【33】印刷が発明されてた~手に入れる~印刷技術で先を越された!?
主要キャラ紹介:●ギレム・ド・ロックブリュン 子爵 ●アラン(大智)男爵家三男 ●ベルナール・ド・ラ・プラード男爵 父親 ●セリア 男爵夫人 ●カミーユ 長兄 ●シャルル 次兄 ●クリステル 妹 ●コレット メイド ●アリス メイド見習い ●ブランシュ 家庭教師 ●ジョゼフ 執事 ●シルヴァン 庭番 ●マノン メイド頭 ●カイル・ヴァン アランの護衛●ピエール 店長 ●レイモン 商会長 ●エリーズ ブランシュの母 ●メートル・トマ 親方 ●ルナール ライバル商会長
「おーいアラン、すぐに降りて来なさい。」
ある日のこと。屋敷の中で大声を出すのは恥ずかしいことなのに、父様と来たら帰宅して玄関ホールに入るなり叫んだ。よほどの大事なのかと僕は慌てて駆け下りた。ブランシュ先生も後から降りてきた。
「父様、何事ですか?」
「アラン、これを見ろ!」
父様が1枚の紙を僕に手渡した。A4くらいの大きさの黄みがかった紙にびっしりと文字が書き込まれている。羊皮紙じゃない。和紙に似ているが和紙より目が細かい。繊維の長さが和紙よりも短いのかも。コピー用紙ほど品質は良くない。そういえばこれってどこかで見たような。そうだ!レイモン商会の緩衝材に使われていた紙だ。あれは植物紙だったのか。まさか発明者はマイ〇じゃないだろうね。
文字の方はというと手書きの文字なのだが、普通のインクペンで書いたものではないようだ。先生も興味深そうにのぞき込んでいる。
「これはな、かわら版というものだそうだ。最近王都で売り出されたらしい。月に1~2回発行される。」
「あ、その紙はうちの商会で見ましたね。私が家にいた頃にはなかったのですけれど。書かれている内容が珍しいのでしょうか?」
と先生が聞いた。
「いや、そうではないのだ。手書きで写本のように写しを作って業界の情報をそれなりの値段で売っているものはある。そうした版元の一つが手書きではなく何枚も同じものを刷れる”印刷”という方法を編み出したそうだ。」
「ええーっ!」
僕は思わず声を上げてしまった。
「アラン君、どうかしたんですか?」
「いえ、僕も似たようなことができないか前から考えていたもので。」
この世界にも新聞ができたのか。しかも印刷!どうみてもガリ版印刷に似ている。謄写版方式をこの世界で発明した人間がいるってことだ。考えてみれば地球でだって色々な発明家が様々な品を作り出したのだから、この世界だって天才がいてもおかしくないか。
「それはこのかわら版だけにとどまらず、社会を変える可能性がありますね?情報の流通に革命がおこります。」
横からのぞき込んでいたブランシュ先生が言った。さすが目の付け所が違う。印刷技術の発明は世の中に与えるインパクトが非常に大きい。これまで写本や木版画に頼っていた高価な本が、安価に多数つくれるようになるのだ。また、新聞が国中にいきわたれば、新技術をはじめとする様々な新機軸が知れ渡り、さらに改良されて進歩が加速することは間違いない。人々の世の中への関心も高まるだろう。マスコミの誕生だ。知識の集積と広がりは社会の進歩を早める。マスコミはその触媒となるのだ。誰がそこに目をつけるのかな。僕の文明開化推進にも大いに役立つはずだ。世界初の雑誌の発刊なんてのも楽しそう。日経PC21やMac fanを愛読している僕はほくそ笑む。
「やっちゃえ アラン!?」
どっかの車のCMかい!
「オレはメディア王になる!」
どっかのコミックかい!
とセルフ突っ込み入れつつ真面目に考えてみる。雑誌にしても地球の日曜版の新聞にしても毎月や毎週の締め切りがある印刷物の発刊は大変だと思う。取材⇒記事起こし⇒編集⇒版組⇒印刷⇒配送⇒発売というサイクルを発行日までに必ず回さなくてはならないのだ。片手間ではできない。「それは誰かに任せよう」とあきらめる。
そこで僕はあることを思いついた。男爵領には森や林がある。異世界で本を作るアニメでも製紙業を立ち上げていたけれど、うちの領でも製紙業を始めるのはどうだろう。今後有望な産業だからこの領を豊かにすることができる。すでに植物紙があるのだからより高品質のものを目指したい。あるいはより大量生産する製造技術とかね。構想だけでも練り始めよう。まずはパルプ作りだよね。木材を石臼で挽つぶして繊維にするところから始めなくちゃ。いや、この紙を作ったところと技術提携できないかな。技術提携という概念がないから難しいだろうか…。ブツブツ。
と妄想に浸っていたら
「何をわけのわからんことをつぶやいているのだ。で、どうなんだアラン。お前はどう思う?」
おっと、心の声を口にしてしまっていたか。
「先生の言う通りでしょう。これは世の中を大きく動かす発明です。当のご本人が気が付いているかどうかわかりませんが。うちの領にも必ず関わってくる技術だと思います。」
「おお、そういう反応をするだろうと思って、無理を言ってバックナンバーを銀貨1枚で譲ってもらってきたんだ。その甲斐があったな。」
父様も新しもの好きなので嬉しそうだ。
「何か面白いことを思いついたら教えるのだぞ。」
そう言って父様が笑った。
「そうですよ、アラン君!」
先生にダメ押しされてしまった。
いやあ製紙と印刷技術の開発はアランではない他の誰かが手掛けていたんですね。技術提携も考えるなら、いずれ関わりが出てくるのでしょうか。




