。

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