表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/28

十七話 「王」


「私は魔王四天王『ルシウス』と申します。エヴァルシオン様、貴方様を、新たな『魔王』としてお迎えに上がりました」


 ルシウスは、止められた世界の中で、魔王へと頭を下げる。

 伏せられた表情かおは、不気味な笑みを浮かべていた。


(やはり……初代魔王はもはや木偶でく。今、恩を売るのが得策ですね)



 魔王は、ルシウスと、固まった四人の騎士を交互に眺める。

 四人は、ルシウスの姿を見た瞬間、真っ青になって震えていた。

 あれほどの術者だったエレン(神官)は、もはや目をかっ開き、大粒の涙を溢れさせている。


(……『ただの強者』に対する恐れ方ではないな……)


 魔王は、ルシウスを冷たい目で見下ろした。


「……お前、あの四人の中で二人殺していいと言ったら、どうする?」


 ルシウスは、その質問の意図を直ぐに察知した。


(『品定め』……ですか? 随分余裕ですね……ならば、こちらも貴方を品定めさせてもらうとしましょうか)


 ルシウスは、少し笑いを交えながら続ける。


「そうですね……男二人、ですかね」


「……何故?」


「男の悲鳴に需要ありますか……?」


 魔王はルシウスのその答えを聞いて、吹き出した。


「ふふっ……ハハハハハハ……!! お前、嫌いじゃないぞ」


「……ありがとうございます。では……」


 ルシウスは指をパチンと鳴らす。

 すると、場の停止した時が動き出した。



「いやぁぁぁぁっ!!!!」


 その瞬間、エレンの悲鳴が響いた。

 ルシウスはゆっくりと立ち上がり、四人を見て舌舐めずりをした。


 その異様な光景を、村人全員も硬直し傍観する。


 ルシウスは、騎士達へと一歩を踏み出そうとする。

 しかし、魔王はその全てを無視して続けた。


「嫌いじゃないが……誰がおもてを上げていいと言った?」


「えっ」


 ルシウスは驚き、魔王へと視線を移す。

 その瞬間、ルシウスは直ぐに頭を下げた。

 『跪け』と言っているのを、本能で感じた。


(な……私は……!? ……何をした……?)


「……お前……ここが何処だか、理解出来ているのか……?」


 魔王はルシウスを見下しながら、零度の声色で言い放った。


「『魔王の御前だぞ』」


 ルシウスの身体が、ビクッと跳ね上がる。

 もはや溢れる冷や汗を、誤魔化す事は出来なかった。


 それを見ると、魔王は「フン」と鼻であしらった。


「不敬にも薄汚い欲望をこの場で吐き散らした罰だ。お前に俺を直視する権利は無い」


「っ……!!」



 自らより圧倒的に弱いものに、初めて恐怖を覚えた。

 長らく『あの』魔王と接することで忘れかけていた、『本物の王の威厳』。

 それを、身を持って思い知らされた。


 魔王は、さらにふっと笑った。


「そうだ……悲鳴が聞きたいんだったよな? ……ならば、お前には誰の悲鳴も聞かせてやらん」


 魔王は、立ち尽くす四人の騎士達へと視線を移す。


「帰れ」


「……えっ」


 魔王のその言葉に、一同は呆然とする。

 魔王は、その反応を無視して続けた。


「……そうだな……俺をたおしたくば、次は『勇者』でも連れてこい」


 怪しげに笑う魔王に、一同はもはや畏敬すら覚え始めているのを感じた。



 本来ならば、魔王四天王 ルシウスに殺害されていた。

 いや、殺されるだけでは済まされなかった。

 エレンの耳には、彼に陵辱された姉の悲鳴がこびりついている。


 だが、目の前の『怪物』は、あのルシウスすら喰った。


 もはや、四人は何も答えなかった。

 ただ、言われるがまま、魔王に背を向け、震える身体を抑えながら歩いていく。


 その様を見て、魔王は嗤った。


「敗北の凱旋か……良い眺めだ」



 それは、あの騎士達を嘲笑うと共に、自分自身を笑っていた。

 魔王は、奇妙な感覚を覚えていた。


 あの四人に『禁術』が通用した時、ついに見出した勝機に興奮した。

 しかし、同時に少しの落胆と寂しさに似たモノを感じていた。


(そうか……俺は、何もかも捻じ伏せられて、完璧に負けられないと、満足出来ないのか……)


「はっ……」


 魔王は、未だ頭を下げ続けているルシウスへと向き直る。


「……悪かったな。変態は俺も同じだったようだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ