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【60】襲撃~横やりが入る~ユリアの新聞が暴漢に襲われた!

これは登場人物が入れ替わったりするので第三者視点で書きます。

 ユリアのヘラルド新聞社の配達員が襲われた。


 夕暮れの領都の路地裏で、ヘラルド新聞の束を抱えた少年配達員は不意に行き場を失った。現れたのは、顔面を布で隠した正体不明の男たちだった。男たちは有無を言わさず少年に殴りかかり、彼らの飯の種である大切な新聞を奪い取ると、その場で火を点けた。激しい炎が、一面に大きくある記事が記された紙面を容赦なく灰に変えていく。血を流し倒れる少年の前で、男たちは「これ以上の配布は命がないものと思え」と言い残し、闇へと消え去った。


「社長、一大事です。配達員が怪我をして運ばれて来ました」

 ガストンが血相を変えて編集部に飛び込んで来た。彼の肩には少年が担がれていた。

「ここに下して!手当をしなくては」

 ユリアも動揺しながら言った。長椅子に横たえられた少年は確かに配達員だ。顔からシャツの胸までにかけて地で染まっている。きれいなタオルを濡らして頭と顔の血を拭うと、どうやら傷は頭の一ヶ所でもうほぼ血は止まっていた。頭からの出血は大怪我に見えるというのは彼女の前世で経験済みだ。シャツを脱がせると身体は打撲痕はあるが出血はない。一先ず命の危険がないことが分かってユリアは安心した。


 新聞にゴシップも載せている以上恨まれる覚悟はしていたが、こんな実力行使は想定外だった。配達員の頭の怪我は戸棚のお酒を含ませた布でぬぐってから乾いたきれいな布を充てて包帯でぐるぐる巻きにした。

(この世界にはまだ消毒液は無いのよね」)

「あなた大丈夫?」

 孤児とはいえ もう新聞の配送になっている仲間を心配して言った。

「大丈夫です、社長。僕ら孤児はこういう暴力を振るわれるのはよくあるので、このぐらいの痛みは我慢できます。それより新聞を燃やされてしまってすみません」

 彼は何とも健気に彼は言った。

「新聞のことは気にしないで。それじゃあここでゆっくり休んで」

 この世界に薬草ではなく、よく効く鎮痛剤があればいいのにとユリアは思った。


「ところでガストン、運んでくれた人は何か言っていたかしら?」

「それが、路地裏で火の手が上がったので駆け付けたらこいつが倒れていたそうです。火はすぐに消えたと言っていました。そうそう、こいつの傍にこれが」

 と言ってガストンが紙の切れ端を渡した。

「これはうちの新聞だわ。燃やされたのは配達前の新聞ね」

 ユリアは肩を落とした。

「今日の一面の記事が原因かしら。ガストンはどう思う?」

 彼女は誰かに頼りたい気分で聞いた。

「今日の記事については心配していました。編集部に殴り込みがあるかもしれないと。その記事の関係者が押しかけて来て」

「そうよね、この記事よね」

 ユリアは編集部に残っている新聞の一面を指先でなぞった。


 ◇


【号外】気高き血統の裏切り:チェスター男爵家、嫡男毒殺未遂と愛妾の陰謀

 領都中を震撼させる醜聞が発覚した。名門として知られるチェスター男爵家において、次期当主である嫡男・ラインハルト様が数日間にわたり激しい毒物に侵され、生死の境を彷徨っていたのである。


 当紙の潜入取材により、この恐るべき犯行の首謀者が、現当主の愛妾とその実子である第二子であることが突き止められた。彼らは、王都の闇商人から仕入れた「遅効性の魔薬」を給仕係に盛らせ、正当な後継者を排除して爵位と莫大な財産を乗っ取ろうと画策していたのである。


 現在、実行犯の給仕係は口封じのために幽閉されているが、当紙は彼が残した秘密の告白書と、愛妾が闇商人と交わした売買契約書の写しを独占入手した。


 血を分けた家族すら欺く狂気の沙汰。この醜い権力闘争の全容、および関与した下町の闇組織の拠点は、本紙裏面に完全掲載している。


(ヘラルド新聞社・主筆 ユリア・フォン・アルトハイム)


 ◇


  ガストンは単なる門番ではなく、情報の最前線にいる自覚を持って、以下の提案をユリアに突きつけた。


「ボス前から言っていたように新聞を配る子どもたちが襲われないように、町の街路を含めた安全な配送ルートの策定と、緊急時の笛の配布をするべきです」

 ガストンは護衛のプロ意識を前面に出して助言した。

  「そうね、あなたは前々からそういう提案をしてくれていたのに、忙しさにかまけて私が放置していたのがいけないのだわ」

 ユリアは顔に後悔の色を浮かべてつぶやいた。

「せっかく社長がいい記事を書いてもそれが届かなければ意味がなくなります」

 ガストンはプロ意識をのぞかせて強く言った。

「分かったわ。こんなことが起こったばかりなので 至急 何とかしなくちゃいけないわね」

 ユリアは焦燥の色を浮かべて弱々しく言った。


 ◇


「アラン様、大事件です」

 執務室の奥のベッドで目を覚ますとブランシュが 大慌てで、ものすごい勢いで飛び込んできてアランに言葉を浴びせた。「どうしたんだい」とアランが聞く間もなく彼女は続けた。

「ヘラルド新聞の配達員が襲われたそうです。新聞を奪われて燃やされてしまったとか」

「ええっ!」

 確かにそれは大事件だ。

「それでユリアさんの方は無事なのかい?」

「そこまで詳しいことは街の噂ではわからないのです」

「よし、それじゃあ一緒にヘラルド新聞社に行こう!」

 ブランシュとアランは大慌てで支度をして、辻馬車に飛び乗ってヘラルド 新聞社へと向かった。


長くなってしまったので二回に分けます。次回は6/1更新予定です。

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