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異世界転生2257  作者: 自彊 やまず
第七章 警察庁動乱編
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第百十四話 暴力の濁流➂

「こちらアレックス……へへへ……何とか偵察できたよ。今からベースに戻る」


 クリスの携帯から聞こえてきたのはアレックスの声だった。


 暫く心配していたのは、彼女の事だった。

 昨夜スマホを一台渡し、作戦が終わればここに掛けてくるよう言っておいたのだった。


「了解、気を付けて帰って来いよ」


 



 同刻――。


 カシムは揺れる馬車の中で、フードを被った一人の青年と向き合っていた。


「私とゼリク様の発明品がノコノコと戦場に来て……バレるに決まっているでしょう?」


 護衛はほとんどついていないのを見るに、正面に座った男に相当な信頼を寄せているのだろう。


「これで情報戦はこちらが一手先。警察庁には増援を――」


 馬車が揺れ、カシムの持っていたワイングラスが大きく揺れる。

 真っ赤な液体が服に零れた。


 それを意に介さず、カシムは手を広げた。


「そしてステティアのネズミの巣には――我がビサ軍の全てを!!」


 青年がフードを外すと、左頬に付けられた傷が露わになる。


「これが最後の戦いですね……もはや暴力の濁流――互いの全戦力での殲滅戦になるでしょうから」


「そうだ。存分に暴れてこい……マンナズ……リベンジに燃えているだろう?」


「はい――カシム様」





 アレックスとクリスはテントで待機。

 強襲部隊に加わるアダムとシトラスは、コート、フードで正体を隠して、旅芸人に扮した革命軍に紛れた。


「行ってくるよ、アレックス……」


 シトラスが煙草を捨て、補給班にいるアレックスへ頷いた。

 そのまま革命軍の面々はキャンプ地を離れ、街へ歩き始める。


 本隊がテントを離れた後、アレックスがクリスに声をかけた。


「クリス。シトラスたちにはもう伝えたが、警察庁の中にカシムがいた。門から出て行くのを確認している」


「カシムが――?」


「今は中にいないはずだが……何か企んでいる気配があるんだ」


 それを聞いたクリスは、口元に手を当てて思考を巡らせる。


――クロノス本部への襲撃か?いや、あり得ない。


 教徒が集まるクロノスを、わざわざステティアで潰す理由がない。

 民の反感を買い、革命軍を利するだけだ。


――反乱分子を殲滅することができない限り。


 だが、アロンの裏切りによって本部の所在が露見しているのも事実。


 クリスは短く息を吐いた。


「……分かった。本部で動きがあれば、即座に連絡を寄越すよう伝えておこう。アレックスはここで待機して、連絡は君に入るよう手配してくれ」






「進めェ!!」


 丁度太陽が南中を始めた頃、戦いの火蓋は切られた。

 アダム率いる革命・クロノス教徒軍約300が警察庁へ雪崩れ込む。


「行け!行け!下のフロアは事務員や人族、獣人族しかいないはずだ!一気に駆け上がれ!」


 アダムが叫び、それに呼応するようにどんどん革命軍が警察庁を制圧していく。


「手を挙げろ!大人しくすれば危害は加えない!」


 革命軍の数人は革命軍とクロノス教共同開発のマスケット銃を持ち、その他大多数は銀製の槍を手に、警察庁内の職員を捕縛していった。





「クソ!クソクソクソクソクソ!まさかここまで速いとは!偵察から一日も経っていないぞ!どうしてここまで速く来れた!」


 エクスが拳をテーブルに叩きつけると、大理石製のテーブルがバキバキとひび割れる。


 アオイが顔を顰めて、テーブルから少し下がった。


 冷静な彼女はエクスをなだめ、彼女なりの推理をエクスに伝える。


「敵は“銃”を持っている模様。恐らく、各地で問題になっていた革命軍の仕業。であればテロリストのクリス、カシム様の仰っていたクロノス教も来ているかと」


 エクスは唸り、さらにもう一度拳をテーブルに叩きつけた。

 テーブルは真っ二つに割れ、大理石がそこら中に飛び散る。


「手を組んだか賊徒ども。それは全く情報筋が無かった。カシムのバカがスパイを回収したのが痛かったのだろう!」


「聞かなかったことにします」


「もういい。俺が直々に迎える。軍を招集し、お前も戦え。奴らは所詮、戦の知識もない民衆。我が軍の前には蟻に等しい!」






 警察庁の屋上からラッパの音が響いた。

 何事かと革命軍が一斉に顔を上げる。


――だが、何も起こらない。


 兵士たちはすぐに視線を切り、制圧を再開した。


「行くぞ!このまま五階まで上がる!ターゲットはもっと上だ!――死ねる奴らだけ、ついて来い!」


 アダムの号令とともに、数十の足音が階段を打ち鳴らす。

 先頭を走るアダムは、そのまま迷いなく奥へ、さらに奥へと突き進んでいく。


 そのとき――無線が割り込んだ。


『アダム隊長!――援軍です!――エクスは我々の計画を――知っていたのか、後方から攻撃を受けています!――革命軍は……袋のネズミです!隊――!!』


 通信はそこで途切れた。


 兵士たちが互いの顔を見合わせる。

 だが、アダムが歩みを止めることはない。


 隊の先頭にあるのはただ一人。


 血が滲むほどに、下唇を噛み締める指揮官の姿だけだった。


「包囲されちまったみてェだな……悪ぃ。俺と死んでくれ」

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