【30】ピストン~図解する~ボイラーの次はピストンだよね
アランの蒸気機関づくりは次ステップに向かいます。
ボイラーは試作が進んでいる。色々と壁にぶつかっていてもその都度なんとか工夫を凝らして乗り越えて来ている。その分お金もかかっているのだけれど。ネコ車と台車の利益の中の僕の取り分でなんとかまかなえている。
ボイラーができてからでは遅いので次はピストンの製作準備だ。その前にまず仕様書を作らなくては。この作業は先生にも手伝ってもらおう。商会で取り扱っている色々な商品の知識を貸してもらいたいから。
「先生、上下運動を回転運動に変える仕組みってご存じですか?」
「麦を脱穀するのに水車の回転を杵の上下運動に変えているの。工房でも作ったことがあるから、それを逆にすればできるんじゃない?」
って先生すごい!それなら車輪を回す蒸気機関がつくれるじゃないか。でも、まてよ。脱穀を水車でやっているってことは、川辺や水路の傍でしか脱穀ってできないのか。蒸気機関が作れれば丘のどこでも脱穀できるから、作用を逆にする必要もない。蒸気で上下するピストンを作ればいいんだ。
とは言うものの簡単にできるはずはない。小学生の頃に図鑑で見た蒸気機関車の仕組みを思い浮かべる。
「フォトメモリー!記憶よ甦れ!」
蒸気を溜める円筒形のシリンダーというのがあって、シリンダーの内側をふさぐような円盤に棒が付いたピストンが上下する。そしてピストンが下がりきった時にシリンダー内の蒸気が排出されて凝縮器に送られ空気で冷やされると水に戻る。するとまたシリンダーの底の方から蒸気が送り込まれる。これが連続して上下に動くのが繰り返す仕組みだった。ここまでの構想を先生に伝えると
「凝縮器に蒸気を送り出す部分に弁がないと冷たい空気が逆流しちゃうかも。」
って先生マジ有能なんですけど。この人エンジニアに向いているのでは?現代日本だったら絶対にリケジョだったはず。
現代の材料や工作機械があればさほど苦労しないで作れるだろうけど、この世界の工房でこれができるのだろうか。開発費もかかりそうで、玩具や台車などの売り上げの副収入があるとはいえ、僕のポケットマネーだけでは正直苦しい。ボイラーで精一杯かも。父様にお願いするのは心苦しいが頼んでみよう。何しろ領主様に作ると明言してしまったので。
高温の蒸気を扱うのはボイラーと同じだから問題ない。やはり上下する摺動部の摩擦と密閉性のトレードオフが難しそうだ。ここは何度も材質を変えて試作することになりそう。そもそも記憶の図解そのものを作るのは無理だよね。あれこれ考えるのは後にして、とりあえず図面の作成に注力しよう。
なんとかイメージ図と必要となる部品のポンチ絵=マンガを描きあげた。
「先生、ボイラーの次に必要なピストンの図面を書いたので見てもらえますか?」
「えーと、これは前回より難易度が高そうですね。このグルグルとぐろを巻いたコンデンサーというのは、蒸気を冷やす役目をしますよね?ここも次第に温度が上がって、蒸気が冷えにくくなるのではないかしら。」
先生はよくわかってらっしゃる。
「そこは要検討ですね。空冷、つまり空気で冷やし続けられるかどうかですね。放熱の効率を上げる方法が必要かもしれません。」
もしかすると前途多難かもしれない。僕の頭に不安がよぎった。
蒸気機関って調べるとなかなか技術的に色々な要素が詰まっているんですね。
新キャラが出てくる部分を書いているのですが、登場までもう少しかかります。




