第84話 過去を超えて
建物の向いている角度について。
これも何かを獲れば何かを失う感じですが、結構な風が吹いていても、室内に風が入ってきません。
ですが、この時間なら結構ヒンヤリとした空気が室内に微妙に入ってきます。
それなのに他の部屋では朝イチから冷房を入れている。
何と言う金持ちなのだ!?
羨ましいぜ。
さて、ペチタとアルベリットですが、相思相愛なのにキスシーンもありませんでしたよね?
多分……。
ちょっと、後で書いてあげないとね。
「あら♥ そんな可愛い娘の頭を踏むもんじゃないわよ?」
化粧の濃い筋肉ムキムキのグレディアは、全力のパンチ一撃でブルーシャークの頭デジェルを沈めと、瀕死のイーリッヒの胸を揉む。
「な、何を‥…」
「ジッとしててね♥ 性のエネルギーは万能の治療になるのよ♥」
何を馬鹿なと思ったが、体の痺れや背中の痛みが緩和され、口も自由に動くようにななり始める。
この不思議な治癒魔法なら、あの少女も助けられるのではと思ったイーリッヒは、名も知らぬ者に頼んだ。
「た、頼む……。わ、私より、奥の、奥にいる少女を助けてくれ……」
アジト内を調べるため先に奥の部屋に行っていたアルベリットとペチタが丁度戻ってきた。
「グレディア、ロジーナが……」
ペチタは余りにも酷いロジーナの状況に憤怒し、握りこぶしを壁に叩きつける。
!!!!???
その時、地上に悪魔が現れた事をペチタとアルベリットは感じた。
二人は顔を見合わせたが言葉にならなかった。
「ば、馬鹿な……何故、こんな場所に!?」
剣の柄に手をかけたペチタとは裏腹にアルベリットはペチタの腕を掴んだ。
「ペチタ……行かないで……」
弱気なアルベリットにペチタの心はグチャグチャになる。
しかし、ここにアルベリットとロジーナ、地上にはソフィア、ララ、ライズがいる。
あいつらも大切な仲間なんだとペチタは心の底から思った。
「大丈夫だ。あの頃とは比べ物にならない程、鍛えに鍛えた。ここで待っていろ」
手を振り解き出て行こうとするペチタを背後から抱きしめるアルベリット。
「居なくなって寂しかったのはペチタ、貴方だけではありません!」
こんなにペチタに甘えてしまうなんて。
ううん。こうなることは理解ってた。
繰り返す人生の中で、唯一心を許したペチタ。
もしもペチタに出会わなかったら、今でもきっと孤独のままだった。
心の隙間を埋めることも一人では出来ず、空っぽのままの毎日は苦しかった。
これだけの命に溢れる世界で、他人を見つけることは容易い。
でも心を預けられる相手は居なかった。
日々崩れ落ちる心、それでも繰り返される人生、本当に、本当に、気が狂いそうだった。
そんなときペチタに出会い、別れた。
繰り返される人生の中、再びペチタを視界に入れたあの日、ペチタと別の道を歩むことを決めた。
ペチタからもらった色とりどりの鮮やかな世界の思い出、それだけで十分だった。
また再開すれば、また残酷な運命が待っている。
もうペチタを悲しませることは出来ない。
そう思った。
だけど一度、心を許した相手と、再び触れ合い――
もう離れたくなかった――――――
「お願い……、行かないで」
ペチタの手を掴み、その場に座り込んだアルベリット。
そして……また懇願する。
「行かないで……」
アルベリットの消え入りそうな声が、ペチタの心を揺らす。
あの日あの時、どんなに強く握りしめようとも、指の隙間から零れ落ちていく水のように、アルベリットの命はこの世から消えてしまった。
過ぎゆく季節、戻れない日々、何度も何度も自分を責め過去を後悔した。
アルベリットのいない世界で何を目標として生きていくのかさえ、数日前アルべリットに再会するまで、答えを見付けられずにいた。
しかし、今なら二人で何処へでも行ける。
もうあのような日々はごめんだ。
それでも――――
「なら、アルベリット、力を貸してくれ。もう一度、悪魔を倒して……二人で何処かで静かに暮らそう」




