【50】木製第一世代トランプ~揃える~カードを見破られないように作るのは難しい
急病のため予告時刻に投稿できませんでした(-_-;)
さて紙でトランプを試作したアランは販売用の木製トランプの試作にとりかかります。
トランプ開発にGOが出たのでブランシュと早速要求仕様の検討会をする。思いついたことを言い合うと、ブランシュが自分の蝋板に書き留めていく。この蝋板は彼女が家庭教師を始める時に持ってきたものだ。物持ちがいいなぁ。
*子どもの手のひら位の大きさ(作りやすさを考慮しつつ決める)
*できるだけ薄くかつ落としても割れないこと
*個体差をできるだけなくすこと
*滑りやすいこと
これくらいかな。遊んでみて他に気づいたことはない?
「どんなに薄く作っても木の板ではアラン様がしていたような、扇を広げた形に持つのは難しいと思うわ」
「そうだね。四人で遊ぶとしても一人十三枚くらい持つわけだから、手札が手に収まらないよね」
「手札というのですか、手に持たない遊び方はあるのかしら?」
「そっか、説明書の遊び方をババ抜きじゃないものに変えてしまえばいいんだ。だったら神経衰弱がいいね」
「それはどんな遊びですの?」
「ジョーカーを除いたすべてのカードを裏返しにして、順番に二枚ずつ表に返して同じ数字だったら獲得する。獲得できた人はもう一回同じことができる。最後に一番多くのカードを獲得した者が勝ちというゲームさ。」
「それは記憶力を強化できますね。他にはありますか?」
「あるよ~。」ってドラマHEROかい!
「ゴルフって言う遊びとか嘘つきポーカーとか。説明書に3種類くらいはつけられると思うよ」
「わかりました。試作品ができたら木製トランプで実際に遊んでみせてくださいね」
ブランシュが目を輝かせて言った。
「じゃあ、蝋板の内容を紙に書き写してくれるかな。メートルに渡したいから」
「後で工房へ試作品とその仕様書を持って行くのですね。わかりました」
ブランシュが紙に書き写すのを待ってから僕は言った。
「木製トランプを作って売っている間に紙製のトランプもつくりたいんだ」
「植物紙の改良を同時に進めるんですね」
「そう、それと印刷機も作りたい」
「ではテオさんとユリアさんの協力を取り付けたいと?」
「うん、取りあえずは要望を手紙にして探偵団に届けてもらおうと思う。それぞれに何をお願いするかも話し合っておきたいんだ」
「いいですよ、やりましょう」
【トランプ用の紙 要求仕様】
*厚紙の製作…今の二倍以上の厚み
*表面をツルツルにする
*角を丸くする
*大きさをそろえる
「こんなところかしら」
「うん、次は印刷機の方なんだけど、こっちは取りあえずユリアさんとこと同じものを一台調達したいな。それを見て改良点を考えたい。メートルや場合によってはテオにも検討に加わってもらおうと思う」
「一から作るのは時間がかかりますものね」
「だからそっちはユリアさんが頼んだ工房を紹介してもらうのと、追加で作る権利を一台分だけ取りあえず買いたいという手紙を、ブランシュに書いて欲しいんだ。テオへの手紙は僕が書くよ」
「ええ、承知しました。早速取り掛かりましょうか」
ブランシュと僕は昼食までの時間を使ってそれぞれの手紙を書いた。
昼食後、執務室に戻ると部屋の窓を開けてモスキート音の笛を力いっぱい吹いた。さて少年探偵団に聞こえるだろうか。しばらくすると窓の外から指笛が鳴る音がした。下を見るとルークが僕らの窓を見上げている。手紙を渡すだけなので僕とブランシュは階段を下りて店の前まで出て行く。
「ボス、およびですかい?」
ははは、ボスって響きがいいねぇ。一度呼ばれてみたかったんだ。
「ルーク、この二通の手紙を届けて欲しい。届け先の白い丸印の手紙はヘラルド新聞社のユリア。黒い丸印の方がリヴェルトのテオの所だ。アランからの手紙だと言うんだ」
「えっリヴェルトって川を上るんじゃ」
ルークが言いかけたが僕はそれを遮った。
「いやリヴェルトは遠いので自分で行かなくていい。新聞社がこの手紙の紙と同じものを買いに誰かをやっているので、ユリアに聞いてそいつを探して頼んでくれ。いくらで頼むかの交渉は任せる。でも断られないようにしてくれ。確実に届けたい。費用はこの巾着袋に入れたお金を使っていい。余った分は君たちの食事代にしてくれ。わかったかい?」
「へへっ、楽勝だぜ!」
ルークは機嫌よく飛び出して行った。
「さて昼食にして、お茶を飲んだ工房に行こうか?」
「そうしましょう」
昼食を終えて僕たちは工房へと向かった。
「工房の入り口をくぐったら、偶然目の前にメートルがいた」
「ちょうど良かった。メートルに話があるんだけど、今は時間があるかな?」
「へい、一段落したところなんで構いませんよ」
「トランプという遊び道具を作りたいんだ。紙で作った見本がこれだ」
メートルにアラン特製の試作品を渡す。
「ふん、表にマークと数字が書いてあって、裏は無地と。カードは全部同じ大きさだね。枚数はと一,二,三,…五十三枚か。他に条件はあるんですかい?」
「こちらです」
ブランシュが仕様書を渡した。
*子どもの手のひら位の大きさ(作りやすさを考慮しつつ決める)
*できるだけ薄くかつ落としても割れないこと
*個体差をできるだけなくすこと
*滑りやすいこと
「ふむ、子どもの手のひらぐらいって具体的な大きさはどんなです?」
「ちょっと物差しを貸してくれる?」
メートルから物差しを借りて自分の手に当ててみる。元の世界で縦九センチ横六センチぐらいだったな。
「横三ディギス縦四ディギス半てとこかな」
この世界では一ディギスが二センチくらいになる。
「割れないことと滑りやすいことはわかるんですが、個体差をなくすってのがよくわからねぇです」
それは裏側に他のカードと明らかに違う模様とか傷とかあると、遊んでいるうちに表の数字とマークがわかっちゃうだろう。だから色を塗って少し磨いて区別できないようにしたい」
「なるほど、塗って磨くのは多少手間だけどなんとかなりまさぁ。五十三枚だと板を切り分ける時に半端が出るんで、一枚を無地の予備にしちゃいかがです?」
「それはいいね!無くしたり割ったりした時に自分でカードを作れるな。さすがメートル、頼りになる」
ブランシュがピースサインを作ってる。
「では、三組くらい作ってもらえる?」
「わかりやした。十日もあればできるでしょう」
木製カードの試作品ができるのが待ち遠しい。
次のエピソードではユリアの印刷機を作った工房を訪ねることになります。5/10更新予定です。




