第61話 カクレンボしてるから
あるときはソロの中級冒険者。
あるときは間抜けに呼び出される悪魔。
そして……その正体は……。
ケージくんって鈍感なんだよね。
それとも気付いてない振りしてるのかな?
人族のように自然に恋が芽生える……そんなのに憧れていたけど。
はぁ……。
もっと胸を押し付けるべきだったかな?
は、恥ずかしいぃ♥
仕方ないよね?
ケージくんの夢の中に入っちゃおうかな。
隣でエロエロな顔をして寝ているケージにピタッと体を密着させたシーリス。
そして、夢魔族としての力を本領発揮させるべく、禍々しい魔力を増大させていく。
ふふ♥ 入っちゃうよ? ケージくん♥
◆
その隣の部屋では、昼間ケージに耳を触られ、ロジーナとのキスを見せつけられて興奮していたノディールが、ロジーナのパジャマをひん剥き……時間が吹っ飛ぶような、
なろうでは表現できない事をしていた。
◆
翌朝、ケージが目覚めると、いつものようにシーリスくんが引っ付いている。
大人になる前の子供なのだが、男の子だか女の子だが、一瞬迷うような中性的な顔立ちは卑怯だ。
子供だからほっぺたもプニプニだし、唇も瑞々しい。
あれ?
俺の息子が……。
あれれ?
元々だよな?
朝だから……だよな……。
まさかシーリスくんで反応なんてしてないよな……。
朝……だからだよな?
我が息子よ!! そうだと言ってくれ!!
焦った俺はベッドからも部屋からも逃げ出すように、朝靄の街を散歩に出かけた。
本当は、誰かと一緒じゃないと何かあった場合、即死亡なんだけど……。
「にゃ? 一人じゃ危ないにゃ?」
偶然、散歩をしていたノディールと会った。
何を言うわけでもなく、そのまま無言で街を歩く。
黙っているときのノディールは、高得点なのだ。
元々の作りが良いからな。
ノディールが腕を絡めて、上目遣いで言ってくる。
「最近、ロジーナばかりと……。たまには私も相手にして……欲しいにゃ」
そんな事を言われた、この場所は……誰も居ない公園の池の辺り。
俺はノディールの願いに応えるように、気持ちを込めてキスをした。
「朝靄、まるで”カクレンボ”みたいにゃ」
「それって俺に鎌を掛けているのか? あれが時間を遡った現実なのか、夢の中なのか、俺にはわからないが……」
「やっぱり、あの人は……ケージだったにゃ?」
ノディールの心が、心臓が、大きく跳ねた。
二度と会えないと思っていたから、ココロの奥に押し込めていたにゃ、大好きな人への想い。
そんなココロをこじ開けようとするケージの笑顔。
大好きな過去の人と今目の前にいるケージ。
ケージが好きだけど、ココロの奥に押し込めている人を裏切る気がして苦しいにゃ。
でも、巫山戯合う言葉が溢れる日常は、確かにココロの奥に押し込めた人が導いてくれたボレオで手に入ったにゃ。
笑顔でいられることは当たり前じゃにゃい、私だけでは手に入らなかったにゃ。
だから、何度も何度もケージを好きになる度に、ココロに押し込めた大事な気持ちを……眠っている気持ちを呼び起こしたにゃ。
もう何が何だかわからにゃい。
ケージが死んだと知らされたあのとき、私の全てが壊れてしまったにゃ。
でもケージがヘラヘラしながら戻ってきた時、ココロの奥に押し込めていたあの人とケージが重なったにゃ。
でも、ケージは他の女とエッチなことをしていたにゃ。
匂いでわかる。
悔しいし寂しいし……嫉妬して、殴ってしまったにゃ。
アンナ・ハーリン、ソフィア、ロジーナ、私の過去と今と未来……。
私が”好き”と言わなければ、ずっとこのままでいられるかもしれにゃい。
またココロの奥に押し込めてしまえばいいのにゃ。
いつかきっと、この”カクレンボ”した気持ちをケージが探してくれれば……。
ココロの奥に押し込めている人とケージが同じ人であることで、私はまた救われたにゃ。
だから、探して欲しいにゃ。
そのときは、何もかも捨てて、全力で……。
ノディールの大きな瞳から大粒の涙がボロボロと流れ落ちた。




