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異世界で少年は文明開化を目指す!  作者: ねこじぞう
第一部 男爵領のアラン
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【36】蒸気自動車のお披露目~披露する

いよいよ第一部のハイライト、プロローグでご紹介した蒸気自動車のお披露目とその続きです。

「ご列席の皆様、ご紹介いたします。ご領主のギレム・ド・ロックブリュン子爵閣下、蒸気自動車の発明者のプラード男爵家ご三男アラン様ご登壇ください。」

 司会者に呼ばれギレム様に続いて僕は広場に作られた赤じゅうたんが敷かれた壇に上がった。


「きょうここにこの領、いやこの国で初めての馬なし馬車である蒸気自動車を領民の皆にお披露目する。発明者のアランにはその功績を称えてロックブルン領技師長の役職を授けた。皆から拍手を送ってほしい。」


 来賓や見物人からパチパチバチバチと拍手が沸き起こった。技師長なんてたいそうな役職は辞退したかったんだけどな。とはいえ名誉職であり領都に技術開発の部署があるわけではない。これからは部材の調達に多少無理が利くという効力があるくらいだろう。それと物によっては資金援助が得られそうだ。


「それではアラン技師長の合図でテープカットをしていただきましょう。」

「ご紹介に預かりましたアランです。では行きますよ。3,2,1それーっ」


 その合図と共に領主様と僕はテープ状のリボンに鋏を入れた。テープが切れて中央のくす玉が割れる。色とりどりの紙吹雪が風に舞う。きれいだ。くす玉は僕が作ったんだ。同時に軍楽隊の3人のラッパ手によりファンファーレが奏でられる。ボディーに被せられた緑色のカバーが外され蒸気自動車のピカピカのボディが現れた。どうだい、かっこいいだろう!


挿絵(By みてみん)


 製造を楽にするためにできるだけ構造を簡単にしたので三輪だ。前輪が操舵輪で後輪駆動だ。見た目はダイハツミュゼットに似せて作った。ただしエンジンではないのでボイラーは後部にある。石炭と水は最後部からボイラーに投入する。オール金属や樹脂を使ったボディにはできないので、当然金属と木材の混合だ。強度的にもつところには軽量化も見越して積極的に木材を使用した。


 僕が運転席に乗り込み領主様が助手席に乗り込んだ。蒸気自動車のボイラーはすでに点火されシリンダーには蒸気が充填されている。僕はピューっと鋭い汽笛を鳴らして工房の親方が考案したクラッチをつなぐ操作をして蒸気自動車をゆっくりスタートさせた。試運転で走る街道沿いには衛兵たちが一定間隔で並んで道を空けている。


 世界初の蒸気機関を使った車の運航開始だ。はじめは人が歩く速さくらいゆっくりと、次第にアクセルを開けて速度を増した。試運転の時と違わない走りだ。見物客たちは蒸気を吐きながら走るこの車を両手で口を押え目を見開いて眺めている。子どもたちはキャーキャーと声を上げている。


 この国で初めて馬を必要としない乗り物ができたのだ。車体の重さゆえ速度こそ現状では馬車と同程度ではあるが、生き物である馬の世話がいらないというのは大きなメリットだ。性能向上を図れば航続距離も伸ばせるだろうし、馬力を上げて速度向上や積載量の増加も見込める。まだ測定方法がないが、とにかく1馬力~2馬力の馬車とは比べ物にならない馬力なことは確かだ。日本で最初に実用化された山羽式蒸気バスは25馬力だった。とにかく生物と水力以外の新たな動力源を人類は得たのだ。この国の文明開化の第一歩が歴史に刻まれたのだよ。ハハハ…。


「馬なしの馬車が走るなんて私も全く想像していなかったぞ。乗り心地は馬車より良いくらいだ。」

 と領主様がおっしゃった。サスペンションなんてものは搭載していないし、ゴムタイヤでもないので僕の感覚ではっきり言って乗り心地は悪い。しかし馬車と比べたら今回の試走用に車輪に革を巻きつけているだけましだ。


「ギレム・ド・ロックブリュン閣下、もったいなきお言葉まことにありがとうございます。苦労した甲斐があったというものです。」

 そして僕はさらに付け足した。

「領主様、馬は走り終わった後にすぐ水を飲ませるとお腹を壊しますが、私の『ミュゼット号』は止まった瞬間、ボイラーに水を足しても文句ひとつ言いません。それに、夜中に飼い葉を欲しがって鳴くこともありません。石炭さえあれば、いつでも全力で走れます!」

「そうか、馬は世話に手間がかかるよのぉ。その点蒸気自動車は楽というわけだな。」

「私は領都だけでなく王都、さらには国中に自動車を走らせるのが夢でございます。ゆくゆくは蒸気に代わるもっと優れた機関を発明するつもりです。」

 と僕は答えた。

「ほう、蒸気機関ができたばかりなのに、もう別の方式をとな。お主の行動は予想がつかないな。」


 今の技術で一番早くできそうな蒸気機関を作ったが、蒸気機関はボイラーが大きいので小型化ができない。ガソリン自動車よりも頻繁に給水が必要という欠点もある。燃料精製を考えるとこの世界で入手しやすい植物油を燃やせるディーゼルの方が向いているだろうが、とにかく内燃機関を開発しなくてはならない。そのためには精密加工技術をもっと発展させる必要がある。まだまだ前途多難だ。しかし諦めるわけにはいかない。それがこの世界での僕の存在意義だと思うから。


 領都の目抜き通りの区画を曲がると一回りして元の場所に帰る。領都内でスピードを上げるわけにはいかないから。お披露目の後は、さまざまなテストを兼ねて領都の外のオフロードも走ることにする。


 ◇


 人々の生活を制約している壁の内、移動手段の改善が自動車だ。馬車では時速10㎞がせいぜい。1日10時間走っても100㎞が限界。実際は60㎞程度だろう。道路が整備されていないが時速30㎞出せれば3倍の距離を進める。今日はそれを打ち破る第一歩が記せた。


 他にも薪に頼っている燃料の制約もなんとかしなくては。そこは石炭を探してみようと思っている。また情報伝達の壁もある。手紙を使っていては情報伝達の速さは移動手段の壁に阻まれる。有線電話はすっとばして無線通信、いっそ光通信を最初から考える?文明開化のためにはやることが山積みだ。


次のエピソードでアランはついに魔術を目撃します!

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