第64話 アダルティっくダンでぇー
本当は駄目なんだけど、俺は一人で宿屋の食堂にいる。
この世界では酒は何歳からでもOKなのだ。だって酒が健康に悪いとか、種族によってまちまちだし、そんなの自己責任なのだから。
それに酔って事件を起こしたところで、運が悪ければその場で斬り伏せられるだけなのだ。
日本に居た頃はお酒なんて興味なければ飲んだこともなかったが、ご主人様に無理やり飲まされてからは、たまに飲んだりしているのだ。
「やぁ、君は……」
別に女と遊ぶためにここに来ている訳でもなければ、男に話しかけられるためでもないのだが、話しかけてきた男は、誰が何処から見ても……。
「あの……お貴族様が……私のような者に何か御用でしょうか?」
そう、俺は……鏡を見たこと無いから……自分の容姿について断言できないが、恐らく高校生に近い見た目だと思う。
つまり、この世界で言えば、もう成人と呼ばれる存在なのだ。
そんな大人な俺に何か用があるか?
嫌な予感しかしない。
「君が複数の女性といるのを見てね。同じ仲間に会えたと思ったのさ」
「同じ仲間ですか? 俺は……性奴隷ですよ?」
「爵位があるとか地位があるとか、そういう次元の問題ではないのさ。端的に言えば女にモテる。それだけの事さ。そう、それは男としての魅力、その魅力は先天的でも後天的でも関係ない。その事実を手に入れた……君に乾杯」
はっ?
やばい、いっちゃってる……。
ごめんよ、ノディール、ロジーナ。
一人で遊びに来るんじゃ無かった。
男は軽くウィンクをして、グラスを差し出した。
「か、乾杯……」
乾杯に満足したのか、男は強めのブラックスティンガーを一口で飲み干す。
「さて、僕の女の子について自慢させてくれ」
いやいや、結構です。なんて言ったら、その腰からぶら下がっている高価そうな剣が抜かれ、俺の首は胴体とさよならしそうな予感がした。
そもそもなんで、お貴族様が平民の泊まる宿屋にいるんだよ!!
「まずは氷河蜥蜴族のパトリシー。彼女は外見からも理解るのだが、心の中まで凍りついているのさ。それは人族の罪。僕が一生側にいて解凍してあげなければならない」
お貴族様は天井を悲しそうな瞳で眺める。
「次は……君と同じ……性奴隷だった。人族のハルカ。東の地から攫われて来たか悲しい少女だ。彼女の心の傷が癒えるまで体の関係は持つつもりはない」
ほぉーっ。そうですか、聖人様ですね。
「ハリネズミ族のチココリも馬鹿な人族に拷問されていたんだ。ハリネズミ族のシンボルである針を全て抜かれてしまった。本来はもう生えてきても良い頃なのに……針が生えるとまた……拷問されるのではと心の恐怖が肉体に影響してしまっているのだ」
あれれ? この人がハーレム要員として集めているのって……。
「最後は…… ナガミミ兎族のダンテだ。人族に両親を殺され、森の中で犯されそうになったところを偶然見付け保護したんだ」
くっ。えっと……お貴族様? モテるとかと次元が違う話のような気がしますが……。
「今度は君の素敵なレディたちの話しを聞かせてくれないか?」




