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異世界で少年は文明開化を目指す!  作者: ねこじぞう
第一部 男爵領のアラン
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【27】ボイラーの製作~沸かす~やかんで湯を沸かすようにはいかないね

さて蒸気機関に必須のボイラーの設計を打ち合わせるよ。

 僕と父様はまだ領都にいる。領主様に蒸気自動車のことを話してしまったので、実験機を作る必要が出来たからだ。父様に話してレイモン商会のメートル・トマと打合せをしたいと言って工房に来ている。


「メートル、レイモン商会でネコと台車を共同開発して製品開発の経験を積みました。いよいよ前からやりたかった蒸気機関に取り掛かりたいのです。領主様にも大見得を切ってしまったので。」

「蒸気機関とはどんなもんですかい?」

「簡単に言うとお湯を沸かす時の湯気=蒸気の力でものを動かす仕組みです。」

「そいつぁ面白そうでんな。」

 僕はヤカンの蓋の上下運動から真っ先にピストンを思い浮かべたが、よく考えればその前にやるべきことがある。ボイラーだ。湯を沸かすのは誰でもするが、湯を沸かしてその蒸気を閉じ込めて圧力を高めるのは初めての試みだ。


「まず手始めにお湯を沸かす装置を作ります。物を動かすにはヤカンのようなものでは駄目で、吹き出す蒸気の力を閉じ込める容器が必要です。これをボイラーと言います。それを作りたいんです。」

「どんな仕組みになるんですか?」

 高い圧力を得るには密閉した容器が必要だ。しかも強度のある。この世界で作るなら銅か鉄だろう。加工のしやすさからすると銅製の火室(燃焼部)と伝熱管を鋼鉄の外殻で包むのが良さそうだ。


「言葉で説明するのは難しいのでこの図面を見てください。」

 と僕はフォトメモリーで百科事典から写した図をメートルに見せた。


挿絵(By みてみん)


「ひとつ問題があります。上に取り付けた筒と上下に動く部分=シリンダーの隙間から蒸気を漏れなくする方法です。詰め物=パッキンをどうするかなんです。天然ゴムはありますか?」

「天然ゴム?一体全体そりゃなんですか?」

「特定の木の樹液を固めたもので弾力があって比較的熱にも強いものです。」

「聞いたことも見たこともないでさぁ。」

 やはりこの世界にはまだゴムはないのか。


「シリンダーっちゅうとこには油を馴染ませた牛革が使えそうですよ。熱に強い油ならいけるでしょう。他の部分には鉛を挟んで締め上げたらどうですかね?鉛は柔らかいから隙間を埋めてくれるんじゃ?」

「さすがメートル!それで行きましょう。」


「他の仕組みはどうなってんです?」

「レバーと錘は安全弁です。圧力が高まりすぎると破裂してしまうので、錘の重さよりも圧力が高まったら自動で蒸気を逃がす仕組みです。この丸いものは蒸気圧計で蒸気がどれくらい溜まっているかを目で見えるようにするものです。これの設計図は帰ってから描いて送ります。」

 安全弁は料理用圧力鍋にも付いていたので具体的にイメージできる。

「右端のホイッスルというのは呼子のような笛のことですよね。坊ちゃん。」

「そうです。手動で蒸気を逃がす時に音が出るようにして、注意を促します。」

「なるほど、よく考えられてらぁ。大体わかりやした。すんなりとは動かねぇでしょうがそこは職人の腕の見せ所。なあに試行錯誤しながらやってみやすよ。」


 ◇


 圧力計の仕組みも百科事典から引っ張り出す。口で吹いて伸びたり縮んだりするピロピロの原理で、圧力によって伸び縮みする丸い管を使うのだ。ブルドッグじゃなかったブルドン管と言うのだ。そして蒸気をそのままブルドン管に通すと熱で壊れてしまうので、気体の間に水の層を挟んで間接的にブルドン管を動かすのだ。


 実用的な物を作ろうとすると、こうした安全対策も必要になってくるのだな。前世の自動車というのはとんでもない技術の塊だということに改めて気づかされる。他にも細かい部品が必要になるだろうが、百科事典にはそこまで書いていない。原理を説明して後は、メートルたち職人の創意工夫と試行錯誤に任せよう。メートルもそう言っていたし。物づくりって失敗を重ねて完成させるものなんだね。

ボイラーが完成したら蒸気機関に王手がかかるね。とは言うものの何か月あるいは年単位の時間が必要かも。

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