表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で少年は文明開化を目指す!  作者: ねこじぞう
第一部 男爵領のアラン
33/53

【31】部品の製作~試作する~試行錯誤の積み重ね

いよいよ蒸気機関の実物を作り始めました。当然トラブルはつきものですよね。

異世界で紙を開発する小説でもパピルスや粘土板、木簡など過去の文明の進歩を辿って植物紙に行きついたので、最終製品のイメージを持っていても、必要な素材や部品や装置を製作できなければ最終形にはならない。


前世日本でも一点ものの試作に長けた技術を持つ町工場がロケット部品を作っていた。この世界でもたった1台の試作なら削りだしでもなんでも力技でこなせるが、同じものを複製するとなれば別だ。同じパーツをいくつも作らなくてはならない。だから本当はここからが大変だ。前世のような金型が存在しないのだから。


ただこの世界でも武器が中心ではあるが鉄製品が存在するので前世のような大量生産は無理でも複数台の製造はできるはずだ。移動できる大砲もあるので、ある程度の機械的な機構も存在する。また鋳物の技術もある。


鋳造とは鋳物の型に溶けた鉄を流し込んで形を作る製造方法だ。例えば木で作りたいものの原型をつくって、それを粘土か固めた砂で象り木型を抜き取ってそこに鉄を流し込んで作る。だから部品の形を考える時には、型から取り出す際に型が壊れないような形状を考慮する必要があるのだ。なんでそんなことを知っているのかって?フィギュアの造形の記事を雑誌で読んだことがあるのだよ。ワハハ。


台車レベルの機構より複雑なメカニズムとなるので、工房のメートルと打合せをした。予想通り鋳鉄で部品を作ることはできる。可動部に必要な精度を木型で作るのはやはり無理だという。鉛で部品の模型を作って、砂の方に入れ熱を加えて溶かして空洞を作る方法も検討したが、それだけの鉛を用意できないのであきらめた。


木型で成形した後でやすりで削るなどして寸法出しをすることになった。大量生産するのでなく何台かを作るのならばそれでも構わない。量産試作品を見たこの世界の人が製造方法を考えたり製品を改良して大量生産できるようにすればいいだろう。それで部品の製作に取り掛かってもらった。



「坊ちゃん、どうにもいけねぇや。組み合わせるパーツを組んでみたんですが、上手くはまらなかったり動きが渋かったりするんでさぁ。狙った寸法が出ないときた。もっともこんな細かい精度で物を作ったこたぁないんですがね。」

部品製作で壁にぶつかったという連絡をメートルからもらって僕は工房に飛んで来た。


「2つの課題があるのかもしれません。1つは部品の収縮の問題です。」

「部品の収縮?ピンとこねぇな。」

「えーっと、出来上がった部品が縮むんです。」

「あ、それね。鉄が冷えると小さくなるのは知ってまっせ。いかんせんその程度が日によって違うっていうか…」

「ああ、それは一口に鉄と言っても、原料の産地や不純物、混じり物の割合が違ったりするんですよ。またその日の気温によっても変わる可能性があります。何より今回の部品は大きいので収縮の割合の変化が無視できないのでしょう。だから、その材料がどのくらい縮むのかを前もって確かめてから縮みを考えて木型を手直しする必要があると思います。」

「なるほど、そこまで考えられるなんてさすが坊ちゃんですぜ。」

データを蓄積して条件出しをするのは品質管理の基本だしね。


「もう1つは、バリですね。」

「バリ??」

「ほら、ここを見てください。上下の型の合わせ目に薄い平たい部分が付くでしょう。それが勘合部分や摺動部分に残っていると寸法が出なかったり動きが渋くなったりします。」

「なるほどね。確かにここにバリが残ってますね。」

「今言った2つの問題も、場合によっては同じ手段で解決できるかも。」

「それはどんな方法です?」

「収縮したとしても必要な寸法を下回らない大きさで仕上がるようにします。つまりほんの少し大きめに作る。そしてできたパーツをやすりで磨いて寸法出しをするんです。バリもやすり掛けで取ります。やすりはありますよね?」

「なるほどやすりは昔っから使ってまさぁ。これならなんとかできそうだ!」

「解決の糸口がつかめて良かったです。」



試行錯誤の上ついにボイラーと蒸気ピストンが完成した。次のステップは水平運動を回転運動に変換するクランクだ。でもこれは前世の自転車にも使われているので複雑なものではない。もちろんチェーンドライブは難易度が高いので金属の棒をピストンにつなげるのだが。結節点が摩耗しないように潤滑油を注すようにして、動きが渋くならないかつがたつきがない微妙なクリアランス(隙間)の調整に時間がかかった。



なんとか蒸気機関単体で車輪を回すところまでこぎつけた。あとはボディに組み込むだけだ。完成が待ち遠しかったが、結局は2年かかってしまった。さすがに複雑な機構はフォトメモリーを使ってもどうにもならなかった。この世界のメートルをはじめとする職人の創意工夫によるところが大きかったわけだ。産業のすそ野が広くないと産業革命や文明開化は難しいな。

さて、心臓部ができたらあとは車体に組み込みます。でもパーツが大きいので、そんなに広い場所が確保できるのでしょうか。

ちょっと機構の話が続いてしまいましたが、ここは外せないのでご容赦を。津語のepではアランとブランシュの甘いシーンが描かれるかも?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ