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異世界で少年は文明開化を目指す!  作者: ねこじぞう
第二部 子爵領のアラン
49/50

【47】第一回企画会議~検討する~やることがいっぱい!

ユリアとテオの協力は約束してもらえたので、当面何をするか決めなくてはなりません。

 さて、ユリアとテオの協力は取り付けた。まだ具体的な話は何もしていないけれど、僕の構想の中で暫定組織図に名前を入れておこう。

「ブランシュ、この紙を執務机の後ろに貼ってください。」

 僕は植物紙に書いた組織図をブランシュに渡した。

 ■■■ アラン物産株式会社(仮称) 組織一覧(暫定) ■■■

【部署名】 【担当】

 ------------------------------------------------

 技術部 (テオ)

 製造部 (メートル?)

 経理部 (財務のスペシャリスト)

 総務部 ブランシュ(兼任)

 人事部 (バスティアン?なってくれるといいな)

 渉外部(法務) 未定

 宣伝部 (ユリア)

 営業部 (元大商会の息子なんか良さそう)

 配送部 (引退した船長とか荷馬車の御者とか)

 ------------------------------------------------

 ※ 秘書ブランシュはアラン直属

 ブランシュは表を見て、すぐに問題点を指摘した。

「この『製造部』というのは、作るものによってはメートル・トマでは務まらないかもしれませんね。例えば、植物紙づくりなどは専門外でしょうし」

「そうだね。今はネコ車や台車を作っているので、そちらは引き続きメートルに任せたいんだ。紙を作るにしても、道具や製造機械の開発にはミュゼット号の経験が生きると思うんだよね」

 自分でも完全には納得していないが、まだ大きな事業を始めたわけではない。ユリアとテオ以外のメンバーについては、追々考えていけばいいだろう。


「それで当面の活動方針を君と決めたいんだけど」

「ええ、いいですよ」

「じゃあ『アジェンダ』――やるべきことのリストを作っていこう。僕が書き出していくから、不足や追加したいことがあったら言って」

「わかりました」


 ・ミュゼット二号機の組み立て

 ・新聞印刷機の機械化

 ・植物紙製造工程の把握

 ・植物紙工場建設候補地選定


「他になにかあるかな?」

「アラン様、その『機械化』というのは、どういう意味かしら?」

「紙をセット ⇒原紙を押し付け ⇒ローラーでインクを擦りつける ⇒原紙をはがす ⇒印刷済みの紙を取り出す っていう一連の工程を一人の手仕事でやっているでしょ。それを例えばレバーを引いたら一連の動作を機械がやってくれるようにすることだよ」

「確かに、それができれば一枚刷り上げる時間はぐっと短くなりますね」

 ブランシュが感心したように頷く。「時間短縮」という概念に即座に反応できる彼女は、やはり聡明だ。

「それができたら、次はレバーを引く動作を水車や蒸気の動力に置き換える。そうすれば、人間がついていなくても勝手にどんどん印刷できるようになるんだ」

「ああ……! こういう所に蒸気機関が役に立つんですね。自動車以外の使い道がやっとピンときましたわ」

 水車は川べりでしか使えないが、蒸気機関なら場所を選ばない。

「だとしたら、テオさんの植物紙の製造も機械化が必要なんじゃありませんか?」

「素晴らしい! そういう意見を待っていたんだ。まずは工程を見せてもらってからになるけど、手作業を減らせればテオの所でも生産量を劇的に増やせるかもしれない」

 需要が伸びるまでは、新しい工場を作らずに今の設備を改良するだけで済むかもしれない。そうすれば工場建設までの時間を稼げるはずだ。


「それから、紙の質は今のままで満足ですか? 品質を上げたり、違う種類の紙を作ったりはしないの?」

 またしても鋭い指摘だ。

「……そっか、その視点が抜けていたな。紙の改良か。もう少し白くしたり、表面を滑らかにしたりというのは、いずれ必要になると思う」

「もしそうだとしたら、インクも今のままかしら?」

「新しい紙ができれば、それに合うインクも必要になるだろうね。それと色違い――例えば赤や青のインクがあれば、ユリアさんの新聞ももっと華やかになる」

「赤と青のインクを使った新聞……見てみたいですわ!」

「ブランシュと話していると新しいアイデアが次々に湧いてくるよ。やっぱり君は最高の相棒だ!」

 褒められたのが嬉しかったのか、ブランシュは顔の横で「ピースサイン」を作って照れ隠しをした。先日僕が教えたしぐさだ。この世界にはない独特のポーズが、今の彼女にはとても似合っていて可愛い。


 僕は今の議論をアジェンダに追加した。


 ・ミュゼット二号機の組み立て

 ・新聞印刷機の機械化

 ・植物紙製造工程の把握

 ・植物紙工場の建設候補地選定

 ・植物紙製造の機械化

 ・新聞用インクの改良

 ・色インクの開発

 ・新商品の開発

 ・少年探偵団の結成


 僕は追記しながらさらに二つを書き足した。レイモン商会で売り出す新商品も増やさなくちゃと気がついて『新商品の開発』。それから情報収集や伝達に使える『少年探偵団』の結成。


「アラン様、その『少年探偵団』というのはなんですの?」

 そうこれは名探偵コナンじゃなくて江戸川乱歩の推理小説の方から取った。えっどっちだっていいじゃないかって?僕にもこだわりがあるんだよ。僕はブランシュに説明する。

「ああ、これは前世で読んだ物語に出てくる集団から名前を取ったんだ。実際はチームの連絡要員がメインだけど、他には情報収集や人探し、ちょっとしたお使いなんかを頼む子どもたちのことだよ」

「子ども? その子たちはどこから?」

「領都の路地裏には、ホームレスの孤児たちが大勢いるだろう。彼らを組織して雇うんだ。彼らなら街に溶け込んでいて目立たないし、情報の回りが早い」

「確かにそれは名案ですわ。その子たちに貸し出せる平民の服も用意したほうがよろしいですね」

「……と言うと?」

「路地裏だけでなく、それなりの地位がある人のところへもお使いに行くのでしょう? ならば、ボロを着ていては追い返されてしまいますもの」

「そうか、そこは盲点だった。気づいてくれてありがとう」

 女性ならでは、というより、実務を預かるブランシュらしい細やかな視点が嬉しい。


「それから新商品も必要だよね」

「ええ、当面はそれで稼がないといけません。ここ二年ほど、アラン様はミュゼット号に夢中でしたでしょう? あの試作では大金は動いても、商会としての利益はほとんどなかったのです。実はお父様も、そろそろ新商品が欲しいとこぼしていましたわ」

「……それは済まないことをしたな。試作費用は僕から商会に支払っているつもりだったけど、結局は商会を通して取引先に支払われるだけだものね」

「いいえ、どこにもない物を世に送り出すお手伝いができたのです。その点はお父様も喜んでいるのですよ」

「わかった。なんとかするよ。新商品を出すなら、みんなが困っていることや『あったらいいな』と思うニーズを見つけなきゃいけないね」

「『ニーズ』、ですか。すぐには思いつかないので、私も考えておきます」

「うん、またアイデア会議をしよう。今日はこれでお開きにしようか」

「ええ。夕食にしましょう!」


 こうして、記念すべき第一回企画会議は終了した。

ブランシュと二人だけの会議ではいつの間にかため口になるアランでした。次回は5月4日投稿予定です。

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