【19】ネコ~発明する
誘拐事件を切り抜けて、アランはいよいよ玩具ではないものを作ろうとするようです。
僕は8歳になった。人々の役に立つものを作るのが当面の僕の目標だから、そろそろ玩具ではない実用的なものを作ってみたい。以前から最初に作るものは何がいいか思案していたんだ。そこで『ネコ』だ。ネコと言っても生き物ではない。一輪車のアレだ。ネコ車とか単にネコと呼ぶ。この世界では荷物の運搬手段は限られている。距離があれば馬車を使う。もう少し近ければ牛や人が引く前世のリヤカーのようなものがある。でもそれはある程度まとまった量の荷物用だ。
人が一人でできるだけ多くの物を運べる、前世でネコと呼んでいた手押しの一輪車に相当するものは農村でも見たことがない。以前に見かけた農夫が抱えて運んでいた土入り麻袋などの不定形なものを運ぶのにも便利だし、収穫した野菜なども量が多くなければ十分運べる。またネコのいいところは畑などの柔らかい土の上でも使いやすく、しかも方向転換がしやすいという点。小回りが利くのだ。そして手前側にストッパーがあれば、手を放しても転ばない。三点支持にできるから。
ネコなら今ある技術で作れるだろう。馬車よりは小さめの車輪の付いた手押し台車でいいのだから。工作は得意だったので簡単な図面やイラストが描ける。いやイラストというほど立派なものじゃないマンガみたいなもの。イメージ図?この世界にはないからマンガでいいや。
「メモワール!」
フォトメモリーを検索するための言葉を唱えた。もちろん魔術じゃないんだから詠唱は必要ないんだけど形だけ真似た。なんでフランス語かって?そりゃ英語よりかっこいいじゃん。それに領地や人の名前がフレンチ風だからそれに合わせてみた。本当は「メモワール フォトグラフィーク」と言いたいけれど、ちょっと長ったらしいよね。「愛のメモリー」ってささやくとか?『松崎しげる』かよっ!
百科事典のネコの写真を思い浮かべて描いたマンガを庭師のシルヴァンに見せた。
「シルヴァン、こういう道具は見たことがあるかな?手で押して農作物とかを運ぶんだけど。」
「いえ、アラン坊ちゃん、このようなものは見たことがありません。農家でも使っていないと思いますよ。」
「土とか芋とかを載せて運べるんだけど、あったら便利だと思う?」
「腕で抱えて運ぶときは、いちいち籠や袋に入れているので、そのまま載せられるならたいそう役に立ちそうですよ。」
という返事。
ブランシュ先生にも見せた。
「アラン君、これは面白い発明ですわ。小回りが利く手押し車。製作も難しくなさそうです。実家で試作してみましょう!」
先生はにっこりして
「今度の日曜日のお休みに、私の実家に来てみませんか?職人に紹介しますよ。」
初めてなのでやはりマンガを見せるだけでなく、職人に直に説明が必要とのこと。電話もないこの世界では問い合わせに答えるのも簡単じゃないものね。大きさのイメージも伝わらないし。父様にお許しがもらえるか聞いてみることにした。
アランは男爵の許可を得て領都へ向かえるのでしょうか?
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