【閑話1】ブランシュの成人式~まるで女神様のように美しい
閑話として書いていたブランシュのデビュタントのエピ、やっとできました。こうした華やかな場面を描くのって難しい。
きょうはブランシュ先生の成人を祝うパーティーだ。商人の娘としてのデビュタント。貴族のものと違うのは、主要な招待客が商人ギルドの幹部や同業の経営者と年頃のその息子や娘だ。もちろん有力取引先の貴族も招待する。たとえ商人であっても恋愛結婚は珍しく、やはり人脈作りに子の婚姻が利用されるのでデビュタントは大切なイベントとなる。
レイモン商会の芝生の中庭にテーブル席を並べてのガーデンパーティーだ。会場中が白い蘭の花で飾られ、金色の燭台が輝いて豪華な雰囲気。レイモン商会の意気込みがかじられる。貴族のデビュタントみたいな社交ダンスは踊らないので多少足元が心配な屋外でも大丈夫だ。
食事はビュッフェスタイルの立食パーティーだが40人くらいが座れる丸テーブルと椅子席が用意されている。招待客も随時来て随時帰りして入れ替わるので数は十分だ。料理やワインはもちろん最高級。さらに、商会が扱う異国の珍しい織物や香料と僕が考案した最近の新商品シリーズがさりげなく展示されている。成人式でありながら「商会のプロモーション」も兼ねるところがさすがだ。BGMを流す楽士が四重奏を奏でている。
パーティーはブランシュ先生の父親であるレイモンが歓迎の挨拶と娘が成人になった旨の口上を述べて式次第が始まる。主賓と主要ゲストの祝辞があり、ひとまず食事タイム。前世で出た親戚のお兄ちゃんの結婚披露宴みたいだな。ゲストが軽くお腹を満たしたころに、真打登場!ブランシュ先生がこの日のために新調した輝きのあるシルクのホワイトドレスを身にまとって登場した。型筋から胸元まで開いたデコルテというやつ。銅色の髪はハーフアップにしている。アンティーク調のブロンズの枠に先生の瞳の色に近いグリーンガーネットのペンダントを首にかけていて、先生が歩くとキラキラ光って美しい。
「わお、なんてきれいなんだ。」
思わず口からこぼれてしまった。元々美人なのに特別に磨き上げたその姿はまるで女神様みたいだ。会場にいる若い男子だけでなく妻子持ちのおじさんたちまで虜にしてしまう。こりゃあ縁談がひっきりなしに舞い込むことになりそうだぞ。僕はなんだか胸の内がモゾモゾした。なんだろうこれ。やきもちとは違う気がする。もしも自分に姉がいて、彼女が周囲から値踏みされる場に居合わせたら感じる複雑な気持ちと同じなのかな。中身思春期の僕にはよくわからない。
「皆様、本日はお忙しい中、私、ブランシュの成人の儀にお集まりいただき、心より感謝申し上げます。これまでは両親の庇護のもと、商会の屋根の下で、あるいは書物の中の知識を追うだけで過ごしてまいりました。しかし、近年一人の尊敬できる少年との出会いが、私の世界を大きく広げてくれました。」
えっ?今ちらっと僕の方を見た?
「商いとは、単に物を右から左へ動かすことではありません。それは『新しい価値』を届け、人々の暮らしを、そしてこの国の景色を変えていく力です。私は今日、大人としての第一歩を踏み出します。至らぬ身ではございますが、今後ともレイモン商会、そして私ブランシュを、厳しくも温かく見守っていただければ幸いです。本日は、誠にありがとうございました。」
おお、ブランシュ先生の挨拶は実に真面目だ。ちょっぴり冒険心が溢れ出ちゃったね。新しい価値の創造か。僕のやりたいことを言語化するとそうなるのだと先生に気づかされた。先生は僕のこと『尊敬できる少年』って言ったよね!顔から火が出そうだけど嬉しい。僕も先生と一緒にこの世界に新しい価値をどんどん加えていきたいな。
さて次のepは本筋に戻って子爵様との面会です。




