第99話 ケージの日常 その7
緊張感や義務感が無いと、やらなければならないことなのに、忘れることが多い。
昨日も寝る前に、炊飯器の予約を忘れていたし、お弁当の準備を忘れていた。
困るのは自分だけだから、どうしても気が緩んでしまう。
さて、次回は100話です。ノディールの話です。
その後は、またケージの話が続くのですが。
予定を変更して、ロジーナやシーリスたちの話を書いてみようと思います。
まだ書いていませんが……。
駄目ならケージの話です。
やたらと軍関係者の客が増えた。
いつ死ぬか理解らない状況だからか、それとも他国を侵略して富を得たのか、他人を殺して心が高揚しているのか。
周辺国への進軍が終わったのか? それとも?
「兵隊さん達は、何か必死で……怖いの……」
ハリネズミ族のイブリットは人族を恨んでいる。
そんな人族に犯されるように毎晩やられてしまっては、イブリットの心が持たない。
前線で戦ってきた兵ならば、幾度も死線を乗り越えてきたのだろう。
死と生の生は性であり、娼婦を乱暴にすることで生や制服感を得てるのだろう。
掃除当番が一緒の時はできるだけ、イブリットの心のケアに時間を割くことにしている。
だが性奴隷の俺にはイブリットを根本的に救い出すことは出来ない。
だから、ただイブリットの愚痴や不満を聞き、そっと抱きしめてあげる。
それだけだ。
イブリットは興奮していない俺のアレをツンツンと服の上から触る。
「ケージはエッチな気持じゃなくて、優しい気持ちでいてくれている。ありがとう」
いつものようにイブリットをメイが迎えに来た。
相変わらず、顔を真っ赤にしている。
もう乙女じゃないんだから、いい加減……それ止めてくれ。
俺は中央館の最上階にある店長の住まうペントハウスにまた招待されていた。
店長の娘のドロシーが、何故か俺を気に入ったらしい。
うーん。
やはり魅了のスキルとかあるのかも知れない。
誰かに嫌われた事が無いんだよな。
店長から娘に手を出したら去勢すると言われている。
勿論、「手なんて出すわけない」と言ったら、「娘に魅力が無いとでも言うのか!!」とコテコテの展開でブチ切れられた。
全く親ばかって怖いよな。
もう一つ、この男娼館とは全く違う異質な空間へ入るための儀式のようなものが面倒だ。
男娼館の独特の匂いの染み付いた衣服を脱がされ、
やさしい牛乳の香りのする石鹸で体中を洗い流されるのだ。
美人のメイドさんに体を洗ってもらえるのは嬉しいが、興奮しないように必死で抑えるのが辛い。
「おはようございます。ドロシーお嬢様」
「むーっ。ドロシーでいいわよ」
店長の様子を伺いながら、「いえ、ケジメは大切です。私とお嬢様では身分に差がありすぎます。また、性奴隷を友人のように扱えば、中には勘違いしてしまう性奴隷もいますので、注意が必用です」と、無難に答える。
「と! 友達に……なんて……なりたく……」
泣きそうなドロシーに店長が助け舟を出す。
「ケージは物分りが良く分別のある性奴隷だ。私の家にいるときだけは、性奴隷ではなく、一般人として振る舞うことを許そう」
「お父様!! 大好き!!」
「ケージには悪いが、性奴隷の術式を発動させてもらうよ。娘に性奴隷に襲われた場合の対処法を教えてあげたいのだ」
「はい。構いません。ですが、多分……気を失ってニ、三日寝込みます。最悪ショック死します」
「あぁ、ケージは先天性のマナ欠乏症だったな。今度別の性奴隷で試そう……」
男娼館の性奴隷の契約は他の女性にも手出しできてしまう契約である。
なので主達が身の危険を感じたり、命令を強制的に聞かせるため、体中に電撃を流す契約になっている。
しかし、細胞に宿るマナに干渉する魔法は効果が薄いため、俺には契約魔法が持続することはない。
つまり、今の俺は性奴隷でも何でも無いのだ。
その事実を店長に知られる訳にはいかない。
金髪に碧眼の美少女ドロシーは、楽しそうに俺に話しかけてくる。
俺は無難にちょっとしたユーモアを混ぜながら会話のキャッチボールを繰り返す。
まぁ。これも性奴隷の仕事と思えば大したことはない。




