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異世界で少年は文明開化を目指す!  作者: ねこじぞう
第二部 子爵領のアラン
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【48】少年探偵団~集める~少年探偵団を結成する

企画会議で議題に上がった少年探偵団を結成すべく、リーダーの少年を呼び寄せます。

 僕とブランシュはアジェンダの中で一番手を付けやすい少年探偵団の結成にとりかかることにした。ブランシュ曰く

「ホームレスの孤児たちは世間の冷たい荒波にもまれてしたたかですから、お金を持ち逃げされたりしないように人選はしっかりしないといけません」

 だそうだ。貴族の家で暮らしてきた僕にはない感覚だ。

「ブランシュは孤児に使い走りをさせたことはあるの?」

「私はないですけど工房なんかではやっているはずですよ。」

「じゃあメートルに聞いてみようか?」

「そうですね、信用できる子を紹介してくれるかもしれません」

 僕たちは部屋を出て工房へ向かった。


「こんにちは。トマはいる?」

 ブランシュが奥へ声をかけた。

「へーい、今手が離せないのでちょっと待ってくだせぇ」

 奥の方から声がメートルの声がした。

「おやお嬢さんだけじゃなく坊ちゃんもですかい」

「トマ、アラン様が使い走りをしてくれる孤児を探しているんだけど心当たりはない?」

 メートルは左上に目をやってしばらく考えてから答えた。

「ルークっちゅう8~9歳の坊主がいるんですが、こいつは小さいけれど足が速く、領都の入り組んだ路地裏を隅から隅まで知ってるんでさぁ。届け物や木札のやりとりに重宝してまっせ」

「その子を僕が専属として使ってもいいかな?もちろん工房のお使いをしてもらって構わないよ」

「それならようがす。ただ金目の物とかを持たせるのは気を付けた方がいいかもしれやせん。孤児の中ではマシな方ですが、孤児にはかわりねぇんで」

 メートルはルークを紹介して自分の株が下がるのを心配しているようだ。

「うん、そうだね。他の子はいる?」

「ルークに言えば、よくつるんでいる仲間を連れて来やす。」

「ありがとう、トマ。後で手が空いた時にルークを呼んでもらえるかな?」

「ガッテンでやす!」

 メートルが翌日に来るように手配してくれるそうだ。


 ◇


 次の日の昼前、店長のピエールに連れられてルークは部屋に入って来た。くすんだ灰色の髪に青みがかった鋼色の瞳だ。8〜9歳という年齢のわりには、どこか冷めたような、鋭い目つきをしている。外見は、汚れが目立たない茶系のボロい服を、紐できつく縛って動きやすくしているようだ。


 裸足に近いサンダルを履き、ふくらはぎには街中を走り回っている証拠である、無数の小さな切り傷や泥がついている。僕を貴族だと知らされているのだろうか。その目に敵意はないが、こちらを品定めするような油断のない態度に見える。

「アラン様、使い走りのルークを連れてまいりました」

 ピエールはルークを置いてすぐに部屋を出て行った。


 口元にかすかな笑みを浮かべて

「おいらがルークだ。レイモンの旦那に、新しい『先生』の用事を聞いてこいって言われた」

 僕はじっとルークを見て

「アランだ。よろしく、ルーク」

 メートルは僕を先生と言ったのか。僕の立場を説明するのは難しいからルークに理解しやすいと思ったのかな。まあいいや。僕はルークの資質を探る。

「君は、ここから中央広場の時計台まで、どれくらいで往復できる?」

 いきなりなんだというように、少し意表を突かれた顔をして

「……普通に走れば鐘が四分の一鳴る間(約15分)だ。けど、裏道の水路を通ればもっと速い。それがどうしたんだ?」

「うん、いい答えだ。地図は読めるかい?」

 僕は地図を渡そうとしたが、それを無視してルークは言う。

「ちず? なんだそりゃ。街の道なら全部頭に入ってる。紙に描いた絵なんか見たって、腹は膨らまないだろ」

 ブランシュが横から口を挟んだ。

「ルーク、失礼ですよ。アラン様は、あなたたちに新しい『仕事』を頼もうとしているんです」

「仕事なら今までだってやってる。店から店へ荷物を運ぶだけだろ。……それよりさ、あんた、本当にあの『鉄の怪物』を作ったのか? 街じゃ、魔法使いかペテン師だって噂だぜ」

 僕は苦笑しながら

「ははは、ペテン師か。面白い。ルーク、僕は君に『ただ走る』だけじゃなく、僕の『目』と『耳』になってほしいんだ。街で何が流行っているか、どんなデマが流れているか、それを誰よりも早く僕に届けてほしい。その代わり、ただの使い走り以上の給料と、君たちがもっと賢くなれる場所を約束する」

 ルークは怪訝そうに

「賢くなる……? 読み書きでも教えるってのか? 職人でもない俺たちに」

「ああ。文字が読めれば、僕の書く『特別な指示書』が読めるようになる。そうすれば、君は他の誰よりも効率よく、この街を支配するように動けるようになるんだ。どうだい、君の仲間も一緒に少年探偵団を作って、団長になってみないか?」

「……探偵団?団長?よくわかんねえけど、あんた、他の貴族とは匂いが違うな。わかったよ、アラン坊ちゃん。面白そうだから、仲間にも声をかけてやる。その代わり、腹一杯食わせてくれよな」

 ルークは団長という響きになんだか自尊心をくすぐられたのか、まんざらでもない顔をしている。食べ物の心配がなくなり給料が上がるのも満足なのだろう。


 ブランシュの方を見ると

「マナーもなっていない子たちに読み書きを教えるのは私よね、まあ大変」

 とでも言いたげな顔で僕とルークを交互に見た。

「ルーク、しばらくはお試し期間だ。もちろんその間の給料と食事代は払う。君たちが僕の役に立ってくれるの様子を見たい。午後に仲間も連れて来てほしい。直接会っておきたいんだ」

「わかったよ」

「それからこれは今日の昼飯代だ」

 そう言って小銀貨1枚を渡す。ルークは驚いた顔をして慌てて受け取る。

「おお、ありがとな。待ってろ、必ず仲間を連れてくる」

 お金を受け取ったら明らかに態度が変わった。


 ◇


 午後になるとルークが4人の仲間を連れて来た。

「ニコ、パッチ、ロロ、ビムだ」


 ニコはその名の通り知らないところへ連れてこられたのに笑顔で、誰からも可愛がられるタイプのようだ。

「ニコは大人に取り入るのが上手いんだぜ」

 ルークがニコの特長を教えてくれる。

「パッチは手先が器用なんだ。それと物覚えがすごくいい」

 服は一番ボロでつぎはぎが多いものを着ている。だから『パッチ』なのかな?

「ロロは孤児の知り合いが多い。街の情報通だ」

 ほう、それは有望な人材だ。

「ビムは元気な奴だ。ちょっと落ち着きがないけどな」

 元気が取り柄な子か。使い道を考えないとな。

「みんな、さっき食った昼飯代を出してくれたのがこのアラン坊ちゃんだ。お礼を言っとけ」

「久しぶりにお腹いっぱい食べられたよ」「おいしかった」「ありがとう」と口々に子どもたちが言う。孤児たちにとっては飯を食わしてくれる人=いい人なのだろう。

「ルークにも言ったけど、しばらくはお試し期間だ。見習いみたいなもんだな。みんながちゃんと働いてくれたらずっと使ってあげる。いいね?」

「おお!」

 声がそろった。


 僕はおもむろにポケットから細長い笛を取り出した。

「今からこれを吹くから聴いてくれ」

「ピーッ!」

 大きくはないがとても高い音がした。メートルに頼んでほぼモスキート音の高音が出る笛を用意したのだ。

「うわっ!」と子どもたちが叫んだ。ブランシュも耳を押さえている。

「これは大人には聞こえない音が出る笛だよ。君たちは今日から僕の少年探偵団だ。メンバーの誰か一人はこの音が聞こえる場所にいて、これがなったらリーダーである団長のルークに伝えてほしい。そうしたらルークはここへ来るんだ。こうすればいちいち使いを出さなくてもいいだろう。」

「さっすが、坊ちゃんは頭がいいな。おいらが団長なら坊ちゃんはなって呼べばいい?」

 あは、僕の中二病の血が騒ぐ。首領とか親分とかマスター、チーフなど色々頭に浮かんだがここはやっぱり

「ボスって呼んで!」

 とちょっと声が大きくなってしまった。ギャング団みたいだけど、まあいいか。夕食代にまた小銀貨1枚を渡してから

「じゃあ解散!」

 と宣言した。子どもたちはぞろぞろと出て行った。


「ブランシュ、探偵団のみんなの体格はわかったよね?中古の服を人数分用意してくれるかな。お使いにいくときには着替えさせなきゃいけないから。」

「ええ、わかったわ。ところで読み書きを教えるって言っていたけれど、それって私の役目でしょう?」

 と少し心配そうな顔をした。

「僕も一緒に教えるよ。カルタで遊んでやったらすぐに覚えるんじゃないかな」

「そうね、必要最低限でいいのですものね」

 こうして少年探偵団を結成したのだった。

次のエピソードでは企画会議で決まった新商品開発のアイデア出しを行います。

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