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異世界で少年は文明開化を目指す!  作者: ねこじぞう
第一部 男爵領のアラン
31/50

【29】嫌な夢~うなされる~アランは前世の悪夢を見る

ブランシュ先生が実家に帰ってしまわなくて良かったです。一方それで不安を感じたアランは…。

 昼間にブランシュ先生が家庭教師を辞める可能性を持ち出したのがアランは気にかかっていた。そうだよね、先生はもう成人したんだもん。デビュタントでの評判も良かったし縁談もたくさん舞い込んでいるはずだ。いつまでも僕の側にいてくれると思ったら大間違いだと気づいた。


 昼間は必死に引き止めちゃったけど、本当にそれで良かったんだろうか。彼女にとっての幸せはここにいることではないのかも。それで思わず「10歳まで」と言ってしまったが、本心ではその先も彼女抜きでやっていくことは考えられない。不安がぐるぐると胸の中に渦巻いている。その夜久しぶりに前世の夢を見た。


 ◇


「大智、このテストの点はなんなの?あなた、アニメばかり見すぎじゃないの?今度も同じような点数だったら1組から2組へクラス替えになってしまうわよ。」日曜日の遅めの朝食を久しぶりに家族3人で食べているときに、お母さんが言った。ご飯時にそんなことを言い出さなくてもいいじゃないか。ホットケーキの味がしなくなる。


 ああ、これは4年生の秋ごろだ。秋アニメがスタートして、どれを見続けるか考えていた頃。だからテレビを見る時間が増えちゃったんだよな。それで塾の勉強復習がおろそかになって月例テストの結果に響いたんだった。

「そんなんじゃ、中学受験に失敗するんだからね。私が仕事で遅くなるからってたるんでいるなら、毎日帰ってからノートをチェックしますからね。」

 そうだ、小学校の保護者会などで他のママから中学受験について聞かされたお母さんは、あわてて僕を駅前の塾に入れた。入塾テストの成績が良かったので春から一番成績上位の1組にいる。クラスが1組から4組まであり月例テストの成績によってクラスが上下する。クラスの中で成績が下位に落ちるとクラス落ちの危機となり、親が必死になる。塾に入ってからのお母さんは厳しい顔しか僕に見せなくなった。


 一方でお父さんはと言えば、会社のプロジェクトリーダーを任されるようになり、朝から夜遅くまで仕事をしていて、平日はほとんど口をきいたことがない。共働きでお母さんもフルタイムのキャリアウーマンなので、話をするのは朝食のわずかな時間と、帰宅してから寝るまでの間だけだ。


「この子アニメばかり見ているんですよ。お父さんからも何か言ってやってくださいよ。」

「まだ4年生だし、少しくらいいいんじゃないか?」

「何言ってるんですか。早い子は3年生いえ1年生から塾にかよってるんですよ。近くの公立中学は荒れているって聞くし、この子の将来を考えたら甘やかしたらダメなんです。」

「そうか。大智、アニメを見るなとは言わないがほどほどにな。勉強の手は抜かないように。」

 お父さんはお母さんに頭があがらないものだから、そうやって適当なことを言うんだよな。僕が受験したいなんていつ言った?みんなが行っているからあなたもって半ば無理やり入れられたのに。お母さんはよく「あなたのため」って言うけど、世間体を気にしている自分のためなんじゃないかって思う。


 唯一塾に入ってよかったのは、アニメ好きの友達ができたこと。学校ではアニメの話と言ったら名探偵〇ナンとかドラ〇もんなどの夕方アニメの話ばかり。深夜アニメを録画してみている小学生は少ない。やっぱり僕はオタクなんだよな。


 ◇


 場面が変わって夜。お風呂に入ってパジャマに着替えて、寝る前のわずかな時間に録画したアニメを見ようとHDDレコーダーの電源を入れようとして僕は目を見張った。ない!レコーダーがない!まだ見ていないアニメが何本もある。僕は真っ蒼になって

「お母さんHDDレコーダーがないんだけど知らない?」

「ええ、知ってるわ。あなたの成績が戻るまでレコーダーはしまっておくわ。だから頑張りなさい。」

 そんなのあんまりだ、ひどすぎる。

「うわぁーーー」

 僕は頭に血が上り癇癪をおこして地団太踏んでテーブルの上のティッシュケースを床に叩きつけた。

「お母さんのバカ!」と叫んで自分の部屋のドアをバタンと大きな音を立てて閉めワンワンと大声で泣いた。久しく泣くなんてなかったのに我慢ができなかった。


 ◇


 そこでハッと目が覚めた。自分の目頭が濡れている。夢を見ながら泣いていたのか。そうだ、あんなことがあったっけ。考えてみたらこっちの世界の方が恵まれている気がする。元の世界よりも人間関係が密接で自分の存在意義が強く感じられる。この不安な気持ちは僕を子ども扱いしないブランシュ先生がいなくなるかもという話がきっかけだったけど、彼女だけでなくこの世界で大切な人がたくさんできた。

「ああ、僕は今、本当に『生きている』んだ。誰かの期待に応えるためじゃなく、僕自身がワクワクするために、そしてそれを笑ってくれる仲間たちのために」

 夢の中で感じた冬のような冷たさから、こちらの世界に目覚めて春が来たかのような温かい気持ちに包まれた。

中学受験する小学生家庭のあるあるですね。

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